EUDR(欧州森林破壊防止規則)に関する勉強会を実施しました
2025.09.25
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概要
開催日時:2025年7月25日(金)14:00-17:00
開催形式:オンライン
登壇者(敬称略)
プリファード・バイ・ネイチャー(Preferred by Nature):
- 小林 有人氏 (農業専門家、日本担当 (RA/FSC/RSPO審査員))
- Sandra Razanamandranto氏 (Regional engagement and communication Director)
- Timothy Bender氏 (Regulatory Impact Coordinator)
内容
開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォームのトレーサビリティ分科会では、2025年7月25日にEUDR勉強会を開催しました。農業・林業における責任ある調達支援において長年の実績をもつ国際NPOであるプリファード・バイ・ネイチャー様(以下、「PbN」)をお呼びし、2025年末施行予定であるEUDR(欧州森林破壊防止規則)の概要、最新動向、実務対応等について、実務者・関係者向けの解説をしていただきました。
EUDRに関する、オペレーター(EU市場にEUDR対象作物・製品を供給・輸入する企業)の義務やデュー・ディリジェンスの具体的運用、現場で直面する課題とその対応策、PbNの支援ツール・事例、現地ガーナでの状況等、幅広い内容が共有されました。
(以下、ご登壇内容一部抜粋)
1. PbNの概要
- PbNはデンマーク本部を持ち、世界100カ国以上で30年以上活動する国際NPO。2023年に日本支部を開設し、日本企業向けの支援を開始。
- PbNのミッションは「人々、自然、気候に利益をもたらす土地管理とビジネスの実践の支援」、ビジョンは「人間の選択が持続可能な未来を保証する世界」の実現。
- 主な事業は認証審査、サステナビリティアドバイザリー、プロジェクト、トレーニング・キャパシティビルディング等で、木材、コーヒー、カカオ、パーム油、大豆等のコモディティを対象としている。
- EUDR対応のためのツール、各種トレーニング、認証サービス等を提供し、カカオ企業や関連機関へのEUDR・認証支援、システム導入、リスク評価・緩和策、サプライヤー教育、小規模農家研修等の現場支援を展開している。
2. EUDRの概要
- EUDRは、世界的な森林減少や生物多様性損失・気候変動への対応を目的に策定されたEUの新たな規則。
- 市場への影響としては、現在の持続可能な製品は、安価で持続可能性に欠ける非合法製品との不当な競争にさらされている状況と言える。EUDRのような合法性強化に向けた規制は、違法製品の市場からの排除を通じて価格の適正化を促すとともに、合法・国産品の競争力向上など、産業基盤強化にも寄与すると考えられる。
3. EUDRの主要要件と対象範囲
EUDRは以下3つの条件を満たさない限り、EU市場での流通・輸入を認めらない。
- 森林破壊フリーであること(2020年12月31日以降の森林減少・農地転換がないこと等)
- 生産国の関連法令遵守(環境・労働・土地利用権等)
- デュー・ディリジェンスステートメントによる保証
規則は2023年6月に公布され、企業は2025年12月(中小企業は2026年6月)までに要件を遵守する必要がある。
4. オペレーター義務とデュー・ディリジェンス
- オペレーター(EU市場に製品を供給・輸入する企業)は、情報収集、リスク評価、リスク軽減のデュー・ディリジェンスを実施し、証明書類を提出する必要がある。
- 欧州委員会が国別リスク分類(低リスク・標準リスク・高リスク)を発表しており、低リスク国はリスク評価・軽減を省略できるが、情報収集義務は残る。高リスク国はより厳格な対応が求められる。また、サプライチェーン上での材料混入や迂回取引リスクにも注意が必要。
5. カカオセクターにおける課題と現場事例
- カカオ豆については、カカオ豆の乾燥・輸送段階での混入リスク、サプライチェーンの複雑化、複数農家からの豆の混合、隣国からの高リスク品の迂回等が大きな課題となっている。
- 生産地情報の収集も困難であり、土地の権利問題や農家の情報開示への抵抗、児童労働・強制労働問題、農家の高齢化・貧困、環境面(保護地域侵入、化学肥料の大量使用等)の課題が顕在化。
- 一方で、EUDRはサプライチェーンの透明性向上や関係者間の対話促進といったポジティブな機会の創出にもつながっている。
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