日本という「異文化」に暮らす子ども達のために~帰国後の国際協力~

途上国で現地の人々と共に生活し、同じ目線で途上国の課題解決に貢献する活動を行うことがJICA海外協力隊の目的ですが、帰国後も「地域の人々と共に、課題解決に貢献」を続ける方々がいます。

2021年4月21日

「せんせ~~~い!!」 響き渡る元気な声は… 

講師をつとめるシニアボランティア経験者の方々。異文化で暮らすことの難しさと、それを支えてくれた異国の人達のやさしさを知っているからこそ、外国につながりを持つ子ども達に貢献したいという思いで活動に取り組まれています。

嬉々とした声を上げて、教室に駆け込んできたのは、『シニアボランティア経験を活かす会』による『外国につながる小学生の日本語支援教室』の生徒。
現在、通ってくる13名の生徒の多くは計算力や暗記力はあるものの、日本語の文章問題が理解できない、先生からの指示が分からないため授業についていけないという悩みがあるそうです。

そこで彼らの日本語をサポートしようとそれぞれの年齢や日本語レベルにあわせ途上国での国際協力活動経験のあるシニアボランティア会員10名ほどが講師となり、昨年10月より週に2回、日本語の授業を始めました。

元気いっぱいな声とともに子ども達がかけこんでくるのは、拙い日本語でも自分の言うことを聞こうとしてくれる、受け止めてくれる、よりそってくれる大人がいることに、子ども達は自分の居場所をみつけたと感じたからなのでしょう。

「日本に来てよかった」と思ってもらいたい  

【画像】 『シニアボランティア経験を活かす会』は市民向け講座や国際協力関連イベントへの参加など様々な形で、ボランティア経験の社会還元に取り組んでいます。これまでも外国につながる子ども達の支援として、新宿区教育委員会から委託を受け、学校連絡文書の翻訳を行ってきました。
この日本語支援活動はどのような想いで始められたのか、プロジェクトマネージャーの高知尾明彦さんにお話を伺いました。

「私達がシニアボランティアとして海外に派遣された時、言葉や文化の壁を乗り越えるのは大変でした。来日したばかりの外国につながる子ども達も同様のことに直面していると考え、言葉や文化の壁を乗り越えるお手伝いをしようとこの活動を始めました。
低学年の子ども達は勉強が難しいと思うと、席を立ったり走りまわったり落ち着きがなくなります。私達は子ども達が興味を持って学べるように、テキストの学習だけでなくホワイトボードに絵を描かせたり、動物の名前や鳴き声を中国語と日本語で言い合ったりするなどして、少しでも楽しい授業になるように心がけています。また、高学年の子ども達は恥ずかしさからなのか声が小さく、発音にも問題があり、前の学年で習う言葉や漢字もしっかり覚えていませんでした。生活に役立つ文章や教科につながる文章を使って口頭練習を繰り返し行い、日本語に親しめるように工夫しています。試行錯誤しながらの授業で反省することの多い日々ですが、子ども達の成長を見ると、私達もよりがんばろうという気持ちにさせられます。自信をもって日本語を話し、有意義な楽しい学校生活を送れるように、そして日本に来て良かったと思ってもらえるように支援していこうと思います。」

誰かに寄り添う「協力」は2年間では終わらない    

 日本語講師をつとめるシニアボランティア経験者の中には、「子どもに何かを教えるのは初めて」という方々もいます。
 それでもネット検索をしたり、日本語教育に関する書籍や教材を勉強したり、講師同士相談を重ねながら、目の前の子ども達に向き合われています。
 帰国後も様々な形で隣の誰かを支え歩まれる活動を見て、二年間の「JICA海外協力隊」で得た経験から始まる「協力」があることを強く感じました。

報告:市民参加協力第一課・八星真里子