人間の安全・安心保障、持続可能な社会づくりを国内から ー「教員のためのSDGs研修」実施報告—

教師海外研修を通じて提供してきた「持続可能な社会づくり」「国際協力の必要性」への理解。今年度は国内で、またオンラインも活用し、派遣予定国であったザンビア・パラグアイに縁のある現場訪問を実施することができました。コロナ禍にあっても学びを止めない、熱い気持ちを持った18名の先生が集まりました!充実の学びを得ることのできた研修の様子をお伝えします。

2021年10月8日

共存か、共生かー多文化共生の現場から-

視察研修は5日間にわたり、下記プログラムにて進行しました。アドバイザーの佐藤真久先生(東京都市大学)のご指導のもと、毎日振り返りを行い、議論を交わしながら学びを深めていきました。

前半は様々な「多文化共生」の現場を訪問しました。
住民(約5000人)の半数以上が中国人住民となった埼玉県川口市の芝園団地の自治会。言語や文化が異なる中で分断を生まずに皆が安心して暮らしていくために何が必要か、試行錯誤を繰り返しながら様々な取り組みを行ってきました。「共存か、共生か」というキーワードを頂き、これは日本人同士であっても繋がりが希薄になっている現代社会の課題では?外国につながりを持つ子供が増えてきている学校では?と他人事ではなくジブンゴトとして考えさせられる機会となりました。

明治以降、パラグアイを含む中南米の国々に移住していった日本人。1990年の入国管理法改正以降、2世・3世の方々の日本への再定住も進んでいます。横浜市鶴見区では、戦前から朝鮮人をはじめ外国人との共生が進んでおり、沖縄からブラジルへ渡った日系人の方々の集住するコミュニティもあります。町を見学しながら、様々な立場で共生の問題に取り組む方々のお話を伺うことができました。

人間の安全・安心の保障 

後半は「持続可能な社会」を地域づくりの観点から考える現場を訪問しました。
深刻な過疎化に悩む宮城県丸森町が、地域創生のために選んだ手段は「国際協力」。2015年からJICAの「草の根技術協力」の制度を活用し、ザンビアの小規模農家に丸森町の在来農法や食品加工の技術を移転するプロジェクトを実施しています。この取り組みは、ザンビアの農村の生活を向上させると同時に、丸森町をも元気にしました。町おこしを推進する地域おこし協力隊や、アイターンで就職する若者が増え始めています。高校生の時にザンビアを訪問した町出身の学生が「周りの大人たちが、多様な職業や、広い世界への気づきをくれた」という言葉が心に残りました。

東日本大震災から10年という節目を迎えた日本。研修の終盤では、震災や原発事故からの復興に取り組む現場を訪問しました。実際に被災地を訪れ、行政の取り組みや、被災者の心の健康に寄り添う団体のお話しを聞かせていただきました。安全が確保された街づくりが進む中、住民の安心という面ではもっとできることがあるのではないか。過去を振り返り、よりよい未来を創っていくため、本当の復興に必要なことは何か、それぞれの立場から真摯な取り組みがなされていることに深く感銘をうけました。

研修では、全体を通じ、「持続可能な社会づくり」を「人間の安全保障」をキーワードに参加者が考察しました。
これまで、海外での国際協力の文脈で考えられてきたこの言葉が、日本国内での「多文化共生」、「地域づくり」でも基盤となっていることを実感しました。そして、「安全保障」を考える中で、関わる全ての人の「安心が保障」されることの大切さを学び、教育や民間の力が大きな役割を果たすという大切な気づきを得た国内視察でした。
ご協力いただいたみなさまに心より感謝申し上げます。

学びは続く

【画像】9月5日に実施された事後研修では、視察研修で得た学びを自分の中に落とし込み、今後どのように授業に反映させていくかの意見を出し合いました。全8日間、年齢も校種も専門科目も違う18名の教員の皆さんが、お互いに学びあう、高めあう研修となったと思います。
今後、先生方は各所属校でこの夏の学びを活かした授業を展開されます。その授業実践の様子もお届けしたいと考えておりますので、どうぞお楽しみに!

市民参加協力第一課 高橋瑞樹・古賀聡子