【教師国内研修】実践授業レポート from 横浜市立高田東小学校(金城裕哉教諭)

2022年3月25日

JICA横浜では教員の方々を対象に教師国内研修※1を実施しています。今年度は7名の方々にご参加頂きました。実践授業とは、このJICA教師国内研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業・ワークショップを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。今回は横浜市立高田東小学校の金城先生からのレポートを紹介します。

 ※1 コロナ禍を踏まえJICA教師海外研修の代替として2020年度より実施。通年のプログラムで研修を通してワークショップ教材を作成頂いています。

実践の概要

【画像】「あなたは『他人事』を『自分事』として感じることができますか?」をテーマにして、2022年1月14日に「たぶん、か※2」ワークショップを行いました。

グループで相談して休みの日に遊びに行く場所を1か所決めるのがゴールです。しかし、それぞれが持っている「キャラクターカード」には、他人には言えない(言いづらい)悩みや事情が書かれていて、それが行き先決定のいわば足かせになっています。

さらにカードの内容は言ってはいけないルールです。「相手が一体どんな人物なのか/どんな事情を抱えているのか」=「他人事」と位置づけ、それを「自分事」に置き換え、どれだけ相手を受け入れられるのか、どれだけ相手の思いに共感できるのかを自ら考え、行動で表す姿を目指しました。

 ※2先生方に作成頂いた教材「たぶん、か」は後日HPに掲載予定です。

児童の反応

【画像】ワークショップを通して、児童から以下のような反応がありました。

・それぞれがどのような悩みを抱えているのかをしっかり理解する必要があると思った。この学習を通して、他人の悩みを分かってあげて、さらに自分の悩みも知ってもらおうと思った。

・最初は意見が合わなくて、正直楽しくなかった。無理やり合わせないといけないと感じたからだと思う。カードを見せ合ったときに、「あ、こんな事情があったのだ」と知ることができて、2回目からは自分事にしてみようと思えるようになった。

・ワークショップをしていて、つらいのは決して自分だけではない、相手もだという気持ちになれた。

成果と課題

〇 成果
・ワークショップ中、行き先を決めかねている中でも、相手の言動に対して注意深くなり、積極的に質問したり、他の意見を促したりして、より円滑に話を進めていこうとする児童の姿が見られた。

・教師が本時のめあてを都度提示し、声かけをし続けていくことで、児童はめあてを意識した発言や振り返りをすることができた。

・1回目と2回目のワークショップの進め方には、その場における児童の反応や実態によって多様な方法が生まれてくる可能性を感じた。例えば、2回目は行き先を決めるルールをグループで相談させてみるとか、行き先は複数選んでもよい、新しい行き先を生み出してもよいとすると面白いワークショップになるのではないか。

〇 課題
・教師が1回目と2回目のグループの様子を注意深く観察し、課題を提示する時間があればよかった。例えば「1回目は決まらなかった。でも2回目は決まった」(逆の変容も)としたら、何がその変容をもたらしたのかを全体で共有すると、児童がより切実感をもって本時のテーマに向き合うことができたかもしれない。

・「相手の事情を考えながら話を進めることが大切だ」「相手に合わせるだけでなく自分も積極的に話すことが必要だ」という感覚からもう一歩踏み込んで、具体的な行動を起こそうとする意識を全体的に高めるまでにはいかなかった。このワークショップのみではなく、他のワークショップとも連動して行うことで「多文化共生」を教室で扱う教育的価値を高められると感じた。