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【研修報告】2021年度課題別研修「航空保安セミナー」の実施 -今年もオンラインで活発な議論が行われる!航空機による安全な移動の確保と経済発展に向けて-

2022年3月7日

2001年9月11日の米国同時多発テロを契機に、世界各国で行われているハイジャック対策などの航空保安対策は強化されています。航空の安全などは国際民間航空機関(ICAO)が条約に基づいて定めた国際規則を基準に実施されています。しかし、これらの国際規則は一部の国ではなく、世界各国が着実に実施する必要があり、途上国への必要な支援も重視されております。

JICA横浜では、航空保安分野の研修を「航空管理保安セミナー」として1986年以降1988年までの3年間、1989年からは現在と同じ「航空保安セミナー」として世界各国の航空保安政策に関わる方々を対象に実施しており、航空保安の政策立案をする航空局のほか、警察庁や警視庁の関係部門からの協力も得て、ハイジャックや爆発物などへの対策も含めた総合的な内容で継続的に実施してきました。本研修は毎年1回の開催で、2021年度研修で通算36回目となります。これまでに90の国・地域から合計で501名の研修員が参加しました。

2021年度の研修は12月に10日間のオンライン研修カリキュラムによって実施しました。(カンボジア2名、ラオス3名、モルディブ、イラン、ブルキナファソ(計5か国8名)が参加)

昨年に続きオンラインによる実施となり、インターネット回線の接続でトラブルもありましたが、日本の航空保安行政、航空保安プログラム、品質管理プログラム、教育訓練プログラムから空港における保安検査や航空貨物の保安対策、そして爆発物対策など、政策・制度面から現場での運用や実務といった航空保安対策全般に関し、専門家より講義をして頂きました。また、研修員からのPowerPointによる発表会、研修員への個別指導、意見交換なども前年度の経験を生かして円滑に実施することが出来ました。

【画像】講義の様子

航空保安の政策的な枠組や方法論は本分野の研修が開始された当時より強化されていますが、その実効性は日々の現場における運用の継続と保安要員各々の人的能力に大きく依存していますので、本研修のように実践面も含めて能力の向上に主眼を置いた研修に対するニーズは高いものがあります。

残念ながら、これまでのような訪日研修の直接指導による高度な実践的知識向上の機会は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえ、提供することはできませんでした。更に、オンラインで実施するため、従来よりも扱える情報には制約もありましたが、座学講義の内容についてはより実践的な知識の習得に向けて昨年度から動画教材を準備するなどして補強しました。研修員からは保安と防災訓練についての動画内容に対して、火災以外にも爆破予告、サイバーテロ対策、デマ、不法な妨害行為に対する訓練について多くの質問が出されて参加者の関心の高さが伺われると同時に、動画の分かり易さに関しては参加者から好評を得られました。

【画像】爆発物(動画教材より)

【画像】保安検査(動画教材より)

また、講師の側から働きかけて、研修生と双方向の意思疎通を積極的に促進することにより研修効果の向上にも努めました。研修員からは自国の危機管理対策と比較した上で、違いのある日本の対策に関して数多くの質問が出されました。
一方、オンラインで海外の参加者とディスカッションを行うのが初めての研修員もいましたが、研修では各国の航空保安分野における今後の課題などについて研修員相互での活発な意見交換と議論も行われました。
参加した研修員からは「本コースで学んだことから、空港の保安対策レベルを高めるための提案ができる」「知識の少なかったテーマについても深く理解できて良かった」など好評の声が数多く寄せられました。

【画像】閉講式

(記事制作協力)一般財団法人 航空保安事業センター

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【画像】持続可能な開発目標(SDGs)への貢献
SDGsとは、2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題する成果文書で示された具体的行動指針。17の個別目標とより詳細な169項目の達成基準からなる。

本研修コースは、SDGsで定められた17の個別目標のうち目標9.「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」、目標16.「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」への貢献が期待される。