【研修報告】2021年度課題別研修「港湾保安能力向上」の実施 -オンラインでも熱い議論!港の安全確保と経済発展のために-

2021年12月28日

現在の世界各国で強化されている港湾保安は2001年9月11日の米国同時多発テロ事件を契機とし、海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)の関係部分改訂にもとづく国際海事保安対策(2004年7月1日発効)に基づいて実施されています。

JICA横浜では、「港湾保安能力向上」という港湾分野の研修を国際海事保安対策導入直後の2005年から、主にASEAN地域及びその周辺国の港湾保安政策に関わる方々を対象に実施し、2016年からはSOLAS条約にしたがって国際海事保安対策を実施している地域に対象国を拡大し、継続的に実施しています。年1回の開催で、2021年度研修で17回目となります。これまでに延べ35カ国から246人の研修生が参加しました。

2021年度研修では7月から8月にかけてアジア向けとアフリカ向けの2回に分けて延べ8日間のオンライン研修カリキュラムで実施しました。(カンボジア、サモア、東ティモール、エジプト2名、ガボン2名、ケニア2名、モルディブ2名、モザンビーク2名(計8か国13名)が参加)

【画像】カントリーレポート発表・2021年度アジアグループ研修(カンボジア研修生の発表)

初めてのオンライン実施となりましたが、インターネット回線の接続上のトラブルはあったものの、港湾における監査やフェンスや照明などの設備面や運用面といった港湾保安対策全般に関して、専門家よりご講義いただきました。また研修生からのPowerPointによる発表、個別指導、集団討議などを円滑に実施することが出来ました。また、別途作成した自主学習向けクイズ形式コンテンツを用い学習システムを利用して成績管理も行いました。

【画像】遠隔研修運営時の会議室の様子(集団討議指導中)

【画像】集団討議・2021年度アフリカグループ(講師提示スライド)

【画像】自己学習システム画面(クイズ形式で運営側により成績管理出来ます)

港湾保安の枠組や方法論は基本的に導入時点から変わっていませんが、その実効性は日々の現場における運用の継続と保安要員の人的能力に大きく依存しますので、本研修のように実践的能力の向上に主眼を置いた研修に対するニーズは高いものがあります。

残念ながらこれまでのような訪日研修による高度の実践的知識向上の機会は、世界的なコロナ感染状況を踏まえ中止せざるを得ませんでした。このため、座学講義の内容について従来のものから実践的な知識習得向けに補強、また講師側からの積極的な働きかけ、研修生との双方向意思疎通を促進するなどによって研修効果の向上に努めました。オンラインで海外と繋がりディスカッションを行うのが初めての研修員もいましたが、港湾保安の今後の課題などについて熱心な議論が行われました。研修生からは「講義内容も資料も良く、とても有益な研修だった」「他の研修員と経験を共有しあえて良かった」など好評の声が多数寄せられました。今後の本研修の一層の充実について取り組んでいきたいと思います。

【画像】閉講式・2021年度アフリカグループ

(記事制作協力)一般財団法人 国際臨海開発研究センター

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【画像】持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

SDGsとは、2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題する成果文書で示された具体的行動指針。17の個別目標とより詳細な169項目の達成基準からなる。

本研修コースは、SDGsで定められた17の個別目標のうち目標16.「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」への貢献が期待される。