【実施報告】横浜国立大学×JICA横浜 連携講座「現場から考える国際協力」

2022年4月19日

本講座は2021年10月から2022年1月の計8回、ロールプレイング※1で実施されたもので、講座として第3回目となる今回は、スリランカ※2を対象国として、40名以上の学生に全国からオンラインで参加していただき、また、運営側には昨年度参加した学生をメンターとして迎える体制で実施しました。

JICAからは、南アジア部第三課およびスリランカ事務所の協力の元、スリランカの国概要など一般情報から、JICAの取り組みや国際協力のトレンドなどの情報提供、学生が作成する政策立案へのアドバイスを行いました。講座の終盤では、担当のJICA職員に対して事業提案のプレゼンテーションを実施する際の日本政府ドナーとしての役割を演じ、学生の提案に本気で意見を返す光景も見られました。

今回、参加した学生と、昨年度受講し、今回運営側として参加したメンターから報告してもらいました。

※1 ロールプレイングの内容について
参加者が複数のグループに分かれ、スリランカの各政府機関の担当者として自国の直面する開発課題に向き合い、最終的には、日本のODA(政府開発援助)に対する要請書(プロポーザル)を作成し、日本政府に向けて、プレゼンテーションを行い、要請を通すことを目指します。

※2 スリランカについて
2022年にスリランカと日本は国交樹立70周年を迎えます。
スリランカにおけるJICAの取り組みについては下記HPで確認いただけます。

報告者① 参加者 塚﨑 天輝さん(所属:スリランカ政府 水供給・電力省)

塚﨑 天輝さん

この講座は、自分が考えていたよりも数十倍収穫の多い、濃密な3か月となりました。ここでは特に自分の学びとなった事柄を2つ挙げます。

1つ目は、課題を解決することについて、繰り返し考えさせられたことです。講座前半のインプット期間にて「課題」や「課題に対処すること」について詳しい説明を頂いた後、ロールプレイングでは、セクターごとにスリランカの現状を分析し、課題への対処策を考え、JICAへの支援要請書をまとめました。しかし、支援を要請する最終会合の場では、現状分析の甘さや、課題とそれに対処するプロジェクトのミスマッチを指摘されました。どこに最優先課題があり、その解決手段として何が適切なのかを適切なロジックで結べることの重要性とその難しさをロールプレイで痛感することができました。

2つ目に、講座内でのリアルなロールプレイを通して、組織マネジメントに関する実践的なノウハウを得ることができました。僕が普段活動をしている学生団体では、同じような目標を持ち、意欲と熱意で満ち溢れたメンバーと日々活動していましたが、現実の社会では、必ずしも同僚が自分と似た志向性を持ち、自分と同じ熱量で動いてくれるとは限りません。実際、スリランカ政府を模したロールプレイ内では、自分とは違う講座の目標、共同作業に関する熱量を有するチームメンバーといかに良好な人間関係を構築し、同じ目標の下にまとめあげるかが問われていたと思います。報告書の期限が迫っている、メンバーが忙しくタスクの進捗状況が良くない、お互いの意見が衝突している、そんな状況をいくつも体感しましたが、その度にどんな仕組み作りによって困難を乗り越えるべきか、どのようにメンバーとの関係調整を図るかを考え続けたことで、今はロールプレイ外での組織マネジメントにもノウハウを活かすことが出来ています。理論だけでなく、実践的に組織を動かす貴重な経験をすることができました。

報告者② 参加者 八郷 真理愛さん(所属:スリランカ政府 高等教育省)

八郷 真理愛さん

本講座を受講した当時、私は大学4年生でした。大学院に進学して国際協力(専門は平和構築)について研究する前に、国際協力について、より応用的な事を学びたいと考え、本講座を受講させていただきました。本講座のロールプレイでは、スリランカを舞台に高等教育省の渉外担当をさせていただきました。

本講座を受講したことで、得られた収穫がたくさんあります。第一に、国際協力の世界においてどのような問題点が存在するのかを知ることができました。そしてその問題解決にあたってどのような方法が存在するのかについても知ることができるなど、国際協力における基礎的な知識を実践的な講義によって身につけることができました。

将来国際協力の世界で活躍したい学生として持っている、世界に存在する問題に対する「問題意識」の何が正しくて何が正しくないのか、国際協力の世界で生きている大先輩方(先生方やJICAの方々)に教えて頂くことで、「正しく」世界の実態について知った上で国際協力を学び、正しい熱意を持って国際協力の世界で活躍できるようになることが必要だという結論にたどり着くことができました。これに気づけたことは私にとって最も大きな学びでした。

第二に、ディスカッションを多く含むこの授業では、同じ興味関心を持つ仲間と問題解決に対して深く話し合うことができたこと、学びにおいて仲間達と切磋琢磨できたこと、夢に向かって語り合えたことなど知識を身につける以外に、素晴らしい仲間と出会えたという収穫がありました。本講座は非常に実践的で、仲間たちと問題解決のために出した提案のどこが足りないのか、どこが足りているのかを知る機会になりました。また、同じ問題意識を持っている仲間同士でも、問題解決に行き着くプロセスの中では一人一人考え方が違うといった発見もしました。

どれだけ完璧な方策と感嘆したものも、必ず欠点があり、逆に個人的にあまり賛同できない方策にも必ず長所がありました。だからこそ、国際協力の世界で生きていくには互いの意見を尊重し合う事が特に重要だと感じました。この発見は、将来国際協力の世界に飛び出す際に大切な、非常に重要な経験となりました。

本講座での収穫を生かして、まずは大学院に入学し、将来は大きく国際協力界に貢献できるようになりたいです。

本講座におけるメンターの役割について

前年度に同講座を受講した方に次年度その経験を生かして運営として活動していただいた方をメンターと総称しています。メンターは、参加者の興味分野に合わせた配属先省庁の割り振りからワークショップを円滑に進めるために人事院や報道局の設置などのロールプレイ設計、そして、グループワークにおいて仕事や時間の配分が適切に行われるよう勤怠管理のシステムの整備・管理を行いました。

また、政策立案や要請書の作成に関する質問対応や助言などを講座の段階に合わせて行いながら、講義参加者同士の交流を増やし、講座外での学びや講座後も協力し合えるコミュニティを得られるよう、スピンオフ企画も主催しました。

報告者③ メンター 土居本 唯織さん

土居本 唯織さん

昨年と今年で違う立場で講座に参加したこと、そして、学生でありながら運営という立場であることを通し、複数の視点を得ることができたことが有意義であったと感じます。昨年度は見えていなかったけれど、政策(意見)決定のプロセスの多様さや、取るプロセスの選択の重要さに考えを巡らせることができました。また、運営側の小林先生・JICA職員の方々とも、受講生とも話す機会があったことで、双方の意図の相違をどう尊重し、どうすり合わせていくのか考えたことは貴重な機会でした。

報告者④ メンター 鈴木 栄さん

鈴木 栄さん

村瀬悠さん

首藤祥予さん

2年にわたって関わらせていただき、複数の学びを得ました。特に、参加する講義参加者によって作り上げられる最終物、それに至るまでのプロセスが全く異なり、今年度は運営側として俯瞰して活動を見ることができて、参加者それぞれの個性が目立ち、とても面白かったです。普段関わることのできない学生と出会い、多くの刺激を受けることができました。素敵な講座に関わらせていただけたことに感謝し、ここでの経験を今後に活かしていきたいと思います。

<その他、メンターとして参加された方々>
村瀬悠さん
首藤祥予さん