JICA食と農の協働プラットフォーム(JiPFA) 第4回アフリカ農業分科会 日・アフリカ農業イノベーションセンター(AFICAT)ケニア編 議事録

1.日時:2023年1月25日(水)15:00~16:35
2.会場:オンライン会議(Zoomウェビナー)
3.参加者:69名

概要

1.開会の挨拶

JICA経済開発部 天目石慎二郎次長

本セミナーへの参加を感謝する。本セミナーは、AFICAT対象国のうちケニアに関連した内容である。自身は以前にケニアに駐在しており、ケニアでの滞在を通して、気候変動の取組みや、民間企業と一緒に事業を進めていくことの重要性を感じていた。ケニアでは、大手企業からスタートアップまで民間企業の活動が非常に活発という印象を受けた。本日はJETRO、JICA専門家、民間企業からの発表があり、ケニアは民間企業にとってポテンシャルが高く、特に農業機械の分野に関しては色々な可能性を秘めていることがお分かり頂けるかと思う。本日のセミナーが参加者の今後の取組みの契機となればと思っている。

2.AFICAT進捗報告

JICA AFICAT調査チーム 池ヶ谷二美子総括

AFICAT事業の概要を説明したあと、同事業の進捗として、アフリカ各国におけるパイロット活動の実績や、有識者会合、ニュースレター等の広報活動について説明された。また、今後の活動方針や2023年5月に実施が予定される本邦招へい等、AFICAT事業の活動計画が共有された。

3.ケニア経済概況

JETROナイロビ事務所 中川翼様

サブサハラ・アフリカの経済概況の説明のあと、ケニアのGDP、成長率推移、外貨準備高といった経済概況や、貿易、就労、通信状況等の投資環境について、各種データを用いて発表された。

4.ケニア農業分野における投資ニーズ

JICAケニア国北部回廊アドバイザー 深井芽里専門家

ケニアの農業分野への民間投資促進にかかる政策・プログラムの説明、深井専門家の業務内容、およびASTGS(Agriculture Sector Transformation and Growth Strategy)におけるカウンティ毎の優先作物について発表された。

5.ケニア共和国 農業・農業機械化の概要

JICAケニア国農業機械化アドバイザー 村上峻一専門家

村上専門家の業務概要、ケニアの概要、農業や農業機械化の概要、関連する政策等のほか、ケニアの農業機械化の事例として、サービスプロバイダー(賃耕・賃刈り業者)に関するケーススタディ、コメの機械化の現状、およびケニアにおけるAFICAT事業のポテンシャルについて共有された。

6.Capacity Development Project for Enhancement of Rice Production in Irrigation Schemes in Kenya(CaDPERP)-ケニア国灌漑地区におけるコメ生産強化のための能力開発プロジェクト-

尾形佳彦業務主任

同プロジェクト(CaDPERP)の対象地区および活動内容、ケニアのコメセクターの概要に関する発表に続き、アフリカの機械化ニーズに関して、ターゲットエリアの考え方や進出のヒント、手作業から機械化が考えられる分野とその事例、および本邦企業と同プロジェクトの連携事例が共有された。

7.ジョモケニアッタ農工大学の紹介および本邦企業との連携事例

JICAケニア国アフリカ型イノベーション振興・JKUAT/PAU/AUネットワークプロジェクト(フェーズ2) 小疇浩業チーフアドバイザー

ジョモケニアッタ農工大学(JKUAT)の概要、汎アフリカ大学 基礎・科学・技術イノベーション学院(PAUSTI)の概要、同プロジェクトにおける日本の援助の歴史、関連する技術協力プロジェクト、JKUATにおける日本の大学との交流実績、JKUATの研究施設および研究・開発活動(農学部)、JKUATが目指す将来像等について発表された。

8.村の精米所ビジネス事業化検証

(株)商船三井ケニア国代表/KiliMOL代表 大山幹雄様

KiliMOLおよび(株)唐沢農機サービスの概要が説明されたあと、農林水産省の補助事業プログラムである「ケニアでの小規模精米所ビジネスの事業化検証プロジェクト」の概要として、カンリウ工業(株)の精米機の紹介や現地での活動紹介、記録指導の様子、現地での商品案内ウェブページ等が共有された。

質疑応答

(質問1)ケニア経済概況の発表で、ケニアの賃金が高い理由を教えてほしい。
(回答1:JETRO 中川)理由のひとつとして、法律面において雇用主側で年金や保険等を負担する部分が多いことがある。また、労働組合が強い傾向があり、物価上昇率に合わせて賃金を上げて調整されていることがある。

(質問2)投資ニーズの発表で、アボカドが輸出向け優先作物になっている理由と、地方分権化の中で既得権益絡みで中央と地方が対峙するケースもあると思うが、中央とカウンティレベルの農業投資促進の具体的な優良事例があれば教えてほしい。
(回答2:JICA深井専門家)アボカドが輸出向け優先作物とされている理由としては、アボカドの国際市場での高い伸び率(現在年間15%ほど)があり、需要が増えていることがある。またケニアは2020年に国家アボカド促進戦略を策定し、現在はケニアの輸出果物の8割がアボカドとなっている。また、各カウンティ政府においても補助金をつけた種子を供給する等、アボカドを促進する戦略を立てている動きが増えており、国全体でアボカドを推していこうとしている。
中央省庁とカウンティ政府レベルでの農業投資促進事例について、ケニア進出を考える民間企業は、カウンティ政府ではなく中央省庁に問い合わせることが多いが、例えば農業省では栽培局の中に各作物の担当官が設置されており、問い合わせを受けた中央省庁がカウンティ政府につなぐこともある。民間企業のビジネスが中央省庁の政策やプログラムに則っているとビジネスがやりやすい環境であり、自身が支援をしているケニア西部のKakamegaカウンティにおいては、昨年12月に同カウンティの優先バリューチェーン選定を行った際、農業省本省や産業省傘下のケニア投資庁の農業担当者に同行し、支援をしてもらった。その際に開催された会議ではひまわりオイルを民間投資として推していきたいという声が挙がったが、現在中央省庁が立ち上げている食用オイルの促進プログラムとの連携を進めているところであり、中央省庁とカウンティ政府との連携の優良事例となりそうな段階にある。

(質問3)自社では、Field Data伝送システムの機器を製造し、ジブチ、東南アジアで展開している。携帯電話通信網を使用して気象データの収集、WEBで解析し、配信するシステムを製造しているが、そのようなデータは(アフリカで)必要か?また、灌漑システムで、水位の監視システム等のニーズはあるか?効率的な水管理が重要だと考えている。
(回答3:JICA尾形専門家)気象データは、CARD関連で紹介いただいたIRRI(国際稲研究所)とJIRCASの共同研究による気象予察システム(WeRISE)が構築され、東南アジアで実用化されている。中長期および短期の気象予察は農業にとって重要であり、雨量の予察ができれば灌漑水の調節の判断が可能となり、またアフリカでは未だ多い天水農業にとってもリスクを回避するための技術としてそういった気象解析や予察システムの価値は高い。水位観測に関しては、アフリカにおいても日本の圃場整備事業に倣い、適正な灌漑排水施設を建設しかつ水位の監視システム等を導入することで非常に灌漑効率が上がると考える。灌漑水管理を担う組織の要因不測の解消のためにもそういった遠隔で水管理を行うことは今後益々必要になってくると思われる。

(質問4)アフリカの機械化は長年の課題でもあるが、AFICATの協力が2年間とのこと、将来的な取組戦略を教えてほしい。
(回答4:JICA天目石次長)AFICAT事業は、元々、2019年に開催されたTICADが契機となっており、コロナ禍においても脈々と取組みを続けてきた。現段階では本調査期間は2年間であるが、今後本邦企業のアフリカ進出の足掛かりとしてのAFICATの役割が益々進んでいくようであれば、JICAとしても今後更なる支援を考えていきたい。

(質問5)KiliMOL様へ質問。ECサイトで販売しているということだが、現地でデモを行わずに成約になるケースもあるか。現地でのデモや納品は、農機を取り扱う現地パートナーが行うのか。
(回答5:KiliMOL大山)ケニアに関して、ECサイト経由で直接販売に至った例はないが、ECサイトをみて問い合わせがくるケースは結構ある。また、ケニア以外の国から問合せを受けることがあり、ECサイトがその媒体となっている。現地でのデリバリーに関しては、ケニアでは自社の社員が現地のバイヤーに直接引き渡し、操作方法も説明している。タンザニアやウガンダ等で今後展開を拡大するにあたっては、現地のパートナーを見つけて協力していきたいと考えている。

閉会の挨拶

JICAケニア事務所 林次長

登壇者にまずは感謝したい。本日のセミナーにおけるJICAの狙いとしては、農業、農業機械化の観点を中心に、ケニアのポテンシャルをいかに伝えるかといった点であった。現地で活躍をする登壇者の発表を通じて、ケニアを感じて頂けたのではないかと実感している。ケニアのポテンシャルは非常に明白ではあるが、中国、欧米等もケニア市場を狙っており、ケニアの農業分野に日本がODA、またはODAの立場を超えていかに食い込んでいくかが課題と感じている。他国企業も日々試行錯誤しながら市場開拓をしており、進出のための処方箋を描くことは簡単ではないが、JICAとしては、まずは皆様にケニアに関心を持って頂き、また、様々なアイデアを有する現地関係者と意見交換を行う場を設けられたらと考えている。本日のセミナーを契機として、皆様と各専門家等との意見交換が進むことを願っている。