【9月21日は国際平和デー】紛争を生み出さない強靭な国づくりを支える:コートジボワールで社会の統合を推進

2020年9月17日

9月21日は国連が定めた「国際平和デー」です。世界中の国や人々が国際平和を推進していく日とされています。国連は、この日を世界の停戦と非暴力の日として、すべての国と人々にこの日一日は敵対行為を停止するよう働きかけています。

平和構築はJICAが取り組むさまざまな課題の一つです。その目的は、紛争が発生しない、そして再発しない強靭な国づくりを支えること。「包摂的、公平、機能的な公共サービスを提供できる強い国家の建設、そして、多様な人が共存できる社会の構築が目標です。国民に信頼される国家であれば、国民が暴力的過激主義に走ることもありません。また、さまざまなショックに対しても国は耐えることができるのです」と、JICA平和構築室の坂根宏治室長は述べます。

JICAはこれまで、紛争などによって安全な生活を奪われた人々が平穏に暮らすことができるよう、各国で息の長い取り組みを進めてきました。そのなかの一つが、西アフリカのコートジボワールです。紛争によって対立した住民たちが、一緒に地域再生に取り組みながら、社会を統合させていくプロジェクトが進んでいます。

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コートジボワールで取り組む平和構築プロジェクトが実施されている地域では、子どもたちに笑顔が戻っています

対立していた住民たちが、ともに社会インフラの整備に携わる

プロジェクトが実施されている地域の小学校には、改修された壁に銃弾の跡が保存され、平和のメッセージが記されています

西アフリカのコートジボワールの南部、ギニア湾に面した最大都市のアビジャン圏では2010年に起きた大統領派と反大統領派との紛争の影響で、社会インフラの破壊や、住民間の対立が発生しました。そのため、コートジボワール政府は社会統合のための支援を日本政府に対して要請。それを受け、JICAは2013年から2016年まで「大アビジャン圏社会的統合促進のためのコミュニティ緊急支援プロジェクト(COSAYフェーズ1)」、2017年からは「大アビジャン圏社会的統合促進のためのコミュニティ強化プロジェクト (COSAYフェーズ2)」を実施しています。

これらのプロジェクトの目的は、内戦で大きな影響を受けたアビジャンのアボボ市とヨプゴン市で実施される社会インフラの整備を通じて、住民間の関係の強化、社会的統合の促進を図ることです。そのために重要な役割を果たしているのが、地方自治体、宗教者、女性組合、青年会、伝統的村長などの地域住民の代表者で構成される「CCG」(Joint Management Committee)と呼ばれる組織です。

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立場を超えて地域の問題を議論するCCGのメンバー

「CCGには、対立していた住民同士も参加します。これまで話すこともなかった多様な人が集まり、地域づくりを議論することで、社会統合のきっかけを作るのです」と坂根室長は言います。「特に若者は、紛争、もしくは平和のどちらの引き金になります。若者が政府や社会に対する不満を募らせると、社会不安の要因となります。若者を地域づくりの担い手として、社会の中に組み込むことが、紛争の抑止にもつながるのです」

プロジェクトではこれまで、小学校7校が改修・新設され、4カ所の道路改修が進むなか、市の職員と住民、そして、住民同士のコミュニケーションが促進され、皆が一緒になって地域づくりを進めようという機運が高まっています。

新型コロナウイルスを平和構築の妨げにしないために

平和構築の取り組みにおいて、今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、さまざまな影響を及ぼしています。

コートジボワールでも徐々に感染が広がり住民の不安が大きくなるなか、プロジェクトでは、新型コロナの基礎的な知識、感染予防、感染者に対する差別・偏見への対策について、保健専門家の解説を両市のラジオ番組で放送しました。さらに、感染予防措置に関するポスターを作成して掲示したり、感染防止に向けた啓発ビデオを作成してSNSなどを通じて発信し、正確な情報提供で住民の不安の緩和に貢献しています。

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(左)新型コロナウイルスに関するポスターを掲示
(右)新型コロナウイルスの感染防止に向けた啓発ビデオ

「新型コロナウイルスが流行する以前から、経済的な格差拡大、あるいは、外国人やマイノリティーの排斥などは世界各地で起きていました。感染拡大をきっかけに、そうした問題が、さらに鮮明となっています」と坂根室長は懸念を示します。そして「途上国には新型コロナウイルスへの対処能力が十分ではない国もあります。そうした国では、脆弱層が大きな影響を受け、経済的・社会的な格差を助長する恐れがあります。また、新型コロナウイルスの影響で、平和構築のプロセスが逆戻りする可能性もあります。それらを防ぐためにも、途上国や紛争地における新型コロナウイルス対策への支援は、これからさらに重要となってきます」と、今後の平和構築への取り組みを見据えます。

※本記事は、「The Japan Journal」2020年9月/10月号掲載「JICA, Peacebuilding, and COVID-19」の日本語訳を編集したものです。