ジョモケニヤッタ農工大学から日本へ JICA帰国留学生の声(Part1)

ジョモケニヤッタ農工大学(JKUAT)とは

ケニアの首都ナイロビ近郊にある国立ジョモケニヤッタ農工大学(Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology, JKUAT)は、工学及び農学分野で突出したアフリカでも有数の拠点大学です。JICAは、1977年から施設・機材整備のための無償資金協力や専門家派遣等による技術協力を通じてJKUATを支援してきており、ケニアを代表する大学の一つに発展しています。

JICAは「科学技術イノベーション(STI)」分野における高度人材の持続的な輩出、アフリカ域内の社会課題解決に寄与することを目指し、JKUATを支援しています。

本記事では、JICA留学生としてJKUATから日本に留学した帰国留学生の声を全2回に分けて、お送りします。

帰国後のネットワークを活かし、ハンドブック執筆へ

氏名:  Dr. Annah Khatenje Indeche
出身国: ケニア
留学先: 岡山大学農学部/大学院環境生命科学研究科 博士課程
JICAコース:アフリカ型イノベーション振興・JKUAT/PAU/AUネットワークプロジェクト
(フェーズ1)
研修期間:2016年9月~2019年10月
所属先: ジョモケニヤッタ農工大学 農学部

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― 卒業後のネットワークは役に立ちましたか?

岡山大学でお世話になった先生方とは、いまだに連絡を取っています。指導教員だった吉田裕一教授、後藤丹十郎教授や安場健一郎教授です。現在、私は園芸作物の生理障害についてハンドブックを執筆しているのですが、出版された暁には、吉田教授にレビューを書いていただけることになりました。

このハンドブックは、岡山大学留学時から構想していたものです。帰国後の2021年に日本での研究を活かしたいと思い、本格的に執筆を開始しました。執筆にあたり、ケニアの農家300名以上にオンライン調査を行うなかで、ハンドブックの必要性を確信しました。農家の人たちが登録しているFacebook groupやWhatsAppグループなどで調査への協力を依頼し、非常に前向きな反応も得られました。ハンドブックが発刊されたら、研修の実施や農家の人たちへの普及活動に利用していきたいと思っています。

岡山大学の教授のほか、日本でお世話になっていた農家の人たちとFacebookのメッセンジャーでやりとりを継続しています。私自身は日本語が流暢ではなく、また農家の人たちも英語が堪能ではありません。しかし、コミュニケーションは問題なくできており、農家の人たちとトマト苗についての情報交換をしています。

同じ時期にJKUATから派遣されたJICA帰国留学生とは、今でもWhatsAppで連絡を取り、たまに会っています。私は岡山大学でトマトを研究していましたが、トマトを研究している人は他にはおらず、そのため、他のJICA留学生と交流する機会はあまりありませんでした。しかし、同じ研究室の仲間とは交流を深めていました。

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― 日本とケニアの教育はどのように異なるでしょうか?

日本の教育システムは実践を重視しており、学生はフィールドに出ることが多い印象です。ケニアにも実践はありますが、日本ほど充実していません。JKUATには、Horticulture Students Association(HOSA)という学生団体があり、実践的な活動を行っています。
(参考:https://www.jkuat.ac.ke/departments/horticulture/?p=2496

― 岡山大学卒業後、どのような研究活動を行っていますか?

JICAプロジェクトには、Innovation Research Activityという各 Sub task force (プロジェクトの協力対象分野(農学・工学・健康科学・コンピューターサイエンス)のJKUAT教員によって構成されるプロジェクト活動を推進するグループ) に対して戦略的に策定した研究フレームワーク(Key Thematic Areas)に沿って募集・厳選する競争的研究資金制度があります。この一環でプロジェクトが選定するInnovation Research Fundに応募し、採択され、2020年度から2021年度にかけて研究活動の支援をしてもらいました。

しかし、研究に必要だった機器へのアクセシビリティが良くない状態で、機器が故障していることもあり、修理に時間がかかってしまいました。そのため、研究結果分析に非常に時間を要しました。

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2023年度の競争的研究資金制度には申込みができるよう、現在は研究プロポーザルを策定しているところです。今後、学内でキャリアアップをするためには学術論文を発刊する必要があります。研究活動も継続して、学術論文も執筆していきたいと思っているところです。