ガーナの児童労働に関する調査・パイロット活動報告セミナーを実施しました

2022年7月20日

概要

日時:2022年7月20日(水)9:30~11:30
会場:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 会議室/オンライン:Zoom
共催:特定非営利法人ACE、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、アイ・シー・ネット株式会社

登壇者(敬称略)

岩附 由香 特定非営利活動法人ACE 代表
白木 朋子 特定非営利活動法人ACE 副代表
赤堀 友希 特定非営利活動法人ACE
佐藤 有希子 特定非営利活動法人ACE
山下 契 JICA ガバナンス・平和構築部 ガバナンスグループ 法・司法チーム 企画役

背景・目的

JICAと特定非営利活動法人ACE様、アイ・シー・ネット株式会社様と進めておりました、「ガーナ共和国 カカオ・セクターを中心とした児童労働に係る情報収集・確認調査」が6月で終了しました。

ガーナ政府は国内での児童労働の撤廃と「2025年までに世界中であらゆる形態の児童労働を終わらせる」ことを掲げたSDG8.7の達成に向けて、2018年より「児童労働フリーゾーン」(Child Labour Free Zone:CLFZ)制度の構築に取り組んでいます。

本調査では、パイロット活動を通してCLFZガイドラインの実効性を高めるために必要な取り組み、政府(中央・郡)が果たすべき役割などについて情報収集・分析を行いました。

7月20日には、対面・オンラインで本調査の報告セミナーを開催。調査結果の共有に加え、CLFZや、海外のプラットフォームの動向等についてもご説明いただきました。

本セミナーの動画は以下URLよりご覧いただけます。

内容

  • まずはACE代表の岩附氏より、ガーナにおける児童労働の現状報告、児童労働フリーゾーン(以下CLFZ)の紹介がありました。CLFZでは「適正な学習環境」「自治体レベルにおける実施体制」「児童労働の割合を10%以下に削減する」など8項目の認定要件に対し、36の指標が定められています。調査期間中には2地域の郡において、CLFZの円滑な実施に向けた現存制度の阻害要因特定、また住民の能力開発支援などを目的として、中央・郡からカカオ・セクター、コミュニティまで幅広い関係者とともにパイロット活動を実施しました。これらの活動については、ヨーロッパの援助機関等からも関心が挙げられました。
  • ACEの赤堀氏からは、コミュニティのモニタリングを通して特定された児童労働の種類および詳細、また児童労働に従事していた子供たちの入学・復学人数と割合等について報告がありました。さらにパイロット活動の前後で、児童労働に関する定期的な啓発活動、技術支援の提供、リファラルシステムへのアクセスのしやすさなどで改善が見られたことに言及されました。
  • ACE佐藤氏からは、海外のプラットフォームの動向について紹介がありました。ドイツ、スイス、ベルギー等ヨーロッパを中心にカカオ・プラットフォームが立ち上がっており、資金サポートを含め政府の関与が高いことが特徴として挙げられます。またマルチステークホルダーの連携事例として、オランダで策定された分野別のロードマップ(各アクターの役割と具体的なアクションを明示したもの)が紹介されました。
  • ACE白木氏からは、他の開発パートナーとの意見交換状況に関して報告がありました。多くの開発パートナーが既にCLFZ関連の支援を実施しており、例えばFAOはブロックチェーンを用いてカカオのサプライチェーンのモニタリングをしつつ、児童労働を把握する仕組みを作ろうとしています。またUNICEFは郡レベルの財政支援、社会福祉の情報システムの構築支援に着手しています。さらに今後の方向性として、以下の提言が挙げられました。
    1. ガーナ児童労働モニタリングシステム(GCLMS)の運用担保、官民のデータの統合
    2. CLFZデータベースの構築とアセスメントの本格実施
    3. CLFZに紐づいている政府プログラムの運用の担保、連携
    4. 郡レベルで、政府・行政機関と外部の開発パートナーが連携するための合同プラットフォーム構築
    5. (将来的に)CLFZで産出された製品の付加価値を与える仕組みの構築

【画像】

ACE様 発表の様子

  • JICAからは山下企画役が、CLFZに対するプラットフォームでのこれまでの関わりを紹介。2020年のパイロット活動の参画に始まり、2022年度中には新規プロジェクトを開始予定という旨を報告しました。このプロジェクトでは持続可能なCLFZシステムの構築を目的に、開発パートナーとの連携強化、資金動員メカニズムの検討などに着手していく予定です。また本プラットフォームに関して、今後もステークホルダーの皆様との関わりを通じ、様々な連携の可能性を追求していきたいと語りました。
  • 最後の意見交換では、CLFZ認証に関して、世帯数におけるカカオ農家の比率、児童労働に対する罰則、消費者への啓発をはじめとする本プラットフォームの今後の活動等の話題が挙がりました。

登壇資料

参考情報

ガーナ政府の取り組み

欧州の各サステイナブルカカオプラットフォーム

スイス

オランダ

ドイツ

ベルギー

認定NPO法人ACE

JICA

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