遠隔研修の好事例紹介:「サイバーセキュリティ対策強化のための国際法・政策能力向上」

世界的な新型コロナウィルス感染拡大の影響により、当センターでは、引き続き遠隔研修の取り組みを実施しています。その中でも、本課題別研修「サイバーセキュリティ対策強化のための国際法・政策能力向上」は、個別コンサルテーションや日本文化理解プログラム等を組み込み、プログラム内容・構成を工夫することで参加研修員から高い評価を得ましたので、好事例としてご紹介します!

2022年9月5日

遠隔研修の効果を高める3つの工夫

本課題別研修は、昨年度より遠隔研修を実施していますが、来日研修と比べて、①研修員・日本側専門家を含めた参加者同士が関係性を深め、学びあう機会が少ない、②日本の文化・社会を知ってもらう機会が少ない、③自国での業務と並行して遠隔研修に参加するため研修に集中することが難しい… 等の課題がありました。この点を踏まえ、今年度はより効果的な研修実施を目指し、主に以下の3つの工夫を行いました。

1.個別コンサルテーションの実施
 本研修は、各国のサイバーセキュリティ政策・対策を担う行政官の育成を目的として実施していますが、本分野の各国の課題・進捗状況は大きく異なるため、各国課題に対し個別にアプローチすることも大変有益です。そのため、今年度は明治大学グローバル・ガバナンス研究科の湯淺墾道教授に外部専門家としてご協力いただき、国別の個別コンサルテーションを実施しました。研修員は事前に議論したい優先議題を整理し、当日は録画なしで機微な内容も話しやすい環境作りをしたことで、湯淺先生と自由にディスカッションを深めることができました。各国課題に対する具体的なヒント・助言を得られる大変有意義な機会となり、研修員からの評価も高いプログラムとなりました。

2.日本文化理解プログラム(バーチャルツアー)の実施
 研修事業の目的の一つに、知日家の育成も含まれますが、遠隔研修では日本の文化・社会を紹介する機会が限られているため、今年度はオリエンテーションの一環として、日本文化理解プログラム(飛騨高山バーチャルツアー)を実施しました。
 同バーチャルツアーでは、飛騨高山の古い町並みを実際に歩いているかのような臨場感ある美しい映像を見ながら、英語ガイドによる飛騨高山の歴史・文化についてのプレゼンテーション・クイズ等も楽しむことができ、オンラインながらも日本の歴史・文化への学びを深め、街歩きを疑似体験できるものです。英語ガイドの流暢な英語とホスピタリティ溢れる笑顔も魅力の一つで、画面を通じても日本の「おもてなし」を体験する貴重な機会となりました。
 参加した研修員からは、「日本の建築物や酒の歴史について初めて学ぶことができた」、「ぜひコロナ禍が収束したら日本に行きたい!」などの嬉しい声が聞かれました。

3.研修日程の柔軟性
 遠隔研修では、研修員が自国で日常業務を行いながら、並行して遠隔研修に参加する場合が多いため、特に連続した研修日程(一定時間を数週間連日)となると、研修員側にとっても日本実施側にとっても負担が大きい部分があります。そのため、今年度は研修期間を広く確保しつつも、研修プログラムを週に3日程度に抑えたところ、研修員側は業務との都合を付けやすくなったほか、日本実施側も余裕を持った実施運営を図ることができ効果的でした。

さらなるサイバーセキュリティ強化のための国際連携を目指して

遠隔研修の様子 @閉講式

遠隔研修の様子 @日本文化理解プログラム

 サイバーセキュリティの問題は、近年インターネットの急速な普及に伴って、その被害の規模・影響は年々拡大・深刻化しており、各国の安全保障を脅かす脅威となっています。足元では、重要インフラ事業者(電力、ガス等)を狙った標的型攻撃や国家間のサイバー戦争にまで発展する事態も起こっており、私たちが日常的に利用している電気・ガス・電車・金融等が突然停止し社会活動全体に大きな影響が与えられたり、国家間の軍事的対立に利用される危険性も十分にあるのです。これは一国のみで対応することが極めて困難な喫緊の共通課題であり、国際社会全体でのネットワーク強化・連携が重要です。
 当機構ではLinkedIn(SNS)を使ったサイバーセキュリティ人材のネットワーク構築を促進しており、多くの国内外のパートナー・専門人材を繋ぐ役割を果たしています。研修事業を通じて育まれる各国パートナーとの信頼・関係構築を通して、さらなるサイバーセキュリティ強化のための国際連携に貢献していきたいと考えています。

<研修概要>
研 修 名: 「サイバーセキュリティ対策強化のための国際法・政策能力向上」
実施期間: 2022年8月1日(月)~8月31日(水)
参 加 国: アルメニア、バングラデシュ、インドネシア、キルギス、ナイジェリア、ルワンダ、ウクライナ、ベトナム
参加者数: 17名(国別上乗せ、オブザーバー参加者含む)
研修委託先: 一般財団法人日本国際協力センター(JICE)