中学1年生が見た!「もうひとつの鎌倉」~未来に向けた「SDGs」を過去の「歴史」から捉える~

昭島市立清泉中学校1年生の、SDGsを取り入れた「鎌倉フィールドワーク」ついてご紹介します。一見相反する未来志向の「SDGs」と過去志向の「歴史」。どのような授業が展開されているのでしょうか?

2021年12月14日

「鎌倉フィールドワーク」の意義 

歴史的事実はひとつであっても、見方を変えることによって様々な発見があります。清泉中学校の生徒が実践した「鎌倉フィールドワーク」は、「SDGs(持続可能な開発目標)」の視点から鎌倉の歴史を捉え、学びにするという試みでした。

子どもたちが「ただ鎌倉を見に行く」ではなく、フィールドワークに行く前と行った後の「鎌倉の見方の変化」を実感させるため、事前学習と事後学習を充実させていました。具体的には、個人で鎌倉の歴史について事前に調査しレポート形式でまとめ、班単位で実際に鎌倉に出向き、行って学んだことを SDGsの目標に関連させて班ごとにプレゼンテーションするという一連の活動です。

インターネット等で情報が簡単に集められる時代になりましたが、フィールドワークの重要性は変わらないのではないでしょうか。なぜなら、実際に行かなければわからない「事実」があるからです。フィールドワークを経て、子どもたちは「もうひとつの鎌倉」と題し、「SDGs」と関連付けたときに見えてくる鎌倉の別の側面を事後学習で共有しました。

【事前学習】資料から考える「歴史上の人物・文化財が私たちに伝えてくれていること」

「事前学習レポート」で特に工夫されていたのが、「調べた歴史上の人物や文化財が私たちに伝えてくれていることは何か」を自分の言葉で書き、関連するSDGs目標を選んだことです。

「鎌倉円覚寺」を調べていた生徒は、「この時代からも外国との交流があり、互いに相手の文化を認めていることから、今の日本も見習うことはいっぱいある。」と書いていました。これに関連するSDGsして、10「人や国の不平等をなくそう」を選択していました。

「長谷寺」を調べていた生徒は、長谷寺の四季折々の花を楽しむことのできる庭園に興味を示し、こんなことを想像していました。「私が資料を集めているときに花が印象に残っていて、調べたときに色々な花があったので『自然や花を大切に』と伝えてくれているのかなと思いました。」そして、これに関連するSDGsとして、15「陸の豊かさを守ろう」を選択していました。

【画像】このように、事前学習レポートでは、子どもたちが単純に歴史的な事実を調べるのだけではなく、それらが伝えてくれていることを想像することによって、歴史を学ぶ意味が浮き出てくるのではないでしょうか。また、SDGsと結びつけることで、歴史は現代の諸課題の解決策となり得る貴重な引き出しになるのです。

【事後学習】中学生が見た「もうひとつの鎌倉」  

【画像】フィールドワークでの発見を「SDGs」と絡めて子どもたちが発表したのが、「もうひとつの鎌倉」でした。それは、鎌倉に直接出向いて初めて分かった新しい側面です。本やインターネットでは知ることができなかった生の鎌倉を見て、生徒は何を考えたのでしょうか?

高徳院を訪れていた5班は、「鎌倉には自然がたくさんありました。いろんなところに竹や木がたくさん植えられていました。なので、動物の住むところが守られていて環境問題のことも考えられていました。」と述べ、SDGs15の「陸の豊かさも守ろう」と紐づけて発表していました。

同じ高徳院を訪れていても、班によって違うSDGsの観点から観察していました。1班は、高徳院宝物殿がバリアフリーになっていたことに着目し、その観点で見たら鎌倉全体が、多目的トイレの設置や障碍者の方向けのバリアフリーマップを配布しているなど、SDGs10「人や国の不平等をなくそう」、SDGs11「住み続けられるまちづくりを」に結びつけていました。

鎌倉フィールドワークは、子どもたちが歴史を学びながら持続可能な社会を考えた取り組みでした。ポイントをまとめると2つあります。1つ目は、歴史的な事実を現代の社会課題に活かせる側面を考えたこと。2つ目は、SDGs達成に向けた具体的な鎌倉の取り組みを現地で考えることができたことです。このように歴史とフィールドワークを結び付けることで、過去から学んだことを持続可能な未来に応用して考えることができました。

報告者 市民参加協力第一課 中村祐子