15分で分かる日本の国際法・海洋法近代史

コロナ禍で止むに止まれず開始した遠隔研修、通常はオンライン講義とオンデマンド教材を用いた自主学習で構成されます。2020年度から開始した課題別研修「国際公法」では、この二つに加えて、視察研修もバーチャルで実施しました。「江戸幕府に開国を迫った黒船の隻数や船名」など、私達も知らなかった国際法・海洋法にまつわる日本の近代史を、研修員とともに学ぶことが出来ます。

2021年5月26日

この分野では初めての試み

課題別研修「国際公法」は、初回から全編を遠隔研修で実施するという難しい船出を迎えました。
国連海洋法条約をベースとして、
 ●海洋空間と国際法
 ●海上で生起する犯罪や違反行為への対処
 ●海洋資源をめぐる競争と協力 
 ●海洋における紛争の平和的解決
など11のトピックに関するオンデマンド教材を、本研修用に一から各講師に作成いただきました。
参加した研修員はインドネシア、カンボジア、ケニア、ベトナム、マレーシアから9名の若手行政官で、所属先も外務省、法務省、海洋漁業省、海上保安庁と多様でした。

遠隔研修にはコーヒー・ブレイクでの雑談や、食事をしながらの意見交換の時間がありません。来日研修であれば、このような時間を利用して出来たであろう研修員参加国間の制度の違いや、自国領海線の解釈などについて、Zoomの画面越しに深く話し合うことは困難でした。
一方で、遠隔研修だから出来たこともあります。講師力作のオンデマンド教材や、Zoomで実施した質疑応答セッションの録画ビデオを研修員が見直したり、著作者の同意を得た上でそれらを関係者間で共有することもできます。

今回の遠隔研修を実施することによって、今までJICAの本邦研修が担ってきた役割について、再評価することが出来ました。

何とか日本の現場を知ってもらいたいから「バーチャル研修旅行」 

課題別研修は、教室で講義や討議だけを実施していれば良いわけではありません。そこが大学等教育機関での「学習」とは異なるところです。教室で学んだ知識が、日本の現場ではどのように生かされているのかを体験することも重要です。しかし、遠隔研修でそれを行うことは困難です。
そこで、遠隔研修であっても、日本の現場を知ってもらう機会を作ろうと、バーチャル研修旅行を企画しました。研修員が来日出来ていたら、是非連れて行きたかった資料館を研修指導者が訪問し、各施設に保蔵される資料の意義と歴史について、研修指導者がその施設代表者にインタビューする動画を4本制作しました。


【画像】まず一本目は研修指導者、中田達也特任准教授*の所属機関である東京海洋大学に所在する二つの資料館に関する紹介です*。
* 肩書は研修実施当時

【画像】二本目は、日本と国際法及び海洋法との歴史について、研修指導者が外務省外交史料館と水産庁を訪問します。

【画像】三本目は、領海幅員の制定と、戦後に発生したそれに関わる悲しい事件を紹介します。

【画像】四本目は、早くから海洋資源の重要性を説いた小田滋国際司法裁判所判事の功績と、最新の海洋開発について紹介します。

<事業・研修の概要>
研修タイトル:「国際公法(海洋法と国際紛争の平和的解決)」
研修期間:2021年2月9日~2021年3月19日 (2020年度から2022年度まで3ヵ年で実施予定)
報告者:【Email】Ukai.Hikoyuki@jica.go.jp