【隊員たちのイマ】コスタリカコーヒーの輸入販売を通じ、障害のある人々の自立支援を!【後編】


大島愛さん(茨城県守谷市出身・在住 元青年海外協力隊/作業療法士/コスタリカ)

マーケット出店の様子

作業療法士の資格と現場経験を活かし、2016年から2年間、JICA海外協力隊としてコスタリカ国の特別支援学校で作業療法士として活動。帰国後は作業療法士として都内の訪問リハビリの仕事に従事する傍ら、中米コスタリカの障害者支援につながるコーヒー販売を手掛けるNatuRica(ナチュリカ)合同会社の代表を務める。

後編では、協力隊経験後も燃え尽きてしまった大島さんが、何故現在の会社を始め、どのような想いをもって続けているのか、じっくりお聞きします!

「私、この先の人生、どうしよう…」

隊員時代モルフォで介助者研修を受けた時

「作業療法士として海外で働く」という目標を叶え、やりたいことを全てやり終えてしまった大島さんはすっかり燃えつきていた。
しばらくアジア旅行をしながら考えたが、具体的な道は思いつかない。
「いい加減働かなくては」と、エスプレッソマシーンの実演販売、介護職など様々なアルバイトをかけもちしていたが、やはり自分の軸となってきた「作業療法士」仕事にもどろう、と立ち返り、訪問看護事業を行う企業に非常勤職員として入社。「作業療法士」として週に3回勤務することになった。その他の時間は海外経験を活かした仕事がしたいと思った。東京オリンピック・パラリンピック2020のボランティアにも登録したが、新型コロナウィルス感染症の影響で大島さんの出番はなくなってしまった。海外経験を活かした活動はなかなか見つからないまま時が過ぎた。

新たな出会い、そして、はじまり

2022.10にモルフォのオフィスを訪れた時

コーヒー(マーケット出店時の様子)

コスタリカフェアで在日コスタリカ大使と

チョコレート(Bruno's Chocolate)

そんな大島さんに転機が訪れた。2019年にコスタリカ南部にある障害者自立生活センター「モルフォ」のメンバーが、JICA研修員として来日し、車椅子の修理や電動車椅子の制作やプログラミングなど様々な日本の技術を学んだ。大島さん自身も隊員時代にモルフォを何度も訪問していて、協力隊同期も勤務していたことから交流があり、来日していたモルフォのメンバーも知り合いだったのだ。研修終盤、3日間ほど通訳ボランティアとして彼らと一緒に過ごす機会があった。研修最後の成果発表の際、モルフォメンバーの「障害があっても自分の意志で生きていく権利がある、障害者も家から出て自立した生活ができるようサポートがしたい。」という言葉に大島さんの心は揺さぶられた。「彼らの活動のために私も関わっていきたい!」新たな道筋が見えてきた。

モルフォはこれまで、JICAの草の根技術協力プロジェクト(パートナー型)の現地での実施機関として、障害当事者のエンパワメントを行い、障害を持つ人々が自立生活を行うことを目指して活動してきた。2023年4月でプロジェクトは終了となるが、介助者育成や近隣諸国での自立生活推進、啓発活動などまだまだやらなければならない事業もある。大島さんは、今後も持続的な収入が必要と考えた。

そこで、協力隊仲間の2人に声掛けし、共に始めたのが「モルフォ」を通じてコーヒーの輸入販売を行うNatuRica(ナチュリカ)だ。
もともとJICA草の根プロジェクトの実施団体である特定非営利活動法人メインストリーム協会が同様にコーヒー輸入を行っており、それを大島さんが引継ぐ形で法人化した。コーヒー自体はモルフォのある地域から購入しており、現地での交渉事、現地事情の情報収集などをモルフォに任せている。販売状況に関わらずNatuRicaが仕入れた額の2割をモルフォに支払っている。モルフォは運営資金として、備品の購入や国内外に向けた自立生活の啓発活動の出張旅費等役立てている。

NatuRicaは店舗をもたず、基本はオンライン販売をしているが、最近は月1回のペースで茨城県内のマーケットに出展販売もしているという。さらに、大島さんの活動を知った駐日コスタリカ大使館からの声掛けでコスタリカフェアにも出展した。
「実際にコーヒーを飲んでくれたお客さんの反応を間近で見ることができますし、直接お話ができるのは新鮮です。活動に関して色々質問してくれて、共感し応援して下さる方の言葉は励みになっています」と大島さんは話す。活動を通じて新たなつながりも増え、プロジェクトへの理解も広がっているという。

今後の目標

「まずは継続したい。さらに将来的にはコスタリカコーヒーを飲んでもらうカフェを経営して日本の障害者雇用の機会を増やし、コスタリカと日本、それぞれの障害をもつ人の自立生活の支援や啓発に貢献していきたい。そのためにもまずは地道に継続していきたい。」
作業療法士として働く傍ら起業し、新たな人生を歩んでいる大島さん。昨年からはコーヒー生豆の輸入やコスタリカのオーガニックチョコレートの販売も開始した。コスタリカと日本をつなぐコーヒープロジェクトの挑戦はまだまだ続きそうだ。

番外編~お知らせ~

2023年4月22日(土)、JICA筑波は、つくば市での「科学技術週間」の協力機関として施設を一般公開します。子どもから大人まで楽しく国際理解や国際協力について学んでいただくプログラムを予定しています。そこで、今回ご紹介したNatuRicaさんにもご参加頂く予定です!コスタリカのコーヒーやチョコレートの試飲や試食をしながら、活動について色々お話を聞いていただけます♪ JICA筑波での一般公開の詳細は、近日中に公開予定のJICA筑波ホームページのイベント情報をご覧ください!