札幌国際大学にて国際協力出前講座を実施

2022年7月25日

ほっかいどう地球ひろばの職場体験に参加している東海大学2年の平野北斗です。6月3日(金)に行われた、JICA国際協力出前講座の様子を報告します。
今回は、札幌国際大学1年生の「地域アクティビティー」講義を対象に、JICA海外協力隊の帰国隊員であり、ニカラグア・ホンジュラスへ派遣されていた土方さんが現地での体験談やボランティアへ関心を持ったきっかけなどを語りました。

小学校教育の隊員として中米・ホンジュラスへ

土方さんの質問に手を挙げて答える学生たち

土方さんは講義の冒頭で「小学生の時に韓国で感じた言葉の壁がずっと気になっていた。再び海外に挑戦したいという気持ちから協力隊に応募した」と話し、ホンジュラスの活動先である小学校での体験談が始まりました。土方さんが活動にちなんだクイズを出題すると、聴講している学生達は真剣なまなざしでスライドを見つめ、取り組んでいました。「(活動先には)一人一冊教科書があると思いますか?」という質問では、学生の多くは「ある」と答えていました。正解は「ある」だったのですが、日本とは異なり、教室に備え付けてある教科書を使用すると聞いて、学生達は「それでは家で予習・復習ができないね」と感想を述べていました。加えて「ホンジュラスでは板書の計画が立てられていないため、児童たちがノートを取ることが難しく、結果的に授業の内容が理解できずずっと座っていられない生徒も多い」というエピソードを聞き、日本では考えられない状況に驚きの声が挙がっていました。

講演の終盤、学生達が事前に提出していた質問に対し、土方さんは一つ一つ丁寧に答えていました。
「言葉の壁はありましたか?」という質問には、「コミュニケーションは言語が全てではなく何を思ってどんな態度を見せるかが重要だ」「最初に派遣されたニカラグアでは現地の言葉(スペイン語)を覚えることに必死だったが、ホンジュラスでは言葉以上に現地の人の習慣を理解することがコミュニケーションへの近道だと気が付いた」と自身の経験談を交えながら答えていました。
「派遣される前と後で心境の変化はあったか?」という質問も寄せられ、「日常生活でそれまで拒絶してしまっていたことに対して多様な価値観を持って受け止められるようになった」と話していました。
最後に、「平和な未来とは?」という質問には、少し考えた後、「相互に理解しあっていて身近な存在であれば争うことはないと考えていたが、昨今の世界の情勢を見るとそうではない。難しい。裏切られた思いだ」と回答していました。現地で活動する中で得た、国境を越えた深い繋がりの尊さを実感すると共に、それだけでは解決することのできない現実があることも口にされていました。

子どもたちの視野を広げたい

大学在学中に東日本大震災の復興ボランティアに携わり、障がい者やホームレス、子どもの支援など国内課題に対しても関心を抱いていた土方さんは、社会人になった後、家庭に課題を抱えている子どもたちに関わるNPOで活動を行っていました。小学生から高校生まで幅広い年代の子どもたちと関わる中で、「彼らが感じている生きづらさに心を動かされた」と実体験を交えてお話されました。その時、「世界は日本だけではない」ことを伝えたいと感じたそうで、青年海外協力隊として海外に派遣された後も日本で勤めていた施設へ日報を送り、現地の様子を報告することを通じて、子どもたちの視野を広げようと活動していたそうです。

私も小学生のときに経験したJICA研修員との交流は現在も覚えており、彼らの名前も記憶しています。他国の文化に触れる異文化交流の機会は、日本でしか生活したことのない子どもたちに新たな関心の扉を開くきっかけとなり、同時に自他の文化的な相違を意識することによってSDGs10番「人や国の不平等をなくそう」という目標にも貢献できます。
最後に、土方さんの講演を通じて、他者との信頼関係を構築するポイントやSDGs4番「質の高い教育をみんなに」でも取り上げられている教育範囲を拡充することの重要性を学ばせていただきました。