2025年9月に名古屋大学大学院に入学し、「きれいな街のための中核人材育成」コースのJICA長期研修員として学んでいるモルディブ共和国からの留学生、シャウファ・アハメドさんにお話を伺いました。
自己紹介をお願いします。
モルディブ出身のシャウファ・アハメドです。現在、JICAの「きれいな街のための中核人材育成」コースにて、環境学研究科で土木・環境工学を学んでいます。
来日前は、モルディブ政府で廃棄物管理を中心とした環境行政の仕事に携わっていました。業務経験を積む中で、より専門的な知識を身につけ、島嶼国であるモルディブでの、災害や環境変化に負けない持続可能な地域づくりに貢献したいと考えるようになりました。
JICAの「きれいな街のための中核人材育成」にて日本で学ぼうと考えたのは、なぜですか。
モルディブで環境行政に携わる中で、廃棄物管理や限られた資源の有効活用について、小さな島々特有の課題を間近で見てきました。モルディブは多くの物資を輸入に頼っており、一方で廃棄物を処理するための土地は非常に限られています。
こうした課題の解決に役立つ、廃棄物管理、循環経済、持続可能な都市開発等の知識や実践的な手法と、またこれらの課題についての日本の豊富で貴重な対処事例を学びたく、このプログラムに応募しました。
生物多様性データ管理・環境報告に関する国際会議にて(ネパール)
これまでの日本での学びを通じて、どのような知識や視点を得ましたか。
日本での学びを通じて、環境問題を単に汚染発生後の処理の問題としてではなく、より広い視点から捉えられるようになりました。都市に資源がどのように流入し、消費され、そして最終的にどのような形で都市の外へと流出していくのか、その一連の流れを一つのシステムとして捉える考え方を学びました。さらに、マテリアルフロー分析や産業エコロジー、循環経済といった概念を学ぶことで、ごみの発生そのものを抑え、資源をより長く循環させる方策を考えるための新たな視点を得ることができました。
また、日本の資源効率向上への取り組みやリサイクル制度、エコタウンの事例などからも多くのことを学びました。特に環境問題を解決するためには技術も大事ですが、適切な政策や制度、地域住民の参加、さらには行政・企業・市民など多様な主体間の協力が重要であることを理解しました。
帰国後、学んだことをモルディブでどのように活かしたいと考えていますか。
帰国後は、日本で学んだ考え方や手法を、島嶼国モルディブ特有の課題の解決に活かしたいと考えています。現在はヴィリンギリ島(Villimalé)を対象に、資源の流れを分析し、より進んだ島嶼地域の資源循環システム作るための研究をしています。
長期的には、モルディブ国内において、資源効率の向上、ごみの発生抑制、リサイクルや資源回収・有効活用の推進、そして持続可能な廃棄物管理の強化につながる政策やプロジェクトに貢献したいと考えています。また、日本で得た知識や経験をモルディブの同僚や他の環境分野の専門家たちと共有していきたいと思っています。
自然公園に関する会議にて(モルディブ)
日本での生活はいかがですか。
来日前は、日本語が話せない中で新しい環境に適応できるか、また学業と家族との生活を両立できるか不安もありました。しかし実際に暮らしてみると、人々がとても温かく親切で協力的であることに良い意味で驚かされています。
また、名古屋大学では、日本をはじめさまざまな国の学生との出会いがあり、彼らと互いの考えや経験をシェアしながら、教室の中に留まらない友人関係を築くことができています。
学業以外では、家族と日本ならではの自然や四季に触れることで、日本をより知ろうとしています。これまで休日に訪れた沖縄や富士山周辺、白川郷などは、特に印象に残っています。こうした経験を通じて、大学のキャンパスの外で日本の文化や地域の魅力に触れることは、私たち家族にとっても素晴らしい思い出となっています。
また、最も驚いたのは、公共交通機関の運行や街の清潔さなど、日々の生活がとても安全で整っていて、便利であることです。同時に、異なる文化や言語に向き合う中で、自分自身も柔軟に適応する力や自信を身につけることができたと感じています。日本での留学は、学問だけでなく、人として成長できる貴重な経験になっています。
日本への留学を考えている廃棄物管理分野の方々へメッセージをお願いします。
廃棄物管理の分野で学びたい方には、ぜひ日本への留学をお勧めしたいです。日本では先進的な技術や廃棄物管理の仕組みを学べるだけでなく、環境保全への配慮や責任が、政策や産業、地域社会、そして日常生活の中にどのように組み込まれているかを実際に見ることができます。
そして日本へ留学する際は、ぜひ心をオープンにして、状況が許す限り積極的に質問し、施設や地域を訪れ、多くの人々と交流しながら、成功からも困難からも学びを得ようとすることをお勧めします。そして、最も重要なのは、日本で学んだことをそのまま模倣するのではなく、自国の状況にどのように生かせるかを考えることだと思います。
指導教官からひとこと
谷川 寛樹 教授
名古屋大学 大学院環境学研究科 都市環境学専攻
Shaufaさんは、当研究室としてモルディブから初めてお迎えした留学生です。彼女は、モルディブのような島嶼地域における資源循環という極めて重要かつ困難な課題に対し、日々非常に熱心に取り組んできました。島嶼国においては、気候変動への適応と持続可能な資源循環の双方を視野に入れながら、迅速かつ実効性のある対応を進めることが強く求められています。日本で培った知見や研究成果を糧に、帰国後も母国の持続可能な未来を拓くリーダーとして大いに活躍されることを心から期待し、応援しています。
JICA「きれいな街」コースを通じた名古屋大学での学びについて
井料 美帆 教授
名古屋大学 大学院環境学研究科 都市環境学専攻
名古屋大学大学院環境学研究科・工学研究科では、留学生と日本人学生が共に学ぶ国際環境人材育成プログラム(NUGELP)を実施し、アジアを中心に多様な国の学生やJICA研修生を受け入れています。シャウファさんも、母国の課題を共有し、グループワークの論点を整理するなど、議論に積極的に参加しています。専門知識を深めるだけでなく、対話を通じて仲間と課題解決に取り組みたい方に、ぜひ学んでいただきたいと思います。