近年、エボラウイルス病を始めとするウイルスによる人獣共通感染症が世界的な脅威となっています。ザンビアにおいても、社会的関心は高く、政策的な優先課題として重視されていますが、ウイルス性出血熱やインフルエンザ等のウイルス性人獣共通感染症に対する教育・研究基盤は殆ど整備されていない状況でした。また、人獣共通感染症を効果的にコントロールするためには、検査診断体制を整備すると共に、自然界における病原体の存続様式についても理解する必要があります。
2013年に開始したJICA地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)「アフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症の調査研究プロジェクト」では、ザンビア大学獣医学部にウイルス学実験室(動物実験設備含む)を整備し、様々なウイルス性人獣共通感染症に対する研究を開始しました。また、インフルエンザやウイルス性出血熱等のウイルス性人獣共通感染症に対する診断法を同学部に導入しました。特に、プロジェクトを通して開発されたエボラウイルスの迅速検出キットは、コンゴ民主共和国においてエボラウイルス病疑い患者に対して試験的に使用されています。プロジェクトでは、野生動物や家畜を対象として、エボラウイルス病、クリミア・コンゴ出血熱、鳥インフルエンザ等の感染症の研究を実施しており、ザンビアにおける人獣共通感染症に対する疫学情報を提供すると同時に、その発生リスクについて解析しています。プロジェクトでは未知のウイルスも多く検出しており、人獣共通感染症の病原体としてのポテンシャルについても評価をしています。
これらの研究成果は学術論文として取りまとめられ、既に国際専門誌に発表されています。今後は周辺国の研究機関とも協力してアフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症への対策強化に、一層貢献することが期待されています。
採取したコウモリを用いた調査研究
ウイルスの解析作業の様子
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