なぜ母子手帳?機能と効果

母子継続ケアを支える母子手帳

母子手帳は、家庭で保管する健康記録のひとつです。母子保健サービスを利用する母親や家族が家庭で保管し、サービスを受ける際に持参して使います。母子継続ケア(妊娠期から乳幼児期の「時間的な継続性」と、家庭から保健医療施設といったケアを受ける「空間の継続性」)を一貫して支えるツールで、以下の機能を備えています。

1.継続的な記録

妊娠中と出産時の母子の状況、子どもの成長や発達、予防接種などを継続して記録でき、母親はもちろん、家族と保健医療スタッフがこれまでの経緯を含めて状況を把握することができる。個人の認証情報や健康記録を参照することで、より安全で個人の状況に応じたケアを提供することができる。母子が受診の際に持参することで、里帰りや引越し、搬送などで普段とは異なる施設を利用しても、継続的に記録することができる。

2.健康と育児の情報提供

妊娠・出産・育児・避妊・栄養に関連する情報が分かりやすくコンパクトに記載されており、母親や家族が参照するほか、保健医療スタッフが指導に活用できる。

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母子手帳を手に保健医療スタッフが母子に指導する様子

通常は家庭で保管するため、日常的に家庭で母親や子どものケアを行う際に参照できる。例えば、母親や家族が、妊娠中の危険な兆候に関する情報を知ることで、早期に保健医療機関の受診を促すことができる。また、次の受診日を知ることができ、受診の遅れや受診漏れを防ぐことができる。

利用者のニーズに合わせた母子手帳

JICAは、その国の母子保健のニーズや保健システムの状況、社会文化的背景に合わせて、母子手帳の開発・導入・普及を支援しています。母親や保護者にとって、そして保健医療従事者にとって使いやすく、読みたくなる母子手帳にすることで、母子の健康にかかわる様々な人が活用できる一冊となります。

1.識字・多言語への対応(アフガニスタン)

複数の民族で構成され、15-24歳の女性の識字率が32%(2019, UNICEF)にとどまる社会的背景を踏まえ、イラストを効果的に使った母子手帳が言語(ダリ語・パシュトゥ語)ごとに作成されています。

2.感染症予防(インドネシア)

蚊帳を用いたマラリアの予防や、正しい手洗いなど家庭でできる感染症予防の方法が紹介されています。COVID-19禍でも、家庭での適切なケアを促し、定期予防接種などの必要なケアを欠かさないために活用されています。

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インドネシアの母子手帳にある蚊帳使用促進と手洗い指導の掲載

3.栄養カウンセリング(ガーナ)

妊婦や子どもの健診を行う際、より効果的に栄養改善のケアも行うことができるよう、母子手帳の中に予防接種や健診の記録のほか、栄養指導や栄養カウンセリングの記録欄、発育発達の情報などを統合しています。妊娠期から母親に対し、自身や子ども、家族の健康、栄養について、シンプルで分かりやすく実践しやすい指導を行うことで、家族全体の健康と栄養改善も目指しています。

4.思春期(セネガル)

思春期の妊娠・出産がいまだ多い状況のため、ライフコースを通じた健康の重要性を伝え、地域全体による若年妊娠防止への取組が行われています。このため、セネガルの母子手帳には、乳幼児の期間だけでなく、学童期・思春期までの健診や保健医療機関受診記録欄が設けられ、予期しない妊娠・性的暴力・早婚などの若年妊娠の注意喚起を含めた健康的な暮らしに関するアドバイスが記載されています。