インドネシアの社会保障制度を強化するため来日研修を実施

2021年から3年間で、インドネシアの国家開発計画庁(BAPPENAS)、労働省、保健省、他関連省庁、国家社会保障審議会(DJSN)、労働社会保障実施機関(BPJS雇用)、医療保険実施機関(BPJS健康)の職員を対象に本邦研修を実施しています。

2022年12月12日

来日した研修員の学び  

ハローワークの視察に興味津々

グループワークでディスカッション

コロナウイルス感染症拡大の影響で2021年度はオンライン研修となりましたが、2022年度は14名の研修員が来日しました。

本研修では、①2020年に制定されたインドネシア版社労士であるアゲナリス制度の運用や国家職業基準の策定について、および②2022年に給付が始まった失業給付におけるアゲナリスの役割について考えを深めることを目的としました。約10日間の研修では、事前に学習してきたオンデマンド教材への質問や意見交換をし、実際に社労士オフィスやハローワークなどにも足を運び、日本の社会保障制度、インドネシアへの適応について理解を深めました。

アゲナリス制度への期待と研修での学び

DJSN・インドラさん

社会保障分野において、ここ10年で大きな変革があったインドネシアですが、医療保険や労働社会保険における加入率の拡大に向けて引き続き取り組んでいます。「特に、インフォーマルセクター労働者をいかにカバーするかが課題です。」と語るのは国家社会保障評議会(DJSN)から本研修に参加したインドゥラさんです。

DJSNでは、アゲナリス制度について組織アジェンダにも組み込んでおり、この制度を使って医療保険と労働社会保険の両方において加入者の拡大を推し進めることを目標としています。「これから新設するアゲナリスの役割が非常に重要なのです。インドネシアは島国で、地方には多くのインフォーマルセクター労働者があり、国のITシステムにアクセスすることができず、公的保険の登録、保険料徴収、給付ができていない状況があります。アゲナリスはそれを補い、会員を拡大するために、特にインフォーマルセクターの労働者に必要とされています。」とインドゥラさんは語ります。また、日本に来て研修を受けたことで新たな気づきがあったと話しています。「この研修を通して、年金分野で私は新たな視点を発見しました。日本はすでに国民皆保険だけでなく、国民皆年金も実現しています。また、年金制度に自営業も含めたプログラムがあるようですね。インドネシアでも、2030年には高齢化社会に突入するため、金制度についても何か準備をしなければならないと思っています。今後現在の制度を最大限に生かしつつ改善していく必要があります。」

今回来日した研修員が、日本での学びを同僚に広げ、その学びを自分たちの国に合わせて取り入れていくことを願います。JICAは今後も引き続き研修を行うなど、アゲナリス制度の運用に関する助言を行っていきます。