【研修報告】ASEANにおける持続的な物流システムの構築コース ライフスタイルの変化に合わせた物流システムの在り方を学ぶ

2022年3月8日

 近年、急速な経済発展を遂げているASEAN地域においては、経済成長を維持しながらも地球の環境にも優しい持続可能な社会を実現していくことが重要です。これは物流の分野においても無縁ではありません。あらゆる二酸化炭素排出削減に向けて効率性が高く環境に優しいグリーン物流システムや、消費者に対し安定的かつ安全な食の供給を可能とするコールドチェーン物流システムなど、物流の信頼性の向上のためにアクションが必要です。

 この取り組みに協力すべく、JICA横浜では、2021年11月8日から11月25日にかけて、オンラインによる国別研修「ASEANにおける持続的な物流システムの構築」を実施しました。

 従来は、研修員が来日し、講義と実際の物流施設等の視察を組み合わせた研修を行っていましたが、新型コロナウィルス感染症拡大のため、オンラインでの研修となりました。

【画像】オンライン講義の様子(流通科学大学森先生)

 今回の研修では、ASEANの中の5か国から8名の研修員の参加がありました。研修員は多忙な業務の中でも、それぞれの職場や自宅などからオンラインで積極的に研修に参加しました。

 最初に各国から自国の物流についての発表会を行い、港湾、鉄道、空港などの物流インフラの整備状況や将来計画などが説明されました。他のASEAN諸国と国境を接しているタイからは、国内物流と国際物流を円滑に繋ぐための規制の整備などが問題点として挙げられるなど、持続的な物流システムの構築には、活発化しているASEAN域内の物流への対応も課題となっていることが共有されました。

【画像】研修員のカントリーレポート発表

 研修では、近年人口増加や所得水準の向上などに伴い、食生活の多様化やEC市場の拡大が進むASEAN諸国で重要性が高まっている温度管理を伴うコールドチェーン物流サービスに関する講義などを行いました。また、実際の物流サービスを担っている民間の物流事業者様の協力を得て、トラック輸送、航空貨物輸送、海上輸送、貨物鉄道輸送など各輸送モード、輸送効率化を高めるために最新の技術を導入している自動化倉庫などについても映像や画像を盛り込んでご説明いただきました。

【画像】様々な物流の現状や動きについての講義

 ASEAN諸国では、トラックターミナルや冷蔵倉庫などの整備が遅れており、日本における国の助成策や法律等の整備、規制緩和などについて研修員から質問が多く挙がりました。
コールドチェーン物流サービスの講義では、折からの新型コロナウィルス感染症ワクチンの輸送が極低温での厳しい温度管理が必要であったことから、日本ではどのように輸送、保管しているかについて質問が挙がるなど、最新の動向についても活発な意見交換がなされました。

 オンラインでの研修のため研修員同士の親睦に難しい面がありますが、少人数でのディスカッションの場を設けることで、それぞれの交流が図られるように工夫をしたことで、“研修を通じて仲間ができた“という好評の声が寄せられました。

 今回、研修員から寄せられたコメントや反省点を生かし、本研修をよりよい形で実施できるよう、進めていきたいと考えています。

【画像】閉講式

(記事制作協力)一般社団法人 海外運輸協力協会

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【画像】持続可能な開発目標(SDGs)への貢献
        
SDGsとは、2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題する成果文書で示された具体的行動指針。17の個別目標とより詳細な169項目の達成基準からなる。

本研修コースは、SDGsで定められた17の個別目標のうち目標9.「レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」への貢献が期待される。