PCR検査試薬が足りない?COVID-19の最前線で活躍する帰国研修員と情報交換を実施

COVID-19に対して各国の最前線で奮闘している帰国研修員がオンラインで集まり、国立感染症研究所の講師6名とともに5日間に渡る活動フォローアップと情報交換を実施しました。

2021年4月28日

オンデマンド×オンラインの組み合わせにより、研修効果を最大に!

感染防止対策をとりながら、JICA東京に関係者が集まり遠隔研修を実施しました。

2019年5月~7月にHIV/エイズ等の感染症の検査技術向上を目的として日本で実施された課題別研修「HIVを含む各種感染症コントロールのための検査技術とサーベイランス強化」の参加者が2021年3月にオンラインで集合しました!集まったのは昨年から各国で新型コロナウイルス感染症との闘いの最前線で活躍をしている10名の検査官です。ある人は時差の関係で朝5時、ある人は現地のお正月休暇中の研修実施となりましたが、2019年に共に研修で学びあった仲間が集まると、まるで対面で集まっているかのように会話に花が咲きました。限られた研修期間で最大限に学びを増やすべく、オンラインによる情報や意見の交換による学び合いだけでなく、10種類のオンデマンド教材を並行して学習しながら研修を行いました。オンデマンド学習教材は、日本国内でCOVID-19対応を進める国立感染症研究所を中心とする講師陣により、最前線で活躍されている経験や研究成果、日本国内外の最新の知見を交えて作成された教材です。

1日のPCR検査数はなんと6,000件!?共有される各国の最前線の状況

研修員と講師による意見交換の様子。連日2時間にわたり活発な情報交換が行われました。

研修員はみな検査業務で多忙のなか研修に参加していたので、情報共有会は1日2~3名で実施するスケジュールを組んでいました。それにもかかわらず、研修が始まると連日ほぼ全員が自身の業務の合間を縫って参加し、活発な議論が繰り広げられました。各国のCOVID-19の状況が続々と共有され、チリのWilliamさんの研究室はPCRの検体数が多すぎて24時間/7日間休みなく稼働しており、なんと1日6,000件ものPCR検査を実施していることが共有されました。フィリピンのMarizさんの職場では人手不足や検査試薬の不足が深刻であることや、ガーナのChrisさんの検査室でも1日数千のPCR検査を実施していることが共有されました。各国の最前線の驚きの現状が浮き彫りとなると共に、試薬や人手の不足は日本を含めて世界中の共通の課題であることが明らかになりました。一方、嬉しいことに、ガーナのYaaさんは2019年の研修で学んだ「5S-カイゼン」を実践しており、整理された職場の試薬置き場の様子を写真とともに紹介してくれました。ワクチンの接種状況についても各国の進捗状況が話されました。講師からは、最新の研究結果によるデータの共有や、それぞれの専門的な視点からの助言がなされました。
オンラインの接続時間は毎回2時間の予定でしたが大いに盛り上がりを見せ、気づけば毎日終了時間を過ぎていました。

仲間同士のつながりを維持しながら、それぞれの場所で闘い続ける

閉講式終了後は皆が拍手をして余韻にひたり、接続を切る研修員はいませんでした(職員が泣く泣く接続を切り研修を終了しました)。

日本での研修実施から約2年経った今でもこれほどの実りあるフォローアップ研修ができたのは、コースリーダーである国立感染症研究所エイズ研究センターに所属している原田恵嘉先生の情熱が大きく影響しています。原田先生の信条は、「一人ひとりに対して熱意と誠意をもって、最高の学びの機会を提供すること」。最終日は名残惜しさに参加者全員がなかなか接続を切ることができませんでした。全員の最後の挨拶では、「今後も情報交換やつながりを持ち続けながら、いつか笑顔でみんなで対面での再会を果たしたい」という想いが共通して語られました。仲間とともに学び合いながら終わりの見えない脅威に対して闘い続ける気持ちを新たに持つことができた研修となりました!

<事業・研修の概要>
・開催期間:3月20日から25日の5日間
・タイトル:「HIVを含む各種感染症コントロールのための検査技術とサーベイランス強化」‘Strengthening Laboratory Techniques and Surveillance System for Global Control of HIV and Related Infectious Diseases’
・参加国:チリ、エスワティニ、ガーナ、イラン、フィリピン、スーダン、東ティモール、ジンバブエより計10名