【インターン生と一緒に学ぼう】日本ハビタット協会「スマイルトイレプロジェクト」のここがスゴイ!

8月28日にチュニジアでTICAD8が開催されました。アフリカではどんな国際協力が行われているのだろう…?今回、JICA東京インターン生が、日本ハビタット協会事務局長の篠原氏にインタビューを行い、ケニアで実施中の草の根技術協力事業「スマイルトイレプロジェクト」について、学生目線で根掘り葉掘り質問しました。

2022年9月2日

工夫がいっぱい!スマイルトイレプロジェクトってどんな活動?

プロジェクト前のトイレ

村人の手によって完成したトイレ

 不衛生な環境は、病気リスクの増加、貧困の増大を引き起こし、コミュニティの発展を妨げる要因です。スマイルトイレプロジェクトでは、住民衛生意識向上のための研修や、衛生的で長期的に使用可能なトイレを建設する技術指導を行い、安全なトイレの普及を行っています。プロジェクト実施前は、対象地域であるケニア共和国ホーマベイ県ガボンド地区では住民の42%しか衛生的なトイレを持っていませんでしたが、2019年にはほぼ100%の家庭にトイレが設置され、そのうちの80%が、手洗い場もある環境になりました。
 従来の穴掘り式トイレは土壌が緩くて危険、蓋がないため排泄物にハエが湧き感染症を引き起こすなどの問題がありました。スマイルトイレプロジェクトでは、蓋を設置することでハエの発生を防ぎ、壁や屋根を作ることでプライバシーを守るトイレづくりを行っています。また持続的にトイレを衛生に保つために、コンクリートで床を作り掃除をしやすくしています。
 その他にもスマイルトイレプロジェクトでは、たくさんの工夫を行っています。例えば、穴掘り式トイレの穴が一杯になったら、その穴は埋めて排泄物を肥料にし、その後バナナの栽培を行うなど、循環サイクルが実現されています。住民たちには、上の建屋だけを移動させて新たなトイレを設置できるようにトイレ建設の技術を指導しています。また、水源や井戸から離れたところに建設することで飲用水の衛生を保つ工夫もされています。

現地の住民もびっくり!自分たちの生活の現状を知った驚きの方法とは? 

ワークショップの様子

粉洗剤で描いた村の地図と住民の名前が書かれた付箋

病気になった時の費用を計算

 スマイルトイレプロジェクトでは、トイレを使う習慣がない地域住民に対して、衛生問題への意識改革やトイレの重要性を理解してもらうためのワークショップを行っています。今回は、インタビューの中で1番印象的だった「ビレッジマッピング」というワークショップについてご紹介します。
 インターン「地域住民の衛生に対する意識改革をどのように行ったのか具体的なお話をお伺いしたいです。」
 篠原氏「まず地域住民を芝生や大きな会場に集め、粉洗剤を使って村の地図を書いてもらいます。その地図の上に、住民の名前が書かれた付箋を貼り自分の家がどこにあるか、家にトイレがある人とない人で色分けし、現状を認識します。家の部分にはソーダ水やパンを置いておきます。その後、村を歩いて野外排泄を探し、拾ってきてもらいます。再度集合し、どこで拾ったかを実際にその地図に置きます…。」
 完成した地図を見て、住民は主体的に衛生問題について考えるきっかけになる。と篠原氏は話します。
 篠原氏「『このパンを食べたい人はいますか?』と聞くと誰も食べたい人はいません…。食べることを促すといやそうに食べます…。そこで、『これはマップ上の話だけではありません。実際に身の回りで起きていることです。』と話すことで、衛生環境について考え、住民が主体的に取り組むきっかけになります。」
 これまでトイレを使う習慣がなかった住民たちがトイレ建設を主体的に行うためには、その重要性を理解することが大切です。実践的なワークショップを通して現状を可視化することで、住民たちに気づいてもらう、考えてもらうことが大切だと教えていただきました。
 篠原氏「それだけではなく、トイレが家庭にない世帯数と年間の野外排出量を計算し、野外排出の処理や、感染症にかかってしまった時の治療費を一緒に考え、自分たちが思っている以上に支出がかかることを学び、トイレの設置が必要だと感じる住民が増えました。」

トイレっていくらでつくれるの?

SATO Pan が導入されたトイレ

 トイレを1つ作るのに必要な材料・コスト・時間はどのくらいだろう?という素朴な疑問を篠原氏に訊ねてみました。

篠原氏「スマイルトイレプロジェクトで建設しているトイレは穴掘り式トイレです。そこに感染症防止の蓋とプライバシーを守るための壁や天井を付けます。穴掘り式トイレでは、掘った穴に用を足すので下水設備は必要ありません。必要な穴は約1週間で掘ることができます。1つのトイレを作るのに大体5~7000円かかります。」

 5~7000円と聞くと、日本ではお手頃に感じるかもしれません。しかし5~7000円はケニアの人々の平均月収と同じ額です。

インターン「5~7000円は村人にとって大金ですね。支払いが難しい人も中にはいるのではないでしょうか?」

篠原氏「そういう人のために『マイクロファイナンス』を活用します。例えばABCDEさん5人が月々1000円ずつ出し合って、1か月目はAさんの家庭のトイレを、2か月目にBさんの家庭、というように月々の支払う負担を減らしながら建設を進めるシステムです。」

 トイレの壁や屋根は各住民が出せるお金の範囲で実施されます。トイレ建設の費用を捻出するのが難しい人々に対して、マイクロファイナンスの他、農業技術指導を行い収益向上のサポートや、土壁を使ってコストを削減するなどの工夫もされていました。

最後に報告者から一言・・・
 今回は日本ハビタット協会が実施している「スマイルトイレプロジェクト」について伺いました。
地域の資源を最大限に活用し、トイレ建設の費用を捻出することが難しい人に対しても工夫が施されており、誰一人取り残さずに、住民たちが持続的に安全なトイレを使うことができる環境を実現されていることが印象的でした。スマイルトイレプロジェクトや、その他日本ハビタット協会が行っているプロジェクトに関心のある方は是非、日本ハビタット協会HPやこれまで掲載された記事をご覧ください。

報告者:前田真鈴(インターン)