ジョモケニヤッタ農工大学から日本へ JICA帰国留学生の声(Part2)

ジョモケニヤッタ農工大学(JKUAT)とは

ケニアの首都ナイロビ近郊にある国立ジョモケニヤッタ農工大学(Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology, JKUAT)は、工学及び農学分野で突出したアフリカでも有数の拠点大学です。JICAは、1977年から施設・機材整備のための無償資金協力や専門家派遣等による技術協力を通じてJKUATを支援してきており、ケニアを代表する大学の一つに発展しています。

JICAは「科学技術イノベーション(STI)」分野における高度人材の持続的な輩出、アフリカ域内の社会課題解決に寄与することを目指し、JKUATを支援しています。

本記事では、JICA留学生としてJKUATから日本に留学した帰国留学生の声を全2回に分けて、お送りします。

日本で学んだ「小さいこと」:帰国後、自身の研究室立ち上げへ

氏名:  Dr. James Mutuku Mutua
出身国: ケニア
留学先: 鳥取大学大学院工学研究科 機械宇宙工学専攻 博士課程
JICAコース:アフリカ型イノベーション振興・JKUAT/PAU/AU
ネットワーク プロジェクト(フェーズ1)
研修期間:2015年3月~2018年3月
所属先: ジョモケニヤッタ農工大学 工学部機械工学科

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日本に留学しようと思ったきっかけは何ですか?

日本への留学は、高校の時から私の夢でした。のちにJICAの長期研修員として派遣が決定し、この夢がようやく叶いました。

日本の研究文化は、押しつけや外からの働きかけではなく、内発的なものです。そうした情熱を持った人たちから研究手法を学びたかったのです。

私は今、自分が日本で学んだ知識を学生や同僚と分かち合い、そのような研究文化を培うために全力を尽くしています。

留学中に学んだ日本の開発経験や技術は、今どのように活かされていますか?

私は、日本人の「小さいことは良いことだ」という考えに賛同します。私たちは小さなことから始め、小さなことから改善し続けなければなりません。

JKUATで自身の研究室を立ち上げようとしたとき、私が受けた質問は、「どうやって機械を手に入れるつもりなのか」、「オフィスがないのにどうやってスペースを確保するつもりなのか」、「機材を購入するお金はどこから調達するつもりなのか」などでした。しかし、私はパソコン1台から始めても、おそらく2年後にはここに3Dプリンターがあるだろうと信じていました。それは決して消えることのない夢なのです。

私はたとえ何年かかっても、小さくても良いと思いながら自身の研究室の立ち上げを志してきました。コツコツと小さなことを継続的に改善していったことが今につながります。私がここで実践しようとしているのは、まさにそのことだと信じています。

リソースを一地点に注ぎ続けることで、小さなことが大きく成長していきます。自分が持っているものをより良いものに改善し続けることで発展できるというのは日本で学んだ経験の一つです。私が今、研究室で行う研究作業のすべては、日本で学んだ技術なのです。

日本留学で得た知識やノウハウを活用する際、困難や問題に直面したことはありますか?JICA帰国留学生や日本人の教授とのネットワークは役に立ちましたか?

積層造形(AM技術)はケニアでも新しい分野で、設備にも限りがあります。JICAプロジェクト(アフリカ型イノベーション振興・JKUAT/PAU/AUネットワーク プロジェクト)の支援により機材や材料を調達できたので、そうした困難を乗り越えることができました。

3Dスキャナーのような研究に重要な機械も購入でき、JICAの支援にとても感謝しています。

留学中にお世話になった鳥取大学の先生方とのネットワークは非常に役立っています。指導教官だった陳教授には、いつもアドバイスをいただいています。例えば、残留応力測定装置が欲しいと思ったとき、どの機種が良いのか、留学時に使っていたのはその機種であったかどうか等、教授に意見を求めました。教授からの回答は非常に肯定的なものであったため、私たちはその機械の購入に踏み切ることができました。留学中、懸命に研究に取り組んだことで、私は教授と良好な関係を築くことができたのです。

3Dプリンターで出力した試作品を見せるDr. James Mutua

3Dプリンターで出力した試作品を見せるDr. James Mutua

残留応力測定装置前のDr. James Mutuaと助手

残留応力測定装置前のDr. James Mutuaと助手