【SDGs×多文化共生】先生たちが見つけた“SDGs”とは?

SDGsで授業がしたい!でもどんな授業にしたらいいのか悩ましい。そんな先生方にJICA東京がお届けしている教員のためのSDGs研修。インターンの岡本がお伝えします!

2022年10月14日

教員のためのSDGs研修

教員のためのSDGs研修とは、東京、千葉、埼玉、群馬、新潟、長野の現職の先生を対象に、夏休みの期間を利用して行っているJICA東京主催の研修です。「SDGsで授業がしたいけど、なんだか難しそう」「どのように授業研究をしたらいいのだろう」、そうした先生と共にSDGsや多文化共生に取り組む現場のリアルな声を聴くことができる場所へ伺います。多文化共生や、人間の安全保障などの課題に対して日々取り組む方々の話を通じて、これまで気づかなかった日本の中のSDGsが見えてきます。また研修に同行いただく学術アドバイザーの指導の下、参加教員同士で体験をふりかえり、咀嚼することを通じてSDGsをテーマとした授業づくりのヒントを得ることができるのが研修のポイントです。

7月の事前研修から始まり、8月には埼玉県の川口市、神奈川県の鶴見区において多文化共生、宮城県の丸森町、仙台市の荒浜小学校では防災、震災復興や人間の安全保障について5日間の国内視察を行いました。事後研修では、視察で得た体験を基に作成した授業案のブラッシュアップを行い、2学期の授業実践へとつなげていくのがこの研修の大きな流れです。

私が感じた研修の面白さは「感じて、話して、考える」こと。様々なバックグラウンドを持った先生と各地を訪れ、感じたことを伝えあい、話し合いを繰り返し行います。学校の「授業」のように思ったことや感じたことを伝えあい、自分自身の考えをブラッシュアップします。また研修を通じて、先生同士の新たな気づきを生み出し、一人では考えることが難しいSDGsも、話し合いながら考えることで、自分なりの答えが見えてくる。それが教員のためのSDGs研修の面白さです。

今回はSDGsと切り離して考えることのできない多文化共生について、埼玉県川口市に伺った際のお話をレポートします。

日本人同士は共生できていますか?

埼玉県川口市の芝園団地

芝園団地自治会事務局長 岡﨑さん

「『多文化共生が大事』と皆さん言いますが、日本人同士は共生できていますか?」
研修初日に訪れた埼玉県川口市、芝園団地の自治会事務局長 岡﨑さんの言葉です。芝園団地は、1978年にできた賃貸住宅。高齢化で日本人住民の数が減少する中、現在の住民の半数以上が子育て世代の在住外国人という団地で、かつて日本人と在住外国人の間ではゴミの捨て方や騒音問題など多くの課題が生じていました。課題解決に取り組んできた岡﨑さんからの一言。みなさんはどう感じますか?日本人同士ではごみ問題、騒音問題などは起きないのでしょうか。
今の日本社会は日本人同士でも関係性が希薄になっており、近くに住んでいる人のことが分からないという状況が増えてきています。多文化共生は決して外国人との共生だけを指す言葉ではありません。日本人でも、外国人でも、「良いお隣さん」として生活するためには何が必要か、芝園団地では住民が安全に安心して暮らしていける環境づくりを目指しています。またその先に日本人、外国人を超えた交流の場を作っていきたいと話をされていました。

芝園団地のお話を聞き、先生方との話し合いを通じて多文化共生は外国人を対象としたことではないのだと気づかされました。SNSの発達で、繋がりたい人とすぐに繋がることができる反面、実社会の人間同士の繋がりは薄れてきています。多文化共生とは日本人、外国人と区別せず、近くの相手と助け合い、言語や文化を超えた繋がりに発展していくこと、それが持続可能な社会に必要な「多文化共生」なのだと思います。多文化共生の対象は日本人、外国人ではなく、「わたしたち」だということを、芝園団地の取り組みを通じて学べました。

「隣の困っている人を助けたい」

クルド文化教室を主宰される中島さん

先生方に大人気だったクルドの工芸品

「隣の困っている人を助けたい。それは日本人でも外国人でも関係ないでしょう。」
川口市には約2000人のクルド人の方々が暮らしているといわれています。隣人としてのクルド人を知り、クルド人自身が主役として活躍できる場を作りたいと活動されている クルド文化教室の中島さんの一言です。文化教室では、クルドの伝統工芸や料理などを紹介する市民教室を開いています。活動紹介の後、川口で暮らしている二人のクルド人大学生がお話をしてくれました。
「私はトルコ人でも、日本人でもありません。でもクルド人であることは隠します。」
在留資格や、入管とのやり取りなどの体験を語る中で、印象的だったのは自分自身のルーツを隠しながら生きてきたという点。クルド人として生きることのできない苦しさや、在留資格を巡り不安定な生活を送る大学生の「今」は心に響くお話でした。
先生方は「生まれた場所から離れ、限られた権利の中で生活している。このような状況の人たちのことを知ったことで、難民や避難民、在留資格など、これまでよく知らなかった立場の人に気づかされた」、「直接話を聞けてよかった」と話をされていました。身近に暮らす外国籍の方々は、様々な事情で本国を離れ生活をしています。その方々と共に生活を送る仲間として、国籍を問わず、困っていたらお互いに助け合う関係性が今後大切になると感じました。SDGsや多文化共生を日本国内に焦点を当て見ていくと、知らないことが多くあることに気づきます。一人の先生が「知らないことは悪くない。でも知らないこと、わからないことを見ないようにするのはよくないことですね」とお話されていて、先生自身も学びを続け、自分自身のこととして考え、子どもに伝えていく姿勢に、先生としての使命感に満ちた姿を感じました。

SDGs×多文化共生で授業づくり!

今回の研修の経験を生かして、先生方は自分なりの「SDGs」の見方を見つけ、それを生かして授業づくりを進めています。研修に参加した先生方はそれまでぼんやりしていたSDGsを自分なりに理解することができたようです。研修を通じてそれぞれが見つけた「SDGs」を、先生方は授業として子どもたちに伝えていきます。果たしてどんな授業になっていくのでしょうか。今から楽しみです。今後、授業実践もレポートしていきますのでお楽しみに!

報告者から一言…!
アッサラーム アレイコム、皆さまはじめまして。現在JICA東京市民参加協力第一課でインターンをしております岡本祥平と申します。大学を休学して中東地域の在外教育施設で二年間働いていました。現在は大学でイスラム地域における女子教育の歴史を研究しております。学生らしい目線でJICA東京の取り組みを発信していきます。皆さまどうぞよろしくお願いいたします!

市民参加協力第一課 インターン 岡本 祥平