【岩手県】陸前高田市にてJICA海外協力隊グローカルプログラムに参加した協力隊候補生による最終報告会

2022年6月29日

 2022年4月4日(月)より、岩手県陸前高田市において12週間のJICA海外協力隊グローカルプログラム(※1)に参加した3名のJICA海外協力隊候補生が、6月24日(金)に最終報告会を行いました。

陸前高田しみんエネルギー(株)で活動中の伊藤 弘光さん 

活動報告を行う伊藤さん

 2022年度2次隊としてタイに派遣予定の伊藤 弘光さん(廃棄物処理)は、陸前高田しみんエネルギー(株)にて、JICA海外協力隊グローカルプログラム(GP)に参加しました。
 市内2カ所の飲食店が軒を連ねる商業施設における食品残渣(ざんさ)量を調査し、その残渣の堆肥化によるごみの削減に取組みました。
 家庭用コンポスト製造法キエーロ、段ボールコンポスト、高倉式コンポストの3つの方法を各施設で試験的に運用し、発酵パークCAMOCYではキエーロコンポスト、農業テーマパーク オーガニックランドでは高倉式コンポストの提案を行いました。ごみ処理にかかる経費と手間の費用対効果を3Rの推進と合わせて検討する必要があり、途上国においても環境保全のため最も重要な課題であると報告しました。また、円安・原料高の現在、食糧残渣を家畜の飼料にできないか等の削減策も提案しました。加えて、環境に配慮した公共交通機関として電気自動車を活用した市内循環バス、グリーンスローモビリティの運用、椿の植樹を行うレッドカーペットプロジェクトへの協力など受入れ団体と共に活動を行いました。「東日本大震災では甚大な災害に遭われながらも色々な事業を立ち上げ、協力しながら果敢に挑戦する姿に胸を打たれました。タイへの派遣ではここ陸前高田市での学びを忘れず努めます。」と陸前高田市の皆さんへの感謝と、派遣へ向けての抱負を述べました。

NPO法人SETで活動中の浦田 菖平さん 

活動報告を行う浦田さん

 2022年度2次隊としてルワンダに派遣予定の浦田 菖平さん(コミュニティ開発)は、NPO法人SETにて、GPに参加しました。
「農」や「地域産業」を通して地域を知り、配属先の今後の事業展開に寄与することを目標に活動しました。ルワンダでの活動も見据え、地域に昔からある資源を活用した農法の再活用を検討するため、地域の方より聞き取り調査を行いました。海産物肥料等、地域に伝わる伝統的な農法を再発見することができ、暮らしと農が密接に結びついていることを実感しました。また、人々が集まりやすい環境づくりを目指し、苗づくりや苗植え、子供達を対象にした自然農体験ワークショップを開催し、パーマカルチャー(里山づくり)農園の整備を行いました。頭で考えるだけではなく実際に体を動かすことを大事にし、取組みを進めました。初めてかまどづくりや雨水タンクの整備にもチャレンジし、人間何でもやってみればできると実感したそうです。他にも、地元食材を使ったマルシェの広報や運営、ご自身の経験を活かした書道クラスも開催しました。GPを通して、毎日の振り返り時間の確保がアイディアを深めていくということや、取組みを行う際に、声がけを積極的に行うことにより周囲を巻き込むことができると気づきもありました。また、どうして協力隊に行きたいのかを改めて考える機会となり、「この人に何かをしたい」という思いから繋がりを作れたことは良かった、自分のやりたいと思ったことがGPを通してできたと報告しました。陸前高田市の方々にはたくさんお世話になり、今後時間をかけて恩返しをしたいと感謝を述べました。

合同会社ぶらり気仙で活動中の加藤 夕貴さん   

活動報告を行う加藤さん

 2022年度2次隊としてウガンダに派遣予定の加藤 夕貴さん(環境教育)は、合同会社ぶらり気仙にてGPに参加しました。
 ウガンダで活動する際の情報発信力の向上を目的として、受入れ先のインスタグラムの運用に力を入れ、取材を通した地元の方との交流や新しいお店の発見などもあり、心から陸前高田の良さを実感し、まちの魅力を知ることできたようです。地元漁師の方のお手伝いでは、牡蠣の梱包作業や、わかめ・めかぶ漁にも初めて挑戦しました。また、陸前高田を訪れる修学旅行生のため、漁師の方たちが説明に使用でき、参加者も楽しめる工夫を加えた資料も作成しました。陸前高田市では水産業を強みとする一方で、畜産業でも事業展開ができないかという受入れ先の発案から、新しくジビエ事業化の検討も行いました。初めて携わるビジネス業界で、当初は難しさを感じる場面も多かったようですが、経営や事業を行う現場の人の声を聞き、自分自身への刺激にもなったそうです。そして、加藤さんの専門分野を活かした野生動物イベントの企画・実施では、子供向けの動物についてのイベントと大人向けの環境保全について考えるワークショップも行い、沢山の地域の方が参加されました。活動を進めるにあたり、PDCAサイクルを意識し、実践できたことにより、今後のウガンダでの活動でも大いに活かすことができると発表しました。「自分に何ができるのか?何をしたらよいか?を考えて、積極的に動くという体験ができ、新しい環境で人々の輪の中に溶け込み、人に頼ることの大切さも学んだ。」と語りました。「協力隊派遣中も市内の博物館や学校とウガンダを繋ぎ、文化交流や野生動物の授業の開催などを試みたい。GPでの経験を活かし積極的に行動していきたい。」と抱負を述べ、帰国後も陸前高田市へ戻ってきたいと笑顔で感謝を述べました。

地域のみなさんと共に過ごした3人の候補生 

活動報告会に集まって下さったみなさん

 GPを行うにあたり、初めて陸前高田市に長期滞在をする3人を自治体・活動関係者のみなさんをはじめ、地域のみなさんに温かく迎え入れていただきました。活動中のみならず、余暇時間についても市内各所への訪問、陸前高田市が誇る漁業にも携わる貴重な機会を経験し、日常ではなかなか体験できない経験から多くの学びを得たようでした。今後も陸前高田市と候補生が末永い繋がり「思民(しみん)※2」となるようJICA東北もサポートを行っていきます。GPに関わって下さった陸前高田市のみなさん、ありがとうございました。

※1「JICA海外協力隊グローカルプログラム」
帰国後も日本国内の地域が抱える課題解決に取り組む意思を有するJICA海外協力隊が、地域の方々とともに、自治体等が実施する地方活性化や地方創生の取り組みを学び、海外での活動に活かしてもらうことを目的としています。訓練所での派遣前訓練開始前の期間(3か月間程度)に研修を行い、日本国内の地域活性化の取組みを知る事で、開発途上国での協力活動においても有益な実務経験や知見を得ることも期待されます。

※2「思民(しみん)」
陸前高田市では、陸前高田市とかかわりを持ち続けてくださる関係人口を「思民(しみん)」と呼んでいます。


報告者:JICA東北 小林/菊池