世界の労働者の安全と健康を守るために!

今日、労働災害の被災者は世界で年間3億人以上といわれています。課題別研修「労働安全衛生—制度構築から具体的対策まで—」では、労働安全衛生政策の企画・立案や企業に対する指導・支援を行う行政官を対象に、日本の労働安全衛生の経験をもとに行政制度や企業支援の方法、取組事例について遠隔研修を実施しました。

2023年1月16日

労働環境における労働者の安全と健康を守る!

オンラインでの講義風景①

オンラインでの講義風景②

皆さんは全国労働衛生週間をご存知ですか?全国労働衛生週間は、労働者の健康管理や職場環境改善など労働衛生に関して国民の意識を高め、労働者の健康を確保することを目的に昭和25年から毎年実施されています。
労働安全衛生は、労働環境における安全・健康を守ることを目的としたものです。日本では、1972年に「労働安全衛生法」が定められ、労働災害防止計画・措置や管理体制、危険物から職場環境、メンタルヘルスまで広範囲にわたって労働者の安全と健康を守っています。
1980年以降の工業化の急速な進展に伴い、開発途上国では、急速な経済発展によって労働災害が増加しました。ILOによると、今日、労働災害の被災者は世界で年間3億人以上といわれています。1日あたり86万件の労働災害が発生し、年間約200万人が、業務関連の事故や疾病で命を落としており、そのため多くの国々で急速な労働安全衛生政策の立案および実施が求められています。

課題別研修「労働安全衛生—制度構築から具体的対策まで—」では、労働安全衛生政策の企画・立案や企業に対する指導・支援を行う行政官5名を対象に中央労働災害防止協会(JISHA)のご協力を得て2022年9月13日から2022年10月25日まで遠隔研修(オンデマンド研修+オンライン研修)を実施しました。
※参加国:ブータン(1)、フィジー(1)、インドネシア(1)、ヨルダン(1)、ケニア(1)
本研修は、「労働安全衛生セミナー」として1974年より開始して以来、48年間実施されており、
アジア、中東、大洋州などから約600人の研修員を受け入れています。日本の労働安全衛生に関する行政制度や企業支援の方法あるいは企業の取組事例等、これまでに培ってきた日本の労働安全衛生分野の経験やノウハウを、講義だけでなく実習を通じて幅広く学びます。
今年度は、昨年に続きコロナ感染拡大により本邦研修の実施が難しいため、遠隔研修で実施しました。本研修は、遠隔研修としてオンデマンド教材とオンライン(ZOOM使用)を活用して実施しました。研修員は、オンライン講義の前にテキストや動画を使用して事前学習を行いました。主に日本の労働安全衛生に関する施策や体制および企業で実践されている労働安全衛生対策、日本の労働安全マネジメントシステム(OSHMS)の有用性について学びました。また、オンライン研修において意見交換の時間を多く取り、活発な情報交換の場となりました。

フォローアップ発表会

集合写真

12月20日には、10月に発表したアクションプランの進捗についてのフォローアップを実施しました。
ブータンの研修員のゲリーさんは、アクションプランのテーマとして「職場における労働安全衛生(OHS)の強化」を挙げ、労働者や雇用主、管理者への意識向上、職場のOHS規定および方針策定、委員会のメンバーの増員を活動目標と挙げました。今回の進捗発表では、OHS啓発プログラムとOHS研修を雇用主、労働者 管理者、指導者の計1,712名に実施およびOHS検査員(87名)への研修を2時間実施したことを報告しました。
ケニアの研修員キマニさんは、「OSH意識とヘルスケアーの報告の向上」をテーマに挙げ、今回、5つの病院を対象にヘルスケアワーカーを対象にOSHおよびヘルスサービスについて意識向上の研修を実施したそうです。
フィジーの研修員のイニアさんは、「中小の建設現場における安全の知識向上」をテーマに中小の建設現場の環境改善、 労働者への知識共有等を活動に挙げ、今回、指導者とともに発表原稿の最終化に取り組みました。
インドネシア研修員のノバさんは、「労働安全マネージメントの意見交換」として活動を目標に挙げ、テーマにKKNI(Indonesian National Work Competence) とSNI(Indonesia National Standard)について、2時間のオンライン研修(3回)を30人に実施し、3日間の対面研修を32人に実施しました。発表は、公益財団法人大原記念労働科学研究所の小木和孝先生と佐野友美先生から助言いただきながら進めました。
アクションプランを発表して約2か月後の進捗ですので大きな動きではありませんが、今後もアクションプランで掲げた目標に向かい、地道に活動に取り組んでいってほしいと思います。