【草の根技術協力事業】ブラジル人介護予防インストラクターが、仙台で音楽リハビリ手法を学ぶ

2023年2月15日

音楽リハビリのブラジルでの実践に向けて

㈱ゆらリズム菊地義仁プロジェクトマネージャーの講義

音楽リハビリの演習に取り組む研修員

 「『ゆらリズム』の音楽リハビリ手法を、早くブラジルの高齢者の方たちと実践したい。」こう話してくれたのは、ブラジル・サンパウロ市から来日した研修員の皆さんでした。
 JICA草の根技術協力事業「サンパウロ市における音楽リハビリを活用した介護予防モデル構築」を実施する株式会社ゆらリズム(仙台市)は、2022年7月以来、第2回目となる日本での研修を行いました。

 本事業では『音楽リハビリ*』の手法を用いた介護予防モデルの構築をサンパウロ大学老年学部などと協働で進めています。音楽リハビリの手法を現地で実践するインストラクター18名が、仙台市で研修を受けました。前回2022年7月の日本での研修に参加したトレーナーたちが、ブラジルにおいてインストラクターの養成を行っており、今回の研修にてインストラクターの技術習得が完了することを目指します。



*『音楽リハビリ』とは、介護予防の基本である運動プログラムに音楽を取り入れたゆらリズム独自の手法で、運動を楽しく習慣化できるだけでなく、歌唱や楽器演奏を通じて高齢者の趣味や生きがいづくりの機会も創出します。

介護予防における大事な考え方とは

ボール運動で手指や足の筋肉を鍛えます

音楽セッションの様子をメモに取る研修員

 音楽リハビリの実践には何が大切なのか—研修員は仙台市にある㈱ゆらリズムの介護予防デイサービスを見学しました。
 この日はヨガリラクゼーションや、ゴムボールを使った運動、参加者がそれぞれ異なる楽器を演奏する音楽セッションが行われていました。それぞれの高齢者への配慮や、声がけの仕方とそのタイミングにインストラクターたちは注目。
 「高齢者とゆらリズムのスタッフがお互いに良いエネルギーを出し合っている。同じ気持ち、同じ目標でプログラムに取り組んでいるから、皆が集中していました。」
 「ヨガリラクゼーション中に寝ていた方を起こさないのかなと見ていました。ヨガは心身をリラックスさせることが目的で、精神的に落ち着いた状態=寝かせたままでも良いと知って勉強になりました。手法も大事ですが、何より高齢者一人一人への気配りが大事なのだと感じました。」
㈱ゆらリズムの音楽リハビリの実践を目の当たりにし、手法だけではなく、どんな心掛けが必要なのか、一生懸命メモに残している姿がとても印象的でした。

音楽リハビリを通じて、日本・ブラジルの共通課題に挑む

宮城県 千葉経済商工観光部長(中央)との集合写真

JICA東北での集合写真

 別日、インストラクターたちは本事業の提案自治体である宮城県庁を訪れ、千葉隆政・経済商工観光部長を表敬訪問しました。
 千葉部長からは「ブラジルでも、日本と同様に高齢化が急速に進んでいると聞いており、本事業を通して共通の課題に取り組めることはとても有意義です。高齢者の方の健康寿命を延ばすことが大切だと思いますので、この音楽リハビリの手法をぜひブラジルで広めてください。」と、激励の言葉がかけられました。

 その後はJICA東北センターも訪問。インストラクターの代表者からは「本事業を通して、自分が培ってきた介護予防の経験に、さらに音楽リハビリ手法の新しい技術を身に付け加えることができました。この経験を早く私の勤める施設の高齢者の方たちに届けて、みんなが笑顔になれるプログラムを実践したいです。」とコメントをいただき、日本での研修が充実している様子がうかがえました。
 インストラクターたちはブラジルに帰国後、2023年4月頃からそれぞれの職場などで音楽リハビリの実践を開始します。