平和構築

【平和構築】

課題の現状

武力紛争は人々の暮らしを根底から変えてしまいます。仕事や学校に行くことや、買い物や病院に出かけること、それまで普通だったことができなくなり、多くの人々が安全な生活を奪われ、住み慣れた土地からの避難を強いられます。武力紛争の大半は開発途上地域で発生しています。紛争が終結しても、一度壊れてしまった社会システムを再構築し、経済・社会を再建し、平穏な生活を取り戻すには、息の長い取り組みが必要です。

紛争の発生や再発を予防し、平和を定着させるには、軍事的手段や、予防外交などの政治的手段とともに、社会的な格差、機会の不平等などの紛争の引き金となる問題の根本的な解決に取り組む必要があります。インフラの再建だけでなく、国民のニーズを公正に汲み上げて対応できる体制づくり、そしてコミュニティや人々のエンパワーメントにより、安定した国をつくることが、平和な暮らしにつながります。

紛争の被害を受けた国や地域の再建は、誰一人取り残さないというSDGsの理念とゴール16「平和と公正をすべての人に」、また日本が開発協力の中心的理念として掲げる人間の安全保障の観点からも極めて重要な課題です。

JICAの方針

JICAの平和構築支援は、「紛争が発生・再発しない強靭な国家建設」を目的として、「国民から信頼される政府の樹立」と「強靭な社会の形成」を目指します。

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図表 レジリエントな国家建設を目的とした平和構築支援

(1)国民から信頼される政府の樹立

新たな国づくりが進められる国では、国民が幅広く参加する政治プロセスや政治的合意の促進が必要となります。さらに公正で包摂的な社会の礎となる、ガバナンスと法の支配に基づく国家・社会の実現のため、憲法・基本法制定や、立法府(国会)や司法府(裁判所)、公共放送局、法執行機関(警察、海上保安機関等)、国境管理機関、地雷・不発弾処理機関等の機能強化の支援が求められます。

加えて、国民の声やニーズに応えられる政府機能の強化のため、社会と生活の再建の促進を通じた社会の安定化や、社会・人的資本の復旧・復興、基礎的社会サービスの改善とこれに資する政府機関の能力強化、住民の生計活動の活性化等を行うことが重要です。

(2)強靭な社会の形成

表面的に紛争が終結し、政治的に国家建設プロセスが進んでも、住民・コミュニティ間の信頼醸成や社会の調和・和解が進まなければ、紛争の再発のリスクが高まります。紛争影響国・地域は、政府の能力が限られているため、人間の安全保障が十分に確保されない状況にあります。このため、住民の自助・共助により、最低限のインフラの復旧やサービスの提供、生計活動の再興ができるよう、住民向けの能力強化を行うことが重要で、その際に協働の機会を創出することにより、共同体機能を強化し、住民相互の理解と信頼を深めることが可能です。また、長期間の強制移動等により土地所有等の権利関係があいまいになることで、住民間の争いや緊張関係が再発しやすいとされているため、コミュニティによる紛争調停機能等によって、住民自らが生活上の争いごとを平和に解決できる能力を強化していく必要があります。

課題別指針

SDGsポジションペーパー

国際社会・開発協力の動向

国際社会による平和構築分野への援助総額は2018年実績で51億7,500万ドル(約5,692億円)、ODA総額の約2.5%にあたります。開発援助委員会(DAC)での本分野における最大ドナーはドイツで、日本は8位(2018年)。2009年~2018年の10年間の総額では米国が最多、ドイツ、英国、ノルウェーが続き、日本は7位です。世銀等のマルチ機関の援助額も大きなウェイトを占めています。

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主要援助国によるConflict, Peace and Security部門ODA額の推移(出典:DAC統計)

近年の武力紛争は、国境を越えて広範囲に影響が及び、沈静化と再発を繰り返して長期化する傾向にあります。紛争の長期化は、難民・国内避難民を含めた紛争の被害者の増加、それらの人々への支援の長期化に直結し、人道支援のニーズは増加の一途を辿っています。

持続可能な開発目標(SDGs、2015年)や世界人道サミット(2016年)で、「誰一人取り残さない(no one will be left behind)」が国際社会の基本理念と位置付けられました。人道支援の負担を軽減するとともに、紛争や不安定な社会状況を引き起こす根本的な原因に対処することが重要と考えられており、国際機関やドナー国が民間団体や企業と協力して課題解決に取り組む「全社会的アプローチ(whole-of-society approach)」や、人道・開発・平和構築に携わる機関間の連携を強める「人道と開発と平和のトリプルネクサス(HDP Nexus)」が注目されています。