【JICAのインターンを知ろう!】草の根事業の振り返りと発信~実施団体へのインタビュー編~

私たちはJICA東京市民参加協力第二課インターンの活動の一環として、草の根技術協力事業を実施中の団体の方々にオンラインインタビューを実施しました。どの団体の方々も私たちの質問に丁寧に答えてくださり、インタビューをしたからこそ知ることができたことが多々ありました。インタビュー全体を通して印象的であったのは、開発途上国の社会課題を解決しようと真摯に事業に取り組まれる皆さまの熱い想いです。今回は、「現場の声」を直接お聞きする中で気づいたこと・感じたことをまとめました。

2022年4月15日

「粘り強く何度も説明をした」 ㈱ちば南房総 様 

【画像】地域活性型「道の駅の知見を活用したアグロツーリズム推進による農業振興と防災環境の向上」に携わられている㈱ちば南房総の加藤さん。現地の住民の方々に事業の意義を伝えるために何度も説明をしたというお話が印象的でした。そのために、なるべく現地に赴いてコミュニケーションをとっていたそうです。インタビューの節々で、加藤さんは現地の人々のことを第一に考えていらっしゃるのだなと感じました。草の根レベルの事業であるからこそ、現地の人々とコミュニケーションを重ねて合意形成をすることがとても大切だということを再認識することができました。

「からかわれていることが嫌だと初めて言うことができた」 国境なき子どもたち 様

【画像】特定非営利活動法人国境なき子どもたちは、ヨルダンにおいて草の根パートナー型「社会性育成を主眼に置いた特別活動実践と体制構築事業」を今年1月まで実施されていました。ヨルダン人の子どもたちと難民として入ってきたシリア人の子どもたちがともにより良い学校生活を送るための事業です。社会的背景の異なる子どもたちが良い学校生活を送るためには、相互理解が不可欠です。この事業では日本の「特別活動」を導入し、子どもたちや先生がお互いを知り理解し合う機会を増やしました。
 そんなある日の学級会でいじめのテーマを扱ったとき、ある女の子が「そばかすをからかわれることが嫌だ。」と発言しました。周囲の子どもたちはその時に初めて女の子が嫌だと思っていたことに気が付いたそうです。まさに事業の成果が垣間見られた瞬間でした。「『対話』があってこその相互理解」は、多種多様な社会的背景をもつ人々と接する国際協力の世界でとても重要になってくると思いました。

「大きな地図が村の魅力を気づかせてくれる」 AVENUE 様

【画像】「大きな地図が事業に対する住民の主体性を向上させた。」このお話がとても印象的でした。
 AVENUEはベトナムで草の根協力支援型「ベトナム中山間地域における『なりわい』おこしの村づくりモデル事業」を今年2月まで実施されていました。村の人々とワークショップを通して地域資源を掘り起こし、観光振興に活かします。このワークショップで大活躍したものが「村の大きな地図」です。この地図に村の中で一番誇りに思っているものの写真を貼って、それをもとに観光ツアーの計画を練ります。「大きな地図は現地の主体性を高めていく上でひとつの大きな役割をもっていた。」と山中さんがおっしゃるように、この事業に関わったすべての人は、大きな地図のもとで自分ごととして活動に参加し、村の魅力を発見していったのではないかと感じました。

「普段は真面目な顔の医療職、プロジェクトでははじける笑顔に」 佐久大学 様

【画像】地域活性型「『健康長寿』長野県佐久市の地域包括ケアを活かしたタイ、チョンブリ県サンスク町における多職種連携による高齢者ケアプロジェクト」を実施中の佐久大学の束田先生。特に地域での「町ぐるみの高齢者ケア」には欠かせない「ヘルスボランティア」と呼ばれるボランティアの方々が医師や看護師など専門人材が極めて少ない地域で大きな役割を担うといいます。ヘルスボランティアは現地や日本で研修を受け、知識や技術を習得し、患者訪問など町ぐるみの活動を行う中で、患者や家族から信頼を得ることができたそうです。事業成功の大きな鍵は「チームの人間関係」が良好であること。佐久地域から現地に派遣された専門家らは短期に目的を達成し、現地住民に喜ばれ、毎回笑顔で帰国します。この笑顔がチームに更なる活力を与えています。事業の関係者が立場に関わらずともに尊敬しあい、協力体制を築くことが重要だと改めて考えさせられました。

「楽しく遊び、主体的に学び、安心して通える場所へ」 シャンティ国際ボランティア会 様

【画像】草の根パートナー型「カンボジア国幼児教育カリキュラムに基づく「『遊びや環境を通した学び』実践のための基盤構築事業」を実施されている公益社団法人シャンティ国際ボランティア会。カンボジアの幼児教育は小学校と同じような設備環境や座学中心の授業形態を取っている場合が多く、幼児教育課程を修了した先生が限られていることや、幼児教育の就学率が30%台後半と低いことも課題です。そこで、子どもたちが「楽しく、遊びや経験を通じて学ぶ」幼稚園づくりを目指して質の高い絵本やおもちゃなどの教材を配布し、教員研修も実施しています。事業開始当初、保護者からは「踊ったり歌ったり、遊ぶのではなく、勉強を教えてほしい」という声もあったそうです。しかし、子どもたちが遊びを通じて楽しみながら学んだことで社会性や対人関係を身に着け落ち着いて物事に取り組めるようになった様子から、先生や保護者からも多くの喜びの声があがりました。日本の知見をただ押し付けるのではなく、現地の声をすくい上げてどう活用するか、ともに考えることが重要だと実感しました。

「嬉しい誤算が新たな雇用を生んだ」異文化伝統工芸交流協会 様

【画像】草の根協力支援型「バティック制作を通じたインドラマユ県パベアンウディック村の女性雇用創出事業」を実施されている一般社団法人異文化伝統工芸交流協会の伊藤さん。この事業を進めるうちに、当初の想定にはなかった新たな発見や成果を得たといいます。この漁村では伝統的に男性が漁業、女性が伝統工芸品であるバティック制作で生計を立てていたものの、バティック産業の衰退や買いたたきで稼ぐ手段がなくなり、女性の「夜の出稼ぎ」が地域の大きな問題でした。今回、対象地域でバティック産業を復興させるべく技術研修や販路開拓を行ったところ、今まで泳げない、身体的障害といった理由などで漁に出られず、日雇いや出稼ぎの仕事をしていた男性が名乗りを上げ、熱心に取り組むようになりました。草の根レベルで事業を行ったからこそ、潜在的なニーズや地域課題を見いだせたのではないかと感じました。

報告者:市民参加協力第二課インターン 織本七、三島優一