暴力のない支援を目指す~セーフガーディング実践研修の取り組みから~

10月2日は国際非暴力デーです。本稿では、開発援助や人道支援の陰に潜む暴力という、国際協力に関わる人々の足元を見つめ直す取り組みをご紹介します。

2022年9月30日

セーフガーディングとは  

NGOのための「子どもと若者のセーフガーディング実践研修」の様子

国際協力の場では、人々が自由で安全で豊かに生活できる社会を目指し、さまざまな関係者や組織などが携わっています。被災地や社会情勢の不安定な国・地域での活動も少なくありません。外部支援者が活動するにあたっては、”Do No Harm”の原則が繰り返し叫ばれてきました。
国際協力に携わることは、所属する組織やプロジェクトの看板を背に、大きな予算と、支援内容を左右する情報やネットワークへのアクセス権を有することにもなります。支援対象者との間には大きな力の格差が存在し、そこにある種の暴力性が伴いやすくなります。なかには、その立場を誤用する者がいて、子どもや若者、あるいは被災コミュニティの人たちの権利が侵されるといった見過ごせない問題が生じています。しかし、表面化するのは氷山の一角でしかありません。
組織としてそれを予防し、懸念があれば適正に処していくための取り組みが、セーフガーディングです。子どもや若者に対する体罰や暴言、差別、性暴力をはじめ、あらゆる形態の暴力や不適切行為を防ぐことは、国内外を問わず、対人支援や人材育成分野での喫緊の課題となっています。

暴力や搾取のない支援を実現するために

この問題意識のもと、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンはJICA東京とともに、2021年からNGOのための「子どもと若者のセーフガーディング実践研修」を実施しています。16団体が定期的に集い、10回にわたる連続研修や勉強会を通じて、さまざまな角度からセーフガーディングのあり方を議論し、自らの組織内にその制度を採り入れ、強化していきました。JICAからも職員が、すべての研修にオブザーバー参加し、NGOと学びをともにしています。
当初は、取り組むべき範囲の広さに戸惑う参加者の声もありましたが、回を重ねていくごとに着実に理解と実践が進んでいったように感じました。実際に、参加団体が互いに経験談や取り組み事例を共有したことが、とても役立ったという感想が多くありました。今後は、より広い層の方々に、この取り組みをご紹介できるシンポジウムなども企画していく予定です。
支援現場で出会うすべての子どもや若者たちに、暴力や搾取のない支援を約束しなければなりません。

報告者:公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン チャイルド・セーフガーディング・スペシャリスト 金谷直子

この事業に関しては、下記サイトでもご紹介しています。