jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

教科からのSDGsとESD(2)

山藤旅聞先生「SDGsを教えない授業-自分の好き×SDGsの教育デザイン-」

研修を通じての変化

 ・ブータンへの派遣では子どもたちの学ぶ姿勢に驚きを感じる。

 ・現地の100人近い生徒に「なぜ懸命に勉強するのか?」と取材

  ・約9割の子どもたちは国のために学んでいると回答

   ・「誰かのために学ぶことの大切さ」を実感

   ・一方で、日本の教育での「学び」は、苦しいものや自己実現性など個人に向けたメッセージ性が大きい

 ・自分が何のために学ぶのかを言語化できる生徒を育むことを目指す

 ・今までは進学に重点を置いた授業⇔研修を経て、「なぜ学ぶのか?」を考える授業へ

 ・そして教員は教える立場というよりも学ぶ魅力を伝える存在

Design for all

という4点を軸に「なぜ学ぶのか?」を考える。
(学校内の研修としてボルネオスタディーツアーを企画)

 ・海外だけでなく、日本にも目を向けるようになる。
例:今年で6年目となる檜原村を助ける活動

  ・オーガニックコットンプロジェクト、里山整備、農業

   ・そのような活動を通じて、SDGsに出会う

授業の実践例の紹介

 ・各単元の終わりにSDGsを繋げて授業に組み込む。生徒たち自身で課題を見つけ、調べ、考える授業を展開する。

 ・新聞記事を用いて、その内容にSDGsに関連する課題はあるかを生徒自身で探し出す。その後、それらの内容は生物の授業とどのようなつながりがあるのかを考える。

  ・時事問題と教科の連携を図った授業

 ・「地元にSDGsに関連する課題はあるのか?」を考える授業
例:校内のペットボトル回収、商店街の垂れ幕におけるエコ活動

 ・他校の生徒にSDGsを広める活動@JICA地球ひろば

 ・校内での連携によるSDGsの指導
例:中高一貫校での高校生が中学生にSDGsを教える

  ・教科や学年を超えた企画を実施

SDGsは目的か手段か

 ・SDGsは目的である教育理念を達成するための手段であると考える。

 ・SDGsを用いることは良いが、必ずしも用いることが良いとも限らない。

  ・どのように使うかが大きなカギとなる

SDGsを「教えない授業」

 ・みんなの「好き」から「誰かの笑顔」につなげる

  ・生徒の好きなものを細分化して考え、それをSDGsと繋げることで身近に自分事としてSDGsを捉えるようになる

  ・見つけた課題意識に関する取材を行う→それらを他者に発信する

   ・これは生徒のドキドキ・ワクワクを生むスパイラル

 ・先生自身も内発的動機のもと楽しく授業・企画を行っている

  ・それが生徒にも伝わり、自発的な取り組みにもつながる

 ・授業の際に、教員の役割には3つのフェーズがある。

  ・1)着火剤(生徒の動機付け) 2)生徒と一緒のチームを組む(生徒と協働) 3)生徒自身だけで活動する

堀江理砂先生「家庭科×SDGs -「私もできる存在なんだ」-」

本来の「学び」の意味の自覚

 ・自覚のないまま加害者になっていることへの驚き

 ・自分の日常生活が世界と繋がっていることを体感すること

 ・社会的課題とのつながりを衣食住で体感すること

自尊心を高める

家庭科において

 ・他教科と異なり積み重ねでは無く、偏差値的価値観とも関係ない

  ・できることで自尊心が高まる

 ・ものづくりや調理実践を通じて、自分の周りのものや人とのつながり、関係・体験を得るきっかけになる

ESDにおいて

 ・答えが一つではない授業

 ・様々な課題解決に向けて行動する大人との出会い

 ・自分が大人にならなくても行動主体であることの実感

授業実践の紹介

 ・「課題が自分事になる実践」、「自分はできる存在」の2点を重視

 ・年間を通じて児童に学びのゴールを見せた授業展開を行う

  ・最終目標は6年生が5年生にSDGsの学びを共有する会の開催

 ・今年はコロナのニュースから自分の生活とSDGsのつながりを考える

  ・コロナを機に、日本と世界のつながりを実感しやすい

   ・国際理解教育の第一歩を踏み出せた

 ・興味をもった課題について書籍やインターネットを用いて調べ学習を行う。またザンビアの文化や貿易ゲーム、フードロス鬼ごっこなどを扱いSDGsの理解を深める

  ・食や伝統衣装、ゲームなどの体験を重視した学びに

小学生時代に行動を起こす種をまく

 ・知る、わかる、行動する、伝える

 ・授業実践を通じて児童の変容を感じる

先生自身の変容が実践の変容に

 ・「自分の経験や学びを教え込んで児童に変容を迫る」という考えから、「児童と一緒に悩み、仲間として変容していく」

  ・日々の選択や消費行動が、持続可能な幸せな社会に繋がっている

   ・その行動のモノサシがSDGsである

所感

今回のリレートークのお話を聞いていて、二人の先生に共通することが多いと感じた。まず、2人ともSDGsの教授を目的にしすぎるのではなく、物事を考える手段の一つとして捉えているという点を挙げる。他の参加者の先生方もSDGsの良さや凄さを子どもたちに教授する姿勢が強くなってしまうことを問題視されており、私も同様に考えていたので、見えていたようで気づけていなかった新たなSDGsの視点に気づく機会になった。次に、2人とも自らが楽しんで授業を考え、子どもたちと同じ目線に立って取り組んでいる姿が印象的であった。その様子が子どもたちにも伝わり、積極的な活動に繋がっているのではないかと思う。子どもたちと一緒に社会課題に取り組む姿勢をもつことが重要で、それを考える上での手段としてSDGsを用いているようにも捉えられた。さらに自分事として社会課題を考えていく姿勢やこの新型コロナウイルス感染症拡大の現状を前向きに捉えて、その状況を活かそうと行動に移していることも共通していたと思う。子どもたちに思考の柔軟性を求めるだけでなく、教師がどのような状況下でもそれを学びの機会として捉え、活用する臨機応変さも必要であると改めて実感した。各教科の授業のイメージであると単元とSDGsをどのように結びつけるかが課題となるが、教科の強みを生かすという点に特化することで、より柔軟に子どもたちが社会課題を考える機会を設けることができていると感じた。2回のリレートークを通じて教育のもつ可能性とそれを活かすことが非常に重要であると感じ、そのための先生方の陰ならぬ努力や自分でアンテナを張って様々な機会を作っていることを知った。今後も多くの先生方のお話を通じて私自身の視野を広げる機会にもしていきたいと考えている。