北海道大学との連携講座「国際協力論」を実施

2020年9月10日

2005年4月に包括連携協定を締結したJICA北海道と北海道大学は、その枠組みの下で様々な連携事業を実施しています。特に、2007年度から開始された講座「国際協力論」は毎年人気の講座です。経済学部3~4年生を主な対象としたオムニバス形式の半期講座となっており、今年度は57名が受講しました。

「ニュー・ノーマル」でのオンライン授業

新型コロナウイルス対策で今期は全てオンラインでの授業でしたが、開発経済学やJICA事業に関わる社会人の話に、学生は意欲的に耳を傾け毎回レポートを提出しました。そして関心のあるSDGs(持続可能な開発目標)のテーマごとにグループに分かれてディスカッションを行い、持続可能な社会づくりに貢献するため教室外活動を実践したり提言をまとめました。JICAのプロジェクト形成の流れを参考にしながら、グループごとに「プロジェクトで解決したい課題の設定」や「具体的な活動」の計画を立てて実行したものです。

<全10グループの活動や提言>
1番「貧困削減」 相対的貧困を減らすため、北海道や先進国の取り組みを調査
4番「教育」 JICA職員に途上国の教育事情をインタビュー、物資支援よりも教育の質の向上が重要
5番「ジェンダー」 労働環境における男女格差に注目して、主要な4か国の制度を比較
7番「クリーンエネルギー」 英語ブログで情報発信、留学生からのコメントも反映
8番「働きがいと経済成長」 フェアトレード商品の購入・周知をラジオで発信、市内の店舗に取材
9番「産業と技術革新」 途上国のインフラ整備状況について調査、データ整備の必要性を提言
10番「不平等」 フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議の有坂美紀事務局長にインタビュー、社会課題に対する当事者意識を持つことが重要
11番「まちづくり」 洪水問題対策としてグリーンインフラの紹介画像をSNSで発信
12番「つくる責任つかう責任」 海洋プラスチックごみ問題をTwitterで発信、個人レベルではゼロプラ生活に挑戦したりタンブラーを導入
13番「気候変動」 JICAのソーシャルボンド「JICA債」について調査、JICA職員や投資家にインタビュー

総括講義「双方向の国際協力 ~信頼で世界をつなぐ~」

【画像】JICA職員による総括講義は、中澤慶一郎理事が担当しました。この20年間で最貧困層の所得はあまり伸びておらず、中国を始めとするアジア諸国や富裕層との貧富の差が拡大してしまったことや、JICA北海道が行った「外国人材調査」の結果も踏まえて、北海道経済が頼りにしてきた外国人観光者や労働者の話題にも触れました。
これまでも総括講義は一般公開にて行ってきましたが、参加者は札幌近郊に限られていました。しかしオンラインの利点で日本国内だけでなく海外からも参加があり、受講生を含めた236名が参加。外国人技能実習生の問題や多文化共生など、多くの質問が寄せられました(当日の講義資料は本ページ下「関連ファイル」をご参照ください)。

北大生、ラジオ生放送に挑戦!

グループ活動の発表は毎年大変興味深い内容です。今期はほとんど対面で行うことができませんでしたが、唯一、ラジオ出演に挑戦したのは、SDGs8番「働きがいと経済成長」に取り組んだグループです。コロナ対策万全のFMアップルで、フェアトレードをテーマにラジオ生放送にチャレンジしました。

 グループメンバーによる体験談を書いてもらいました。

「・・・ラジオ、出てみます??」
今となっては誰が言い出したかすら覚えていませんが、この鶴の一声で、私たちのラジオ出演が決まりました。
私たちは北海道大学の経済学部の授業、「国際協力論」の授業内で、SDGsの8番「経済成長と働きがい」を両立すべく集められ、中でもフェアトレードを周りの人に広めることを目標にして一学期間活動しました。活動の中で何かしらアクションを起こそうということで、その一環でFMアップルさんのラジオに参加させていただき、フェアトレードについて広めることができました。ラジオは北大生5人とJICAの野吾さんでフェアトレードについてトークをして、最後にみんたるの和田みかよさんにゲストとしてお話ししてもらいました。

ラジオの前半は、経済学部三年の加藤、今野、成田と野吾さんの四人で「今更だけどSDGsってなんだっけ?」というところから始まり、働き甲斐と経済成長の両立のためにはきちんと賃金が払われる必要があることや、フェアトレードという生産者を応援する仕組みがあることを話しながら深堀りしていきました。また、近年は注目が高まり認知度が上がっている一方で実際に意識して購入する人は少ないという驚くべき事実も語られました!
しかし、実はフェアトレード商品は思わぬところに使用されており、あの有名なスターバックスやドトールのコーヒー豆にも使われているという話に発展しました。社会貢献を行う企業で消費を行う事で間接的に社会貢献に携わっているのです。これを「エシカル消費」と呼びますが、実際に対象商品を買うだけでなく、楽天のアースモールというサイトを経由して商品を購入することでもフェアトレードを応援することになる事を紹介しました。
さて、話ははずみ、フェアトレードマークのついているフェアトレード商品を買おうと考えたらどこに行けばいいの?という疑問に対して、専門店を紹介しました。なんと、札幌市はフェアトレードに力を入れており、全国で5番目にフェアトレードタウンに認定され、無数の専門店が市内に存在しているのです。

【画像】後半は札幌市で最も歴史あるフェアトレード専門店のひとつ、レストランみんたるの店主、和田みかよさんにインタビューを行いました。お店を開いたきっかけが学生時代の海外旅行にあることや苦労していること、ほぼ毎日イベントをされていて学生も参加できることや、最近若い人もフェアトレードに興味を持ってくれるようになって時代の変化を感じたというようなことをお話してくれました。オンラインでのインタビューでしたが、画面越しでも明るくて気さくな方だというのが伝わってきて、非常に楽しいインタビューでした。
ラジオ自体はインタビュー後、加藤と大石の感想で終わったのですが、実はラジオ収録の後にみんたるにお邪魔し、みかよさんにお礼を申し上げてきました。あとから聞いたことによると、先日中学生の男の子ふたりがお店の前まで来て、「学校でフェアトレードについて習った」ということをみかよさんに伝えてくれたそうです。これを聞いて、少しずつでいいからフェアトレードの考え方を知る人が増え、実践する人が増え、最終的には働く全員が正当な賃金を支払われる世界になってほしいと願わずにはいられませんでした。
以上、SDGsラジオのレポートでした。この度は国際協力の教養を深め、人生に一度あるかないかの貴重な経験をさせていただき、野吾さん、樋渡先生(国際協力論の担当教授)そのほかラジオに迎えてくれた塚本薫さん、協力してくださった皆様には本当に感謝してもしきれません!
最後にチームの5人のコメントを述べて、終わりの挨拶とかえさせて頂きます。ありがとうございました!

【画像】<チームのコメント(五十音順)>
・正直この授業を受けるまではフェアトレードどころかSDGsすら興味がなかった私ですが、ほぼ他人だったチーム内での話し合いやラジオ出演という得難い経験を通して、経済成長と働き甲斐の重要性や困難について学ぶことができました。これからはエシカル消費を意識して買い物をしたいと感じました。<3年大石>

・今回、授業をきっかけに、ラジオに出演できたことはとても嬉しかったです。フェアトレードについて調べたことを少しでも多くの人に伝えることができてよかったです。普通の大学生でも、国際協力に少しでも貢献できるのだということを味わえました。僕たちの活動を見た同世代の人達が少しでも興味をもってくれてれば嬉しいなと思います!フェアトレードの商品自分でももっと買ってみます!<3年加藤>

・野吾さんの協力もあってラジオにも出演させて頂き、実際に国際協力に僅かながら貢献できた実感が持てた。今後は一消費者として、フェアトレードのことを心に留めて毎日を過ごしていきたい。<3年今野>

・フェアトレードについて調べたことで、商品の背景を踏まえた上で買い物をすることも買い物のひとつの醍醐味なのではないかと感じました。今後このような買い物スタイルがどんどん広まっていって欲しいです。<3年成田>

・実際にフェアトレードのお店をやっている人にインタビューできるのはとても貴重な経験でした。商品も高いのかと思いきや意外とお手頃価格だったので、今後色々なフェアトレード商品を試してみたいと思いました。<4年宮川>

講座を終えて

今年度もスタッフ一同、「単なる一方通行の授業ではない、世界とのつながりに気づき、思考し、社会と関わり変革する第一歩を踏み出すための講義」の運営を心掛けて参りました。受講生からは、「国際協力を身近なものとして考えられるようになった」「オンラインではあったが、行動に移すことや社会への発信についても学ぶことができた」「これからも国際協力に関わり続けたい」といった声が聞かれました。
北海道大学大学院経済学研究院・樋渡雅人准教授には、Zoomによるオンライン講義の機会をご提供いただき、誠にありがとうございました。学生の皆さんと関わり意見交換をすることで、若い皆さんとともに社会を作っていく一員として、私たちも多くの気づきと深い学びを得ることができました。
来年度に向けてさらに充実した講義を提供できるよう、私たちも引き続き頑張ります!

(文責:JICA北海道 市民参加協力課 野吾)