JJ-FAST:パリ協定グローバル・ストックテイクへの共同サブミッションの提出

JICAは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、地球環境戦略研究機関(IGES)、ブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA)と共に、「JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)」を通じた気候変動対策の取組について、パリ協定の第1回グローバル・ストックテイク(Global Stocktake:GST)への共同サブミッションを提出しました。

グローバル・ストックテイクと提出したJJ-FASTに関する文書の概要

昨年11月、英国グラスゴーにて開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第26回締約国会議(COP26)にて、パリ協定のルールが決定されました。2022年以降、各国は合意されたルールに則り、パリ協定の目標達成に向けて更なる野心的な行動を取ることが求められます。GSTはこのパリ協定の長期目標の達成に向けた世界全体の進捗状況を評価する仕組みです(パリ協定第14条)。

第1回GSTはCOP26において開始されました。GSTでは、『衡平性』と『最良の科学』の2つの原則に基づき、世界の政府・非政府ステークホルダーから気候変動の「緩和」、「適応」、及び「実施手段」に関する情報を収集、評価し、成果物として取りまとめることとしています。

JICA及びJAXAは、2016年に両機関間の連携協定に基づき、開発途上国の森林保全とそれを通じた気候変動対策や生物多様性保全への貢献を目的とした「森林ガバナンスイニシアティブ」を打ち出し、違法伐採による森林減少抑制などに貢献するJJ-FASTの運用や、人材育成、グローバルレベルのパートナーシップ強化を進めています。

JJ-FASTは、JAXAの陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)によるデータを用い、対象78か国の2ha以上の森林減少を約45日ごとに自動検出し、ウェブ上で公開するものです。JJ-FASTは、これまで衛星による森林監視の課題とされていた雲の影響を受ける雨季や夜間も森林変化を捉えることが可能であり、また森林減少のデータを地理情報システム(GIS)や土地利用のデータと組み合わせて解析することにより、違法伐採地の特定などに使うことができます。JICAとJAXAは、開発途上国による森林モニタリングへのJJ-FASTの活用を支援するため、日本や開発途上国での研修の実施や、技術協力プロジェクトを通じた人材育成を行っています。

今回のGSTでは、JJ-FASTの概要や各国での活用に向けた支援に関する取組の他、ブラジルでのJJ-FAST活用の事例を紹介しました。JJ-FASTはこれまでの約5年間で約3百万件の森林減少を検出していますが、そのうちの3分の1以上は、違法伐採などによる森林減少が深刻なブラジルです。ブラジルでは、JJ-FASTや複数の衛星から得られるデータを組み合わせた森林伐採早期警戒システムを運用しており、国立宇宙研究所が森林伐採の疑いがある場所を特定した後、そのデータをIBAMAに送ります。IBAMAは、その伐採が違法である可能性が高いと判断する場合、連邦警察などと協力して取締りを行います。このようにJJ-FASTは、ブラジルにおける違法伐採の把握などを通じ、熱帯林を保全することに役立てられています。

GSTは、世界の機関が地球環境問題の解決に資する最新の科学的成果や優良事例等、パリ協定の実施促進に有用な情報を提供することを目的にしています。今回のGSTへの共同サブミッションは、JJ-FASTがより広く世界に広まり、熱帯林の保全に役立てられることを期待するものです。なお、今回のGST提出は、IGESによる、最新の国際的議論の状況等を踏まえた日本の知見、成果、事例をサブミッションとして形成するためのガイダンスによって実現しました。

JICAはこれからも関係機関と連携し、世界の気候変動対策へ貢献していきます。

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