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第1回利用者アンケート結果を踏まえた業務の改善について

当行は、業務運営評価制度の平成14年度評価の一環として、当行の各種サービスの利用者の方々の満足度等を把握し、その結果を利用者の視点で業務改善に結びつけることを目的に利用者アンケートを実施致しました(平成14年度評価上の利用者アンケートにかかる記述は、平成14年度年間事業評価書上、14ページに記載)。

その中で、海外経済協力業務に関する利用者アンケートでは借入国政府、事業事業実施機関、SAF参加のコンサルタントの方々、NGO、地方自治体の方々を対象にアンケートを行いました。アンケートによって皆様から寄せられたご意見、ご要望を踏まえ、円借款業務の改善に今後努めて参りたいと思います。具体的に寄せられた御質問や御要望に対するお答えは、以下をご覧下さい。

1.寄せられたご意見に基づき、改善を行ったもの、もしくは既に措置が講じられているもの。

[ご意見]

適切な案件形成に資する調査への融資を行ってほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

案件形成支援については、当行による有償資金協力促進調査(SAF)やエンジニアリングサービス(E/S)借款の活用、JICA技術協力との連携に取り組んでいます。今後ともこのような取り組みを継続・強化していきます。

[ご意見]

環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(新環境ガイドライン)の導入により生じた追加的な負担の軽減を検討してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

必要な場合には、案件形成促進調査(Special Assistance for Project Formation : SAPROF)の一部を使用して案件の環境社会配慮を支援しています。今後とも、追加的な負担の軽減を行えるよう尽力してまいりたいと思います。

[ご意見]

円借款の借入れにかかる為替のリスクの軽減に関する措置をとってほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

円借款では、償還期間オプション制度(*)の導入により借入国が為替スワップ等を組みやすいように配慮しています。なお、日本政府との協議を経て、2004年3月26日に発表された「円借款制度の見直し」の一環として、オプション制度が拡充されており、同制度の活用が望まれます。

(*)償還期間オプション制度:円借款の譲許性を確保しながら、償還期間を短縮化することを借入国が選択できるようにするもの。円借款供与条件表はこちら

[ご意見]

日本タイドという借款条件を見直してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

円借款の調達条件(借款対象となる資機材・役務の調達をどこから行うか決めた条件)は調達先に一切の制限のない一般アンタイド、日本および開発途上国に限定した部分アンタイド、日本および借入国のみを調達適格国とする二国間タイド、調達先を日本のみとするタイドの4種類がありますが、最近は一般アンタイドがほとんどを占めています。

なお、2002年7月以降、日本タイドの調達条件は、我が国の優れた技術やノウハウを活用し、途上国への技術移転を通じて我が国の「顔の見える援助」を促進するため、本邦技術活用条件(STEP)が適用される円借款に限定され、その他の円借款案件の調達条件は、全て一般アンタイドとなっています。

【参考】過去5年間の調達条件(承諾ベース)

年度 一般アンタイド 部分アンタイド 二国間タイド タイド 合計
1998 91.5 7.2 1.3 0.0 100
1999 83.6 3.0 11.6 1.9 100
2000 64.7 0.0 18.2 17.2 100
2001 60.1 0.0 15.6 24.3 100
2002 88.1 0.0 3.5 8.5 100

[ご意見]

開発途上国コンサルタントを活用してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

当行が直接コンサルタントを雇用する有償資金協力促進調査(SAF)においては、主契約者は主に日本のコンサルタントであるものの、ほぼ全件で現地の事情に精通している開発途上国のコンサルタントが活用されています。また、円借款で調達されるコンサルティング・サービスにおいても、開発途上国コンサルタントが積極的に活用されています。

[ご意見]

借款契約(L/A)締結前の支出に対する融資を行ってほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

円借款では、原則として借款契約締結前の支出に対する融資は行っておりませんが、以下のケースにおいては必要性が認められれば可能です。

 1. 商品借款や構造調整借款等で、当行からの資金がリインバース方式で支出されるもの。

 2. L/A締結前にJBICの調達ガイドラインに定める手続に則り調達のプロセスを開始することが認められた場合。

なお、いずれの場合においても、事前に日本政府及び当行にご相談頂き、政府間の交換公文(E/N)及び当行のL/A締結の段階で、借款契約締結前の支出分についても借款対象とする旨の規定を設けることが必要です。

[ご意見]

セクター制度改革、事業運営・管理能力向上、地方自治体能力向上、中小企業マネジメント、債務管理、事後評価支援などの知的協力・技術協力をお願いしたい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

知的協力・技術協力については、以下のような諸施策を実施しています。今後ともこのような取り組みを強化していきたいと考えています。

  • 制度改革や事業実施機関/地方自治体能力向上等ソフト支援を含んだ円借款のコンサルティング・サービス及び有償資金協力促進調査(SAF)の積極的実施
  • JICAとの連携による専門家の派遣や円借款関連セミナーの実施
  • ODAプロジェクト評価セミナーによる評価方法や教訓のフィードバック
  • 案件完了報告書(PCR)の作成支援
  • 開発金融研究所による開発途上国の研究及び開発政策の改善への知的支援、及びそれにかかる国際会議・シンポジウムの開催

[ご意見]

案件監理体制を強化してほしい。具体的には、事業サイト視察の頻度の増加、財務と技術両面での案件監理の強化、現地の政策や制約に対する理解等に留意して頂きたい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

プロジェクトの実施主体はあくまで借入国ですが、案件監理体制について、これまで当行では、駐在員事務所や本店からのミッションを通じて、事業サイト視察などを行い、必要に応じてアドバイスを行っているほか、特に必要と判断される場合には外部専門家を雇用し、案件実施支援調査(SAPI)を行うなど、その適切な実施に努めてきたところです。今後は、必要に応じて案件監理外部専門家の派遣や、課題に応じた各種調査の実施などにより、一層の向上に努めています。また、問題解決にあたっては各国の政策や制約に留意しつつ取り組むよう引き続き努めていきたいと考えております。なお、駐在員事務所については、権限委譲等により役割を強化するとともに駐在員・現地雇員への研修等を実施していますが、今後も現地ODAタスクフォースや援助協調への積極的対応を含め、実施体制強化を検討していきます。

[ご意見]

有償資金協力促進調査(SAF)において課題の分析に留まらず、解決策を提示してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

当行のSAFにおいては、対象案件についての情報収集を通して、対象案件の課題を分析した上で解決策を提言し、提言の実行についてモニタリングを行っております。特にSAFを実施する際には、事業実施機関が的確に課題を解決できるよう、より具体的かつ実施可能な提言を行うよう留意しています。例えば、より適切な解決策を提示するため、調査内容検討用に当行にて作成したロジカルフレームワーク(注)を導入するなどにより常に改善に努めています。

(注)事業が達成すべき目標、成果、問題点、TOR、調査結果、提言(含む実行者、スケジュール)等を一枚のマトリックスに表現し、調査計画段階から活用するフレームワークのこと。

[ご意見]

JBICのガイドライン類を中央政府の関係セクションだけでなく、コンサルタント、地方のプロジェクトマネジメント事務所などにも提供して欲しい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

JBICのガイドライン類については当行からのミッション派遣時などに広範に配付するよう努めておりますが、今後もより多くのプロジェクト関係者に行き渡るよう努力して参ります。なお、ガイドライン類については全て当行のホームページ上でもダウンロード可能(調達ガイドライン環境ガイドライン)となっており、こちらもご活用頂ければと考えています。

2.現行制度を維持することが必要なもの

[ご意見]

財務状況の良い事業実施機関に、政府保証無しで直接貸し付けてほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

政府保証の免除につきましては、円借款が日本のODAとして政府間の国際約束等に基づき供与されるものであることや、リスク管理上の観点から困難と考えております。

[ご意見]

コンサルタント費用を減らしてほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

円借款事業におけるコンサルタントの雇用は、事業の効率的かつ円滑な準備・実施に資するものです。コンサルタントの雇用費用削減がコンサルタントによるサービスの質を低下させるものであってはならないと考えます。当行としては、コンサルタント費用を削減するのではなく,一部コンサルティング・サービスの有償資金協力調査(SAF)による実施や、JICAによる連携D/D(注)の実施を通じて借入国負担の軽減に努めています。

(注)連携D/D(Detailed Design):円借款による事業実施を前提として、従来円借款資金にて借入国が行っていた詳細設計(Detailed Design)をJICAが行うもの。

[ご意見]

ウェブを活用した調達手続等の事業進捗情報の共有を行ってほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

調達の実施責任主体は借入国であり、事業進捗情報はJBICよりもむしろ事業実施機関が良く把握していることから、実施機関が行う調達手続き(公示等)の事業進捗情報のウェッブによる共有を行うことは考えておりません。また、JBICの同意手続きについては、短期間のうちに頻繁に行われることから、その情報を共有することは、労力に比較してメリットが少ないと考えており、これについてもウェブによる共有を行うことは考えておりません。

[ご意見]

ツーステップローンのリボルビングファンドについては管理が現実的でないので使途報告を廃止してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

円借款の資金使途の適格性については日本国民の関心が高まっており、当行としても十分な説明責任を果たす必要があります。リボルビングファンドの使途報告についても、借款契約(L/A)上合意している場合には、提出していただくことが必要と考えております。

[ご意見]

リインバース、L/Comの変更について適切な通知・報告を行ってほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

一部の貸付実行方式についてはその手続きが複雑となってしまうことにより、適切な通知がなされていても認識されていない場合もありえます。これについては、セミナーの開催などを通じ理解の促進を図りたいと考えています。

[ご意見]

P/Qと入札書類の同意手続の統合など手続きを簡素化してほしい。また、入札結果同意と契約同意は一緒にまとめるべき。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

円借款事業の調達は、当行の調達ガイドラインに定める手続に則って実施していく必要があります。原則として、当行の調達同意のプロセスは、借款契約に定められており、調達における経済性、効率性、調達手続きにおける透明性及び調達契約に対する入札適格者間の非差別性を確保するために必要不可欠なものです。ご指摘頂いているP/Qと入札書類の同意手続きの統合については、P/Qと入札は異なる手続きなので統合は不可能です。しかしながら、入札書類同意手続を、P/Qの同意手続と並行して行うことは、現行の手続きでも問題なく実施可能です。なお、入札結果同意と契約同意をまとめるべきという提案については、契約同意は、契約調印後に事後的に行うものであり、アワード前に行うべき入札結果同意と一緒に行うことは不可能である点、ご理解願います。

[ご意見]

途上国負担分の手当て困難を踏まえ、融資比率を見直してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

途上国負担分については、自助努力を支援するという日本の援助の原則から、一定の負担は引き続き必要と考えています。

3.寄せられたご意見に基づき、今後どのような改善を行えるか検討させて頂くもの

[ご意見]

円借款の供与条件をより一層緩和してほしい。また、貸付実行手数料を引き下げてほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

貸付実行手数料含め円借款の供与条件については、円借款原資の調達コストも勘案しつつ日本政府との協議を経て改定されます。協議にあたっては頂いた意見を踏まえつつ検討したいと考えておりますが、円借款の供与条件については既に2002年度承諾実績で平均1.52%、平均返済期間33年1ヶ月という譲許的な条件になっている点、ご留意頂ければ幸甚です。

なお、日本政府との協議を経て、2004年3月26日に発表された「円借款制度の見直し」の一環として、STEP及びオプション制度への適用金利が引き下げられており、この活用が望まれます。

[ご意見]

財政支援について検討して欲しい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

財政支援については、日本政府と協議しつつ検討を進めていきたいと考えております。

[ご意見]

借款供与のタイミングを柔軟化してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

現在、審査・供与決定のタイミングの柔軟化については、日本政府との協議が必要ですが、そういったご要望も勘案しつつ、個別に検討を進めていきたいと考えています。また、JICAとの連携スキームを活用し、一層柔軟な案件発掘・形成が行えるよう取り組んでいきます。

[ご意見]

要請から審査、L/A迄の期間を短縮してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

要請を受け付けてからL/A締結に至るまでの手続き全体の迅速化については、日本政府とも協議して努力していきたいと考えております。

[ご意見]

審査時に非常に多くの情報の提供が求められるが、プロジェクト要請前から情報共有を進めるべき。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

JBICでは、審査を実施する前にセクター調査、ファクトファインディング(F/F)調査などを行い、審査前に必要な情報を順次収集し案件の成熟度を高めるための意見交換を行っております。今後もセクター調査やF/F調査等の段階での意見交換を通じ審査ミッション時に情報収集が偏らないように努めます。ただし、適切な審査、そして供与判断を行うために、情報の提供が不可欠な点はご理解願いたいと思います。

[ご意見]

JBICのガイドライン類は説明が簡単すぎるので、改善してほしい。また、調達ガイドラインのP/Qの評価ガイドの記述ぶりに矛盾がある。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

環境社会配慮のためのガイドラインについては、FAQで内容を補足しています。次の当行ホームページのリンクをご参照ください。 http://www.jbic.go.jp/japanese/base/faq/index.php

また、ご指摘のあったP/Q・入札の評価ガイドについては、改定を予定しています。

[ご意見]

調達におけるJBICの同意手続に時間がかかるので、手続き期間を短縮してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

当行による調達関連の同意手続きの期間短縮については、ガイドラインに基づき適正な調達が行われたことを確認するためのものであり調達の内容に応じ時間を要する場合もありますが、内部手続きの簡素化、標準入札書類の推奨などによる改善を今後検討していきます。

[ご意見]

貸付実行手続きの改善、迅速化、簡素化をお願いしたい。また、貸付実行方式の適用パターンを見直してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

貸付実行の手続きは、借款契約(L/A)の基本約定(GTC)にも定められており、円借款資金の支払の適正性を確保する観点から必要とされるものです。貸付実行手続きについては、借款対象として適格な資機材の購入、役務の供与に対する対価として支払われていることを確認するため、証憑書類のチェックなどに時間を要する場合がありますが、今後、当行による確認事項の明確化などによりその迅速化に努めます。また、借入人向けセミナーを行なうなど、適切な貸付実行方式の選択に努めています。

[ご意見]

貸付実行要請の電子化をお願いしたい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

貸付実行手続の電子化については、ニーズや情報セキュリティー等の技術的課題も踏まえつつ、今後検討していきます。

[ご意見]

スコープ変更、代替プロジェクト受入等資金使途変更の要望に応えて柔軟に対応してほしい。(円借款の借入国政府、事業実施機関の方々)

[当行の対応]

事業効果発現の観点から、スコープ変更等については妥当性の高い場合はこれまでも対応してきたものです。より根本的な、代替プロジェクト等の資金使途変更につきましては、そもそもの必要性や、当初事業計画の扱いについて十分に検討した上で、日本政府とも協議の上、対応することとなります。

[ご意見]

有償資金協力促進調査(SAF)の調査方法について事業実施機関との事前協議を行ってほしい。(SAF参加のコンサルタントの方々)

[当行の対応]

これまでも有償資金協力促進調査(SAF)については、駐在員事務所等を通じた事業実施機関との協議を経て、その必要性を検討の上で実施されています。これに加えて、SAFの実施前に調査内容について協議を行うTORミッションを本店より派遣しておりますが、今後更なるコミュニケーションの改善を検討しております。

以上