JICA食と農の協働プラットフォーム(JiPFA) 第2回アフリカ農業分科会(グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会アフリカ部会およびアフリカビジネス協議会農業ワーキンググループ共催)議事録

  1. 日時:2022年8月10日(水)13:30~15:30
  2. 会場:オンライン会議(Zoomウェビナー)
  3. 参加者:約110名(事前登録者131名)

1.開会挨拶

(1)国際協力機構 窪田修上級審議役

JiPFAは産官学の意見交換の場として設けられたプラットフォームであり、農林水産省のグローバル・フードバリューチェーン(GFVC)推進官民協議会や、アフリカビジネス協議会農業ワーキンググループと目指すべき方向性が同じであることから、今回共催の形としている。TICADの従来の流れを考えると近年は開発援助に加え、より投資面が強調されるようになり、特に前回のTICAD7ではその傾向が強く見られた。関連し、アフリカビジネス協議会およびその農業ワーキンググループにおいて、アフリカ農業イノベーション・プラットフォーム構想(AIPA)が発表された。AIPAの下、アフリカ農業デジタル化基盤構築、先進農業技術の導入促進に対応すべく、デジタル化や農業機械化の促進が進められてきた。
本日は第一部でAFICAT(日・アフリカ農業イノベーションセンター)の進捗、有識者のタンザニア視察結果、第二部ではアフリカ農業デジタル化基盤構築事業について発表を行う。JiPFAは官民の共同事業であり、民間企業から今後更なる関心や助言を頂きたい。

(2)農林水産省 輸出・国際局 新興地域グループ 吉岡孝参事官

今月末のTICAD8開催をJiPFAの開催は時宜を得たものであり、アフリカ支援の今後の展開に関して2点申し上げたい。まず、新型コロナ感染拡大やウクライナ情勢の中、G7、G20等でも世界特にアフリカの食料安全保障の強化が議論されているが、農水省としても、緊急の食料援助に加えて、中長期的な農業生産性の向上や、輸入を代替する食料生産拡大、フードバリューチェーンの強化等に向けた協力を提案していく考え。こうした中で、日本企業の技術やノウハウを活用し、官民連携でアフリカの農業生産性向上に取り組むことは、各国にはできない日本ならではの協力を実施する上で重要。本日発表予定のAFICATやデジタル農協、スマートヴィレッジ開発(Small Smart Community: SSC)といった企業主導の取組は、日本の経験や技術を活用した世界的に見ても価値のある取組。農水省としても今回のTICAD8を機に、企業との連携による事業を更に進めていきたい。第二に、新型コロナ感染拡大の中で、アフリカとの往来が少なくなっており、TICAD8も参加が制限された形での開催となるが、食・農業の協力やビジネス拡大には対面での交流がやはり不可欠であり、農水省として、今後企業や支援機関等とともに、アフリカ現地での政府間対話やフォーラム等を進めていきたい。

2.第一部:AFICAT(先進農業技術の導入促進事業)事業進捗及び、有識者によるタンザニア視察報告

(1)調査団からのAFICAT進捗説明

(株)かいはつマネジメント・コンサルティング 池ヶ谷二美子総括

AFICATの概要説明、これまでの対象国各国における調査進捗についての説明をされました。また、AFICATで進めている広報(ニュースレター発信、タンザニアにおける展示会出展等)、7~8月に実施された有識者らによるタンザニア視察の概要、および今後の調査予定について発表されました。

(2)タンザニア視察参加者の発表

(株)新農林社 岸田義典代表表取締役社長

タンザニアは平和な国でありこれから発展していくことが感じられたことや、アフリカ全体での人口増加を背景に、土地生産性の向上や栽培技術等の普及により食料生産、供給を増やしていく必要性があり、農業機械の更なる普及が必要な旨を述べられました。日本の支援として、灌漑設備の整備、農業機械のアフターサービスや修理に関わる人材育成等を組み込んだ援助、現地の実情にあった農機の開発やそれを農家に届ける流通網の整備など機械化を進めていくためのシステムの必要性、スマホを活用した技術普及等が考えられる旨が共有されました。

(一社)日本農業機械工業会 田村敏彦専務理事

現地の個人農家の農機の購買力は日本で想定されている期待値よりも低いと感じたこと、一方でトラクターやコンバインによる賃耕/賃刈サービス等で多くの利益を得ている農家や農業組合がいること、農家にとって労働者を雇うよりトラクターやコンバインによる賃耕/賃刈サービスの方が安価であることなどが視察でわかったと共有されました。タンザニアの市場規模は未だ小さいものの、現地で圃場整備が進み、圃場1枚の面積が広がるのであれば可能性がある旨も共有されました。安くてシンプルな農機を望む現地の声が聞かれたことから、アジア等で製造した農機をタンザニアへ販売することや、周辺国と合わせた広域市場展開についても言及しました。

(一社)日本農業機械化協会 藤盛隆志専務理事

農業機械の普及状況(国全体)と今般調査地での利用状況についての説明がなされたほか、コメのフードバリューチェーンのボトルネックとして、移植と乾燥が機械化されていないこと、特に乾燥工程において乾燥機導入によるロス低減を通じた収益性改善の可能性があること等を指摘されました。また、農業機械化政策の一環として、CAMARTEC(農業機械化農村技術センター)が農業機械のテストを実施していることの重要性について、さらに、今後のAFICATの役割としては本邦企業の進出支援に加え現地の人材育成も重要である点についても指摘されました。

国際協力機構 大石常夫国際協力専門員

日本は1970年代以来、継続して、KATC(キリマンジャロ農業技術者訓練センター)に代表されるような農業機械化、栽培技術支援等をタンザニアで実施してきており、それらを経て現地では農家、農業組合が自分たちで賃耕/賃刈サービスを展開するようになってきたことが共有されました。一方で、自脱型コンバインは現地品種の「脱粒易」に不適合であること、修理・部品供給の体制が弱いこと、移植は手作業で機械化されておらず、さらに天水低湿地での機械利用は限定的といった課題があることの説明がありました。また、日本から地理的に遠いアフリカへ本邦企業が進出する上ではAFICATのような官民が連携する取り組みが必要なこと、JICAはCARDに関連する案件をアフリカ各国で積極的に展開していること、本邦企業にはJICA筑波センターやJICA民間連携事業とAFICATと併せて活用頂きたいことを述べられました。

(3)本邦企業からの発表

(株)ケツト科学研究所(海外営業部門 部門長 吉田典広様)

最初に同社の概要説明、製品紹介が行われ、AFICATを通じてタンザニアおよびナイジェリアで実施された現地関係者と日本をつないだオンラインセミナー実施について共有がされました。同オンラインセミナー等で築いた人脈を基に現地側政府機関の人々とのネットワークを構築しつつ、今後もアフリカでの展開を継続していきたい旨が述べられました。

本田技研工業(株)(パワープロダクツ事業部 営業二課 チーフ 竹村郁乃様)

同社のアフリカ展開における課題が示され、タンザニアとナイジェリアにおける、デモを中心としたAFICATとの連携実績を発表されました。また、一民間企業としてAFICATに期待することが示され、今後もAFICATを活用していきたい旨述べられました。

(4)質疑応答

(質問1)(有識者に対して)現地にマッチした農機を、日本の農機を現地で生産するような発想にはならないのか。現地企業や現地の方々を育成するという視点。ライセンスやフランチャイズなど、日本の知的財産でアフリカ農業を支援することはできないか。
(回答1)現地製造は現地側の人材育成の観点では有効だが、実施するかどうかは、現地の販売見込みや投資回収等を考慮し企業が判断する形となる。コスト面では、部品全体の7~8割を現地で製造できないと見合わないとの声も企業より聞く。現地製造にあたっての人材育成に関しては、JICAは経済開発部において生産管理面でカイゼンの研修といったマネジメント系研修は行っているが、製造に必要な技術的な研修は行っておらず、今後適宜検討をしたい。

(質問2)(本田技研工業株式会社に対して)ホンダはナイジェリアのIITA(国際熱帯農業研究所)と情報交換を進めていると聞いているが、今後の方向性についてはどう考えているか。
(回答2)認知度の向上も期待して、IITAへ機械の貸与を行っている。ただ現状はあまりアクティブに活用できていないのが実情。IITAがワークショップを企画するようなタイミングでHondaもデモやサービス研修を実施できればと思う。
(質問者より)畑や水田の圃場作業の機械化はアフリカでこそ期待されるところだと思う。ただどのような利便性があって、農家にとって効果的にどうか、まだ検討・実証を求められるところが大きいのではないかと思われる。IITAと踏み込んだ連携ができることを期待している。

(5)視察参加メディアからの告知

農業新報社 遠藤和美取締役・編集局長

同社では創業以来69年にわたり農業機械業界の専門紙として農経しんぽうを毎週月曜日発行しているほか、年4回の季刊誌発行や、農機販売店や農協等を掲載した農機実業総覧を発行している旨、説明されました。今回のタンザニア視察の様子を掲載した週刊紙は2022/8/15に発行予定であり、タンザニアでの稲作機械化の現状などを今後も記事にまとめていきたい旨が述べられました。

国際農業社 佐藤博文報道部部長

同社では昭和31年から、業界の活性化に役立つ農業機械・資材の情報を収集し、毎週火曜日に農村ニュース、加えて年に4回機関誌を発行している旨が共有された。農村ニュースは2022/8/16日号は休刊日のため、2022/8/23日号に今回のタンザニア視察の様子の第一弾記事を発信する予定であり、今後もタンザニアの農業について発信をしていきたい旨、共有されました。

3.第二部:アフリカ農業デジタル化基盤構築について

(1)アフリカ農業デジタル化基盤事業の構築について(日本植物燃料(株) 合田真代表取締役)

AIPA(アフリカ農業デジタル化基盤構築事業)の経過とスケジュールについてまず説明がされ、実際の事業のセネガル、モザンビークにおける経過報告や、今後の本邦企業等との連携の様子について発表されました。

(2)質疑応答

特になし。

4.アンケートの案内、公式HP開設のお知らせなど

JiPFAアフリカ農業分科会事務局より、登録メールアドレス宛にアンケートフォームを送付する旨、およびAFICATの公式サイトがオープンした旨が共有しました。