コロナ禍における草の根技術協力事業の挑戦【vol.1】

新型コロナウイルス感染症は世界中に大きな変化をもたらしました。現地で人々に寄り添い、きめ細かな支援を行うことが特徴の草の根技術協力事業も多大な影響を受けました。 いまだに現地への渡航が難しく、計画どおりに活動を実施できない状態が続いていますが、コロナ禍に負けず、支援を止めないよう様々な工夫が行われています。今回はラオス、ケニア、フィリピンのプロジェクトでのコロナ禍の取り組みをご紹介します。

2021年11月8日

いつでも、だれでも、オンラインで学ぶ 

ラオスで現在実施中の「ラオス木工職業教育校におけるトレーナーの技術向上プロジェクト」。2018年に始まったこのプロジェクトでは、日本から家具職人などの専門家がラオスの職業教育校を実際に訪問し、教員を対象に木工家具製作のための技術と指導力向上のための研修を実施していました。そして研修で学んだ成果が日々の木工指導に実践できているか、その後のモニタリングとフォローアップ指導を行っていました。しかし、感染拡大の影響を受け、ラオス国内の移動が制限されるなど、各地の職業教育校での活動が難しくなってしまいました。

指導動画の一場面

そこで実地フォローアップ指導の代わりにと考案したのが動画によるオンライン講座です。木工家具などを作るための技術を伝える指導動画がシリーズで制作され、完成した動画はYouTubeに掲載。職業教育校の教員だけでなく、誰でも好きな時に動画にアクセスし、学生や木工技術を学びたい人々などより幅広い人たちが学べるようになりました。また、木工技術書や家具の図面をダウンロードできるようにホームページも制作。指導を受ける機会が少ない地方の教員でも、オンライン教材を使ってより良い指導ができるような仕組みづくりに取り組んでいます。(実施団体:認定特定非営利活動法人国際協力 NGO・IV−JAPAN)

まずはできることから、感染症対策に取り組む

コロナ禍でプロジェクトが始まった「ケニア国エイズ孤児を抱える貧困家庭の生計向上とキャリアプランニング支援事業」。現地に渡航できず、カウンターパートと活動のための協議をオンラインで進めるも、ケニア国内で実施されたロックダウンの影響でカウンターパートも各家庭を訪問できないなど、エイズ孤児や貧困家庭に暮らす子どもたちへの支援プログラムがなかなか進められない状況が続きました。

他方、活動実施地域のホマベイ郡では、多くの学校に水道がなく、マスクなどの衛生用品も不足していたことから、感染症対策は不十分で、現地の人々の感染症に対する危機感も低い状況でした。

作成したポスター

そこで実施したのは、現地関係者を巻き込んだ感染症対策の活動。手洗い用の水タンクの設置や、マスク、石鹸などの衛生用品を提供し、新型コロナウイルス感染症についての知識と感染予防方法を広めるために啓発ポスターを作成しました。これらの活動は現地カウンターパートを中心に進められ、子どもたちが書いた絵をポスターに使用するなど参加型で協力してもらうことで、地域全体を巻き込んだ活動が可能となりました。特に弱い立場にある子どもたちや貧困家庭の人々が少しでも安心して暮らせるようになるため、手洗い指導など感染症対策に取り組みながら活動を続けていきます。(実施団体:特定非営利活動法人エイズ孤児支援 NGO・PLAS)

コロナ禍の子どもたちを心身ともにサポート

フィリピンでは厳しい外出規制を伴うロックダウンが長期にわたって実施され、その影響で多くの人が職を失ったり、性的虐待件数が大幅に増加するなど、弱い立場にある子どもたちにも大きな影響が及んでいます。そして、こうした子どもたちを保護・養育するための児童養護施設では、衛生用品が不足し、感染予防対策が不十分な状態でした。

職員が子どもたちに教える様子

そこで、2016~2018年に実施されていた「児童養護施設の養育体制強化を通じたこども達の成長と自立を促進するプロジェクト」のフォローアップとして、このコロナ禍のニーズに応えるための取り組みが実施されました。
元々児童福祉施設職員を対象に実施されていた能力強化研修をコロナ禍に特化した内容に変更してオンライン研修を実施。参加した施設職員は、感染予防対策や衛生管理だけでなく、「コロナ禍におけるストレスと不安にどう上手く向き合うのか」、「コロナ禍において子どもたちをどのようにサポートするのか」について学びました。研修後には施設職員が学んだことを早速実践、子どもたちにも伝えました。子どもたちが少しでも心身共に健康な環境で過ごせるよう、これからも衛生管理指導と心のケアを行っていきます。(実施団体:特定非営利活動法人アクション)