教師海外研修の絆をつなぐ ~佐渡で育ったネリカ米 ザンビアに渡る~

佐渡総合高校で「農業」を学ぶ生徒たちが、世界のためにできることを考え、ネリカ米を栽培。収穫を終えた米をザンビアの保護養育施設に寄贈しました。

2022年7月6日

アフリカの農業に思いを馳せた一年のとりくみ 

 新潟県立佐渡総合高校は、今年創立112周年を迎える歴史と伝統のある高校。設立時より、農業の近代化を推進する人物を輩出し、現在では農業のみならず工業、商業、家庭、福祉の専門教育を学べる総合高校です。この高校で農業を教える池亀元喜先生は、2019年の夏、JICA東京主催の教師海外研修に参加してザンビアを訪問、ネリカ米 (New Rice for Africa :NERICA アフリカの食糧事情を改善することを目的に開発された稲)を普及するプロジェクトについて学びました。

春、ネリカ米定植

 この取り組みに感銘を受けた池亀先生は、生徒たちと共にネリカ米を栽培し、国際協力を考える授業を1年かけて実践しました。
 アフリカに思いを馳せながらネリカ米を育てる生徒達を指導する池亀先生には、この思いのこもった米をザンビアに届けたいという夢がありました。届けたい先は、研修で訪れたンサンサ ヴィレッジ コミュニティ ディベロップメント。ザンビア人の牧師ジャスパーさんと日本人の妻 桜子さんが経営するストリートキッズのための保護養育施設です。様々な人の協力でンサンサに届けることのできたネリカ米は、日本・ザンビア双方のこども達にどんな思いを生み出したのでしょうか?

届けられた思い 

 ザンビアの子どもたちにもネリカ米を育ててほしいという思いを込め、精米されたコメは栽培中の写真や生徒たちが書いた手紙や栽培マニュアルと共に、ンサンサに届けられました。現地と佐渡総合高校を繋いだオンライン交流も実現しました。

【画像】●食事の動画を見た時、会ったことも話したこともないけど、米を通して繋がれた気がしました。食べて終わりではなくて画面を通してでもいいので一緒に育てられたら嬉しいです。【3年 濱野里桜】
●栽培中、これを食べて少しでも多くの子どもたちが幸せになってほしいという気持ちで育てていました。生育調査や栽培方法も贈るので、私たちが贈って終わりではなく、自分たちで育ててほしいなと思います。【3年 宇治明日美】
●ネリカ米栽培を通して海外の食糧問題に触れることができました。今後、この食糧問題についてどう対応していくか、世界規模で考えていく必要があると思うきっかけになりました。【3年 岩﨑湧豊】

新潟SDGsアワード 「大賞」 「食の新潟国際賞財団特別賞」 受賞

【画像】 新潟SDGsアワードは、新潟県内の企業、団体、個人によるSDGs関連の取組を促進し、経済、社会、環境の好循環を生むことを目的に、地方創生プラットフォーム「SDGsにいがた」により運営されています。佐渡総合高校はネリカ米栽培に係る一年間の取組を、『「SDGs2:飢餓をゼロに」へ向けて私たちにできることーザンビアと日本の高校生の「精神的なつながり」を目指して』と題したプレゼンテーションで発表し、見事、大賞と食の新潟国際賞財団特別賞を受賞されました。
担当教諭、池亀元喜先生のメッセージを掲載します。

 「新潟SDGsアワード」の「大賞」および「食の新潟国際賞財団特別賞」という名誉ある賞をいただき大変嬉しく思っております。これもひとえに、「JICA」様や「認定NPO法人礎の石孤児院(ンサンサ)」様をはじめ、皆様のご協力によるもので、大変ありがたく存じます。
 そして、この活動は、生徒が「異国のために」、「ストリートキッズのために」と考え、目標を決め、実行した賜物です。生徒は、ザンビアのストリートキッズの写真を見て、「農業を学ぶ自分たちに出来ること」をやりきってくれました。そして、今、生徒はこの活動を多くの方々に知ってもらい、「ネリカ米の普及」に貢献していきたいと新しい目標を決めました。また、「ザンビア共和国のンサンサへネリカ米栽培の技術を提供し、施設でも自活できるようになってほしい」と申している生徒もおります。
 当初は、生徒の中にこの活動に対して「本当にそのようなことが出来るのか」と消極的に考えている生徒がおりました。しかし、自分たちが授業の中で栽培し、収穫した農産物をザンビアの子どもたちに寄贈し、食べてもらえている様子を見ることが出来て、喜びもひとしおのようでした。
 この活動を通して、生徒は様々な成長を見せてくれました。その中でも「ザンビア共和国の子供たちと精神的に繋がれたこと」は、貴重な経験となったと私は考えています。高校時代に経験したこの活動を今後の人生に活かし、地球市民の一員であるということを自覚し、生きていってほしいと考えています。
 末筆になりますが、この活動にご協力いただいた皆様に深く感謝申し上げます。

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JICA東京の実施した教師海外研修がきっかけとなり、生徒による国際協力がこのように広がっていったことは私たちにとっても大きな喜びです。JICA東京はこれからも市民の皆様が国際協力に参加する機会を提供していきたいと思います。


報告:市民参加協力第一課 古賀聡子