【報告その2】2年ぶりに開講!2022年度「大学生・大学院生向け国際協力理解講座」農業コース

2022年10月17日

JICA筑波は、7月下旬から9月下旬にかけて、2022年度「大学生・大学院生向け国際協力理解講座」を開催しました。今年はコロナ過で中止されていた農業コースを2年ぶりに再開し、計5コース実施。のべ59名の大学生・大学院生が受講しました。今回は、農業コースの様子をご紹介します。

研修員たちと毎日スイカを収穫! ~小規模農家の生計向上のための野菜生産技術~

肥料比較用の肥料を計量する様子

研修員と協力してスイカを収穫し、毎日試食!

コース名:小規模農家の生計向上のための野菜生産技術
実施期間:2022年7月25日(月)~7月29日(金)
受講者数:3名

<概要>
このコースは、小規模農家への栽培・営農技術普及に携わる農業普及員を対象に、野菜の生産技術、農業経営の一環としてのマーケティング、販売方法等の基礎的な知識の習得を目指すものです。カンボジア、ネパール、フィリピン、スリランカ、タジキスタン、マラウイの研修員と、以下の講義・実習を受講しました。

・グループ実習(有機肥比較採種、ぼかし肥製造、タマネギ種子調整、鮮度保持、スイカ収穫等)
・化学肥料低減・有機質資源の活用
・日本の技術普及システム
・農業技術発展史と技術研究現況

<参加者の声(一部抜粋)>
・農学を専攻しているにも関わらず、普段は実験室にいるばかりで、ほとんど農作業経験がなかった。今回は、トマト栽培、タマネギ種子採取、肥料作りを通して僅かではあるが栽培技術を実践的に学ぶことができた。農業を理解するためには、教科書的な知識だけでなくフィールド経験が重要であることを改めて認識することができた。
・近い未来、JICA海外協力隊に参加したいと思っている。「日本の技術を押し付けるのではなく、派遣先で何が求められているのかを見極めて臨機応変にその場に合ったものを提供する」このような基本的な考え方にも気づかされたので、この考え方を大切にしたい。

「売る」ための農業を学ぶ! ~アフリカ地域市場志向型農業振興(普及員)~

出荷実習でカボチャを分類する様子

メロンの食味試験の様子

コース名:アフリカ地域市場志向型農業振興(普及員)
実施期間:2022年7月25日(月)~7月26日(金)、8月1日(月)~2日(火)、9月26日(月)
受講者数:5名

<概要>
この研修コースは、アフリカ地域の農業普及員を対象に、(「作って売る」から「売るために作る」農業への意識変革を促す)市場志向型農業の考え方、そのために必要な野菜栽培技術、流通販売方法・普及手法の習得を目指すものです。ボツワナ、エチオピア、ガーナ、レソト、マラウイ、ナミビア、ナイジェリア、スリランカ、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエの研修員と、以下の講義・実習を受講しました。

・鮮度保持試験
・間引きによる出荷規格調整
・カボチャ出荷実習
・メロン品種比較試験(収穫調査、果実調査、食味試験)
・インテリムレポート検討会

<参加者の声(一部抜粋)>
・研修員たちは、農業普及員としてどう農家を巻き込んで技術改善を行っていくのか悩んでいたのがなによりも印象的だったので、「新品種・農法にまつわる現状維持バイアスとその克服方法」についての論文や研究について知見を深めたいと感じた。今後の学習プランに追加したいと考えている。また、遠くないうちにアフリカ駐在の仕事を得たいと考えているので、仕事の傍ら実践してみたいと感じている。
・実際に英語でコミュニケーションをとりながらの作業が楽しく、後輩にも勧めたい。農業市場について、各国の農業背景の違いをもっと学ぶことで、日本の農業の発展に対して問題解決できるようなアプローチをしていきたい。

研修員と実験・調査!! ~稲作技術向上(普及員)~

コースリーダーの説明を熱心に聞く様子

研修員と実験結果をまとめる様子

コース名:稲作技術向上(普及員)
実施期間:2022年8月29日(月)~8月2日(金)
受講者数:1名

<概要>
この研修コースは、農業普及員を対象として、稲作技術・普及 に関する知識、栽培実験を通じた実証に基づく知識の向上と
対象農村地域のニーズに即した業務改善計画の作成能力の習得を目指すものです。エチオピア、ケニア、リベリア、マラウイ、フィリピン、シエラレオネ、スーダン、ウガンダの研修員と、以下の講義・実習を受講しました。

・グループ実験(刈取り収量・収量構成要素の比較検討)
・共通実験・実習(坪刈り・五斜線法による収量調査、バインダーやコンバインによる収穫作業)

<参加者の声(一部抜粋)>
協力隊を志望しているが、自分の計画通りにはいかないことが想定される。その時に、コース統括者が言っていたように、一括りに技術を提供するのではなく一人ひとりが確実に進歩できるような仕組みづくりが必要であると感じた。特に私が参加したコースでは、研修員同士が互いに教え合う環境下にあった。私たちの常識のもとに設計された計画を遂行することは難しいことを把握した上で、現地の人々と協力することが、技術を提供するために最も重要なことであると学ぶことができた。

アフリカの稲作作りを学ぶ!~天水稲作のための稲栽培・種子生産及び品種選定技術~

収穫を終えて研修員と談笑する様子

稲の生育調査を手伝う様子

コース名:天水稲作のための稲作栽培・種子生産及び品種選定技術
実施期間:2022年8月29日(月)~8月2日(金)
受講者数:2名

<概要>
この研修コースは、研究・普及人材を対象として、稲の栽培技術、種子生産技術、品種選定技術を用い、自国の天水稲作に関する課題への対策を検討できる能力の習得を目指すものです。ブルンジ、カメルーン、エチオピア、ガーナ、リベリア、モザンビーク、タンザニア、ウガンダ、ザンビアの研修員と、以下の講義・実習を受講しました。

・稲の出穂期調査
・稲の生育調査・収量調査
・稲の収量と収量構成要素
・原原種種子抜き取り調査
・ネリカ改良品種の調査
・アフリカの稲作
・籾の形状と稔実の生理

<参加者の声(一部抜粋)>
・今までは、国際協力について(自分の中で)勝手なイメージばかりが広がっていたが、実際参加することで、そのイメージは少なからず崩れた。正直、海外での活動ばかりに目を向けていたが、日本に来てもらって行う長期研修活動の重要性にも気づけた。
・より多くの人に農業に興味を持ってもらいたい気持ちが強くあるため、日本の農業のどの部分に課題を感じ、どうすれば克服できるかを考えていきたいです。現代の日本における米の消費量の減少を解決できるヒントが、米の消費量が伸びているアフリカにあるのではないかと感じているため、今回の講座で学んだ稲についての知識やアフリカにおける稲作の課題について知見を活かし、JICA海外協力隊に参加したいです。