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【JICA横浜 新企画!】スポーツで世界を、日本を、盛り上げたい! -JICA海外協力隊×スポーツ- 第1回後編:髙橋昭文さん(ミクロネシア・水泳)

2020年8月25日

「スポーツで世界を、日本を、盛り上げたい!」
大会が延期となった現在も、そしてこれまでも、多くの人々がスポーツで世界と日本を、盛り上げてきました。
異国の地でスポーツを通じた国際協力に携わるJICA海外協力隊もその一人。

【画像】彼・彼女らは、これまでどのような活動をし、そして来年の東京オリンピック・パラリンピックをどう見ているのでしょうか?
このコーナーでは、元協力隊員である私佐野が、神奈川・山梨に縁のある方々にお話を伺います。

横浜からミクロネシア、そして「東京」へ

第1回後編:髙橋昭文(タカハシアキフミ)さん(ミクロネシア・水泳)

【画像】短水路世界選手権大会(2018年12月、中国)にて、サブプール会場に立つ髙橋さん。

【隊員データ】
隊員区分:シニア海外協力隊
派遣国:ミクロネシア 職種:水泳
派遣期間:2017/03/28~2019/08/07(長期派遣)
     2019/12/10~2020/08/02(短期派遣)
*世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響で本年3月下旬より一時帰国となりました。
配属先:オリンピック委員会

 横浜市出身の髙橋さんは2017年3月、シニア海外協力隊としてミクロネシアに派遣されました。約2年半の任期が終わり、一度日本に帰国した後も、再度協力隊としてミクロネシアへ。このように継続してミクロネシアでの競泳選手の育成に関わる中、来年の東京オリンピックへの出場が有力視される選手の育成にも携わります。

 前編では、髙橋さんが協力隊に参加するまでの経緯、そしてミクロネシアでの活動内容について伺いましたが、後編では、東京オリンピックへの出場が有力視される選手たちとの出会いと、東京オリンピック・パラリンピックへの想いについて伺います。

オリンピックへの道

 ミクロネシアは2000年のシドニー五輪より連続で競泳選手を送っています。その出場は、国際水泳連盟が水泳競技の発展していない国での競技の普及と青少年の友好親善を目的に設定した特別枠(Universality Country枠)でのものです。来年の東京オリンピックでも同枠により、髙橋さんが指導に携わってきた男女各1名の選手の大会出場が有力視されているそうで……

佐野 来年の東京オリンピックに出場が有力視されている二人の選手、タシー・リンティアコ選手とティヤーナ・アダムス選手はそれぞれどのような方ですか?

髙橋 タシーは26歳の男子選手で、首都がおかれるポンペイ島の隣、チューク島の出身。生まれはミクロネシアですが、グアムで育ちました。実は競泳の名門である山梨学院大学に留学経験があり、その時は日本の大会にも出場していました。ですので、日本語が堪能で、敬語も話せます(笑)。大学卒業後一旦はグアムに戻りましたが、その後ミクロネシアの競泳チームに加わりました。現在はFINA(国際水泳連盟)が開発途上国・紛争国の選手向けに用意するスカラーシップを得て、タイのプーケットを拠点に練習をしています。

佐野 それでは、タシーさんは普段ミクロネシアにいないということですか?

髙橋 そうです。ただ、私のミクロネシア滞在期間の途中から、タイに行きました。以降は、試合がある時にミクロネシアに戻るという感じですね。私がタシーにしてきたことは、練習内容などの現状確認はもちろんですが、加えてスカラーシップを得るためのFINAとのやり取り、つまり環境整備ですね。

一方、ティヤーナはずっとミクロネシアで練習をみてきた子ですね。今年の5月に高校を卒業したばかりの女子選手です。実はひいおじいさんが日本人で、ミドルネームを「アヤコ」と言います。

【画像】世界選手権大会(2019年、韓国)。一番左が髙橋さん。中央がティヤーナ・アダムス選手。一番右がタシー・リンティアコ選手。

佐野 タシーさんとティヤーナさんについて、成長や変化を感じた点があれば教えてもらえますか?

髙橋 タシーに関しては、グアム・日本で長く生活してきたわけですが、「つながりのある日本で開かれるオリンピックに、ミクロネシア代表として出たい」という思いで、今のミクロネシア競泳チームに加わった、という経緯がありましたね。ティヤーナに関しては、練習を続けていく中で徐々に力がつき、ミクロネシア代表としてオリンピックに出られるようなレベルになってきた。そのようなレベルになって、より競泳にやる気が出てきた、という感じでしたね。
ただ実際のところ、二人ともオリンピックの参加標準記録を破るのは難しい。そこで、オリンピックの理念である青少年同士の交流や、水泳競技の普及を目的とした特別枠(Universality Country枠)での参加を目指しています。

東京オリンピック・パラリンピックへの想い

 タシー選手とティヤーナ選手、髙橋さんはこの2名の選手と、これまで3度の国際大会に参加。選手ともども世界レベルを知る経験を積みながら、東京五輪を目指してきました。開発途上国でのスポーツ指導に長く携わってきた髙橋さんに、東京オリンピック・パラリンピックへの想いを伺います!

佐野 髙橋さんの、東京オリンピック・パラリンピックへの想いは?

髙橋 オリンピック・パラリンピックは競技力だけではない。その精神を理解してほしい。これはミクロネシアの選手たちにも話してきたことです。国際試合に行ったら、その国の歴史や文化を知り、そして他の国の選手たちと友情をはぐくんでほしい、友人になってほしい。「試合に勝つことだけが目的じゃない」、ということを理解してほしいですね。そういえばミクロネシアはFacebookが盛んですが、ミクロネシアの選手たちも国際試合では、他の国の選手たちとFacebookでつながりあったりしていましたね(笑)。

佐野 Facebookで簡単につながれるというのは良いですよね(笑)。

髙橋 それと、ホストタウンの方々との文化交流も大切ですね。「東京オリンピック・パラリンピックを東京だけにとどめない」、というのはとても重要だと思います。ミクロネシアの場合も複数の自治体がホストタウン登録をしているわけですが*、競泳選手たちは、その内の一つである福岡県内で事前合宿を予定しています。

【画像】指導する競泳チームの選手・コーチと。中央右側で白い服を着ているのが髙橋さん。

*ミクロネシアのホストタウンは、群馬県富岡市、島根県海士町・西ノ島町・知夫村、福岡県・同県柳川市・みやま市・みやこ町・築上町(内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局ホームページ「ホストタウン一覧」2020年8月17日参照)。

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「国際試合に行ったら、その国の歴史や文化を知り、そして他の国の選手たちと友情をはぐくんでほしい」。実際に異国の地での指導に携わる中で、その国のことを知り、選手たちとの関係を築いてきた髙橋さんの言葉に、私も心を打たれるものがありました。髙橋さん、ありがとうございました!(文責:JICA横浜 佐野太一)

*この対談は、2020年7月14日にオンライン上で実施したものです。