国際化市民フォーラム in TOKYO

それって本当に必要なの?届いているの? ~外国人住民への情報とその伝達をめぐる現状と課題~ JICA東京はJANICと協働でC分科会を主催しました。

2022年4月18日

それって本当に必要なの?届いているの? 

「国際化市民フォーラム in TOKYO」は、国際化が加速する東京の多文化共生を考えることを目的に東京都国際交流委員会(現在は一般社団法人東京都つながり創生財団)が主催するフォーラムです。自治体の国際交流協会やNGOとの協働により15年以上継続して開催され、JICAも運営に参加しています。
2021年度、JICA東京はJANICと協働で、外国人住民への情報とその伝達をめぐる現状と課題を考える分科会を運営しました。コロナの感染拡大状況を踏まえオンライン開催となりましたが、100余名の参加者を得て実施することができました。
多文化共生を支えようとしている行政や支援団体が伝えようとしている情報は外国ルーツの人々にとって本当に必要な情報なのでしょうか?情報は外国ルーツの人々にしっかり届いているのでしょうか?どのような外国にルーツを持つ人々にも情報が伝わるようにするにはどうすればよいのでしょうか?分科会では外国ルーツの人々と現場で向き合う3名のパネリストがそれぞれの経験を発表し、それらの発表に対して外国ルーツの方々や有識者がコメントしました。その後、一般参加者も含めたディスカッションで情報伝達方法の改善策を探り、どのような社会を目指すべきか一緒に考え、東京都への提言としてとりまとめました。

司会・進行:  松井 和久 JICA東京 国際協力推進員
パネリスト:  葵 佐代子 一般社団法人 OCNet 理事
        河原 順一 小平市国際交流協会 事務局長
        宮原 麻季 認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会
              海外活動グループ・チーフ
コメンテーター:清水 エド ひらがなネット株式会社:タイ出身
        トーマス・レニック 一橋大学公共政策大学院(JICA長期研修員):
ジャマイカ出身
        よぎ(プラニク・ヨゲンドラ) 全日本インド人協会会長:インド出身
        佐藤 寛 ジェトロ・アジア経済研究所

ありたい社会を目指すために ~東京都への提言~ 

【画像】 外国ルーツの人々と現場で向き合うパネリストからは、○○人だから○○語で書いた情報なら伝わるはずと翻訳して届けた情報が文字が読めない、公用語とは違う言語が母語であったなどの理由により伝わらなかったといった現在進行形の課題が発表されました。コメンテーターからは、「移民や在住外国人とひとくくりに見ないでほしい」、「教育や経済的な背景、日本での滞在期間などによって求めるものや直面する課題は異なる」など当事者ならではの言葉が聞かれ、活発なディスカッションとなりました。その結果をまとめ以下の提言につなげることができました。

1.情報提供側は、情報の受け手の多様性や困難に対する想像力を高める必要がある。
例えば文字が読めない人の存在、同じネパール人でも様々なネパール人がいるという想像力を行政側だけでなく一般の日本人も高める必要がある。さらにその想像力は外国人に対してだけでなく、日本人に対しても当てはめることができる。同じ日本人でも立場が弱い人や障がいのある人など様々な人の存在に想像力を働かせることが重要である。

2.情報提供の対象を外国人のみならず周囲の日本人にも拡大し、日本人と外国人との関係を構築することが必要である。
こうした関係構築を促すようなイベントや日本語教室を行い、日本人と外国人の接点を作っていくこと、顔が見える関係から情報が伝達される関係性を構築することが重要である。

3.国際協力団体は日本人に対する外国人理解に寄与する活動が可能なのではないか。
国際交流協会や外国人支援団体は在住外国人支援に注力してきたが、日本人の外国人理解力の向上に寄与する活動を行うことも重要である。国際協力団体のような在住外国人の母国の事情に精通する団体は、その経験から国際交流協会・外国人支援団体に協力することができるのではないか。

4.行政側はどうしたらよりよい情報提供ができるのかを考え続けることが重要である。
「とりあえずこれをやればよい」という姿勢ではなく、どのようにしたらわかりやすい情報になるのかを、現場で活動する人と一緒に考えていく。そのためには様々な関係者、例えば地域日本語教室の関係者や社協職員などとの関係を粘り強く作っていくことが重要である。

持続可能な社会をめざして 

【画像】分科会は活発な議論を繰り広げ、具体的な提言に作成することができました。ディスカッションの中で、国際協力団体の知見は日本人の外国人理解に貢献できるのではないかという声が上がり提言につながったことも貴重な経験でした。開催後のアンケート結果では、「大変満足した」51%、「満足した」45%という高い評価を得ることができました。
ここで得られた共通理解やつながりを如何にして次につなげていけるかがこれからの課題です。
国際化市民フォーラムが「多文化共生社会」、「持続可能な社会」づくりに貢献できるようJICA東京も協力していきたいと思います。

(報告者)市民参加協力第一課 松井和久・古賀聡子