【草の根技術協力事業】インドネシア・パル市市長、防災担当局員らが来日研修で岩沼市を訪問

2023年3月15日

行政と住民が手を取り合い、地域の防災力を高める

トンド地区に建設された移転住宅(JOCA提供)

地域住民への事業説明の様子(JOCA提供)

 JICA草の根技術協力事業「パル市集団移転地におけるより災害に強いコミュニティ形成事業」では、2018年9月に発生した地震と津波で被災したインドネシア中部スラウェシ州パル市にて、災害に強いコミュニティづくりを目指し、住民と行政が連携して地域の防災力を高めていく取り組みを行っています。
 本事業は宮城県岩沼市、公益社団法人青年海外協力協会(JOCA)、インドネシア国家開発企画庁、パル市の防災や復興計画を担うパル市開発企画局(BAPPDEDA)による協働で、2022年9月から実施されています。
 住民の集団移転が進むトンド地区では、移転が始まってまだ2年ほどで、コミュニティ形成が十分に進んでいません。しかしながら、家族を亡くした女性たちなどが集まったコミュニティでは、ジャムなどを販売して生計手段を確保したり、町内会の集まりで防災や災害について学んでいたりと、災害に強いコミュニティづくりに向けた下地が整えられつつあります。

万が一の時に助け合える仲へ

岩沼市役所にて説明を受けるハディアント・パル市長(右から2人目)

佐藤淳一・岩沼市長(中央)との集合写真

 2023年3月に日本での研修が行われ、BAPPEDAとトンド地区の自治会長らが岩沼市などを訪問しました。来日翌日には仙台未来防災フォーラム2023を訪れ、東北地域の様々な防災の取り組みを見学しました。
 別日には、同じく来日していたハディアント・パル市長が研修員の皆さんと、佐藤淳一・岩沼市長を表敬訪問し、パル市の取り組みや本事業の目的を説明しました。
ハディアント市長は、「2018年の地震においては岩沼市にも支援をいただき感謝しています。パル市も災害が多い地域なので、岩沼市が震災から立ち直った経験を学びたい。私たちも共助の仕組みをつくり、防災活動を発展させていきます。」と述べました。
 佐藤市長からは「岩沼市の集団移転と復興は、市民の力、インドネシアなど世界の力があって成し遂げることができました。災害がいざ起きた時にどう対策するのか、全員で考えておくことが大切です。パル市とは情報を交換し合い、万が一の時に助け合える仲になりたいと思います。」とコメントが返されました。

移転地区のコミュニティづくり、防災活動の活性化に向けて

パル市の取組みを説明する BAPPEDAのアリフディンさん(右1人目)

研修員の皆さんとの集合写真(JICA東北にて)

 研修員の一人、BAPPEDAから参加したアリフディンさんは、3月12日に開催された世界防災フォーラムに登壇し「コミュニティ防災の取組みをインドネシアの被災地へ」と題したプレゼンテーションを行いました。翌日にはJICA東北にもお立ち寄りいただき、研修の報告をいただきました。
 「世界防災フォーラムでは日本、世界の防災の知見を学ぶことができ有意義でした。また、玉浦西地区などで学んだ防災活動の手法はパル市の各移転地でも活かせるものだと感じましたので、現地で発展させたいです」(アリフディンさん)
 他の研修員の皆さんからも「岩沼市では行政と住民が一緒に防災計画を作っている点や、住民の皆さんの自主性が大変印象的でした」など、研修で得た成果をトンド地区など移転地域へ活用するに向けた意気込みを語っていただきました。

 本事業では今後、移転してきた住民同士の繋がりづくりなど、現地でのコミュニティ再生支援活動を本格化させていきます。
 JICA東北ホームページでは事業の様子を随時お知らせいたします。