現在の場所は

ワルザザトにおける集光型太陽光発電システム(CPV)普及促進事業

国・地域:
モロッコ王国

企業:
住友電気工業株式会社

事業概要:
高温・高日射量の地域において効果を発揮する集光型太陽光発電システム(CPV)の実証設置及び運用技術の指導を通じ、同システムに対するモロッコ国政府関係者の理解を促進し、同システムの普及を図るもの。

普及対象技術:
集光型太陽光発電システム(CPV)は、高い変換効率や正確な太陽追尾システムといった技術を有しており、日本国内外での設置実績を持つ。また、砂漠が広がる対象地域特有の課題である砂塵堆積にも対応し、発電量の低下とメンテナンスコストを最小限にする機能を備えている。

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相手国(モロッコ王国)が抱える開発課題

モロッコ王国では、若年層の高い失業率や地域的・社会的格差が社会の不安定要因や課題となっています。これらの格差などを抑制・是正しつつ、産業の基盤となるインフラの整備や人材育成を通じた雇用創出・産業育成、ひいては同国の経済競争力を強化することが求められています。
また、エネルギー分野においては、化石燃料への高い依存度とそれによる環境問題、エネルギー資源の対外依存度の高さ、低い電力自給率が課題になっており、クリーンで安定的なエネルギーの供給が課題となっています。これらの課題に対する施策の一つとして、モロッコ政府は2020年における発電容量のうち、再生可能エネルギーの占める割合を42%(うち太陽光14%、風力14%、水力14%)とする計画を立て、特に、太陽光発電については太陽エネルギー庁を設立し、2020年までに2,000MW、2030年までに4,500MWの太陽エネルギー発電設備を導入する方針です。

企業活動を取り巻く環境・背景

モロッコの太陽光エネルギー分野において、日本は2010年に協力協定を結ぶなど積極的にその発展の支援を続けてきました。住友電工では、モロッコをはじめとする高日射・高温地域において高いパフォーマンスを発揮するCPV技術を有しており、2013年より同国カサブランカ郊外の同社グループ会社敷地内において実証実験を開始するなど、同国の太陽光セクターに参入し、太陽光発電によるエネルギーの安定的な供給の実現や雇用創出へ貢献することを検討していました。

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清掃方法の検討

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シリコン太陽電池(SiPV)との比較

民間技術普及促進事業の活動内容

協力体制の構築:モロッコ電力セクターの現状に関する情報収集を行い、また同国政府関係者に対し、CPVに対する理解の促進を行いました。住友電工・太陽エネルギー庁・JICAの3者間で協議し、住友電工はプロジェクトの設計・工事・機器調達を行い、太陽エネルギー庁は土地とインフラの提供を行うという協力体制で推進することとしました。

CPVシステムの設置:CPVシステム設置に向けて、CPV製造・配送、関連機器調達、設置工事を実施し、システムの輸送や通関手続き・現地での保管・工事については、モロッコ国内の現地会社等を採用しました。

実証試験の実施:その後、シリコン太陽電池(以下SiPV)に対するCPVの優位性をアピールするため、3期に分けて両システムの比較実証試験を開始し、各々の発電データを取得しました。その結果、CPVの単位面積当たりの発電量は標準的なSiPVのおよそ2.6倍とのデータを取得でき、ワルザザト市におけるCPVの優位性を政府関係者へ示すことが出来ました。

保守管理体制の構築:また、現地特有の砂塵堆積に備えた防汚機能の実証や、あらゆる清掃方法・頻度を検証し、最適なオペレーションとメンテナンスの体制を構築しました。系統連系は計画から1年遅れで接続され、本格的に実証が行われました。

その後、設置から1年以上経過した2017年1月に行ったCPVシステムの点検において、正常に稼働していることを確認しています。

また、検討〜準備〜実施〜事業展開の各段階において、同国のハイレベルな関係者とのコンククトを有するJICAモロッコ事務所との連携により、円滑に事業が推進されました。具体的には、相手国実施機関の選定、広報ビデオの作成、各種懸案事項の解決に向けた同国政府機関へのアプローチ等の側面支援がなされました。

日本技術の普及拡大から期待される成果

民間技術普及促進事業における活動が功を奏し、2016年5月に開催された第4回日本・アラブ経済フォーラムにおいて、モロッコ太陽エネルギー庁と、初のメガワット級CPVプラントを共同で建設・運用実証を行っていく契約を締結することが出来ました。本普及促進事業では20kWのCPVプラントを設置しましたが、その規模を拡大し1MWのプラントを2016年11月に竣工しました。これは、太陽エネルギー庁にとって最大の関心事であった砂漠地域における砂汚れによる発電ロスをメンテナンス技術により最小化できること、また、CPVは同国での太陽光エネルギー導入のみならず、モロッコの産業・雇用の創出にも寄与することについての理解が得られたためです。

今後、同社は、1MWプラントでの発電実証にて更なる高性能化のための実証を進めつつ、モロッコにおける量産製造に向けて、現地研究機関や現地サプライヤーとの協力関係を築いていく予定です。さらに、モロッコをハブとし、同じく高日射・高温地域である、中近東・南米・中南米・オーストラリア等にも、クリーンエネルギー技術として、本事業で得られたデータやメンテナンス技術・知見を横展開させることを検討しています。

※2017年2月時点のデータです。

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