第2回利用者アンケート結果を踏まえた業務の改善について

海外経済協力業務に関する利用者アンケートでは、円借款の利用者である借入国政府・事業実施機関(110機関)、SAF参加コンサルタント及び提案型調査・発掘型案件形成調査実施の方々(15機関)、円借款での連携実績のある日本の地方自治体、大学及びNGOの方々などにアンケートを行い、124件のご回答を頂きました。アンケートによって皆様から寄せられたご意見・ご要望を踏まえ、円借款業務の改善に努めて参りたいと思います。具体的に寄せられた ご質問やご要望に対するお答えは、以下をご覧下さい。

なお、当行の「海外経済協力業務」につきましては、2008年10月より独立行政法人国際協力機構(JICA)に承継されることとなりました。新JICAの組織・制度設計の検討に当たりましては、皆様から頂きました貴重なご意見も踏まえた上で取り組む所存でございます。

1.寄せられたご意見にもとづき、改善を行ったもの、もしくは既に措置が講じられているもの

[ご意見]
環境配慮のための技術的支援も円借款融資の支出適格項目として考慮されるべきである。(2件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]

環境配慮を含め、当行の知的協力・技術協力としては、以下のような諸施策を実施しています。今後ともこのような取り組みを強化していきたいと考えています。

  • 制度改革や事業実施機関/地方自治体能力向上等ソフト支援を含んだ円借款のコンサルティング・サービス及び有償資金協力促進調査(SAF)の積極的実施
  • JICAとの連携による専門家の派遣や円借款関連セミナーの実施
  • 円借款業務の事後評価セミナーによる評価方法や教訓のフィードバック
  • 案件完了報告書(PCR)の作成支援
  • 開発金融研究所による開発途上国の諸課題に関する研究及び開発政策の改善への知的支援、及びそれにかかる国際会議・シンポジウムの開催
[ご意見]
円借款の案件発掘・形成段階においても、借入国と十分な協議を実施すべきである。(3件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
開発援助事業において、借入国の意思・オーナーシップは最も重要と理解しています。ご指摘を踏まえ、借入国との協議を通じ案件発掘・形成段階の業務の質をさらに向上させていく所存です。
[ご意見]
借入国の関係政府機関の職員に対するJBICによる債務管理、貸付実行手続き、プロジェクト進捗監理、プロジェクト評価に関する研修を充実させるべきである。また、研修の効果が出やすいよう、研修実施のタイミングにも配慮すべき。(15件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
「公的資金協力セミナー」等の各種セミナーをJICAと連携して毎年実施している他、借入国のご要望に応え「円借款調達・貸付実行セミナー」等の現地セミナーを行っています。また研修のタイミングについても前広に案内するように努めております。
[ご意見]
JBICは借入国の関係政府機関の職員にとってわかりやすい手引きや簡単な参考情報を載せた標準書類を作成すべきである。(2件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]

円借款業務の諸手続きに関する手続きや参考情報は、入札に関するガイドラインや標準入札書類等を含め、当行ホームページ上に借入国関係者にも参照して頂き易いように公開しております。また、利便性を向上させるため英語の正本以外に仏語・西語等の各国語訳版も参考として公表し、また『プラント・機器供給及び据付に係る標準入札書類』『円借款事業におけるコンサルタント雇用の評価手順ガイド』等の書類も掲載しておりますので活用してください。

[ご意見]
「地球規模問題」に対応する事業への一層の融資拡大をお願いしたい。(多数:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
当行の「海外経済協力業務実施方針」の重点分野には「地球規模問題への支援」が含まれており、環境・防災・平和構築・保健などの分野において、国際的な取り組みに参加するなど、引き続き積極的に取り組んで行きたいと考えています。
[ご意見]
外国政府借款を利用するプロジェクトであっても、申請・批准・実施など各段階で国内の管理システムと手続が既に存在するため、それらと調和した手続きとなるよう考慮頂きたい。(4件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
国際的な手続き調和化の流れを踏まえ、当行は借入国の既存の制度や、他ドナーのシステムとの間の調和化を図っています。調達の分野では借入国の公共調達改革を貧困削減支援借款(PRSC)の供与や標準国内入札書類の作成への関与等を通じて支援しています。
[ご意見]
JBICの各種手続を簡素化して欲しい。具体的にはプロジェクトの発掘・形成・承諾および調達のプロセスには改善の余地がある。L/Aによって提出が義務付けられているプログレスレポートや事後完成報告書(PCR)フォーム等にも改善の余地がある。(8件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
当行では平成17年度より、円借款事業の審査〜実施監理〜事業完成までのプロジェクト・サイクルにおいて使用される各種フォームの統一化を図り、業務の効率性向上、借入国の事務負担の軽減を図っています。ご指摘を踏まえ、各種手続きやフォームについては、今後とも不断の改善を行い、日本の政府機関として求められる説明責任に配慮しつつ、できるだけ効率性、迅速性を向上させたいと考えています。
[ご意見]
JBICは円滑な事業実施を促す方策として、例えばコンサルティング・サービスの調達など、借款調印前の事前調達を許可すべきである。(1件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
当行は借入国・実施機関がガイドラインに準拠して手続きを行って頂くことを前提に借款契約調印前の調達手続きの実施等をDAC援助透明性合意等の国際ルールの枠内で認めています。但し、借款契約調印前の当行による同意は、当該プロジェクトへの借款供与を当行に義務付けるものではなく、借入国・実施機関の自己リスクにおいて行って頂くものである点ご諒解ください。
[ご意見]
SAF調査のプロポーザル提出時に求められる資料について、たとえば評価対象外の業務従事者は履歴書の様式を簡素化する等、簡素化の方向で改善を図って欲しい。(3件:SAF参加のコンサルタント、提案型調査・発掘型案件形成調査実施の方々)(3件:地方自治体・大学の方々)
[当行の対応]
評価対象外の業務従事予定者の履歴書様式につきましては、ご指摘に基づきすでに簡素化を図っております。プロポーザル提出時の他の資料につきましても、簡素化の余地がないか検討を続けてまいりたいと思います。
[ご意見]
借入国の円借款事業の実施機関がショートリストを作成する際、JBICにコンサルタントの推奨を求めるケースがあるが、JBICがコンサルタントを推奨する基準が不明瞭である。コンサルタントを推奨する際の基準について説明してほしい。(1件:SAF参加のコンサルタント、提案型調査・発掘型案件形成調査実施の方々)(1件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
コンサルタント選定は、コンサルタント雇用ガイドラインに従って、原則ショートリスト方式(4〜5社をショートリストし、プロポーザルの内容によって評価を行うもの)によって、借入人が行っています。その過程で、事業実施機関がショートリストを作成する際に十分な情報を保有していない場合には、事業実施機関の求めに応じて、JBICがショートリスト作成のためにコンサルタントについての参考情報を提供することがあります(推奨ではありません)。この情報提供は、これまでの円借款事業での参画経験等を勘案しつつ行われます。

2.現行制度を維持することが必要なもの

[ご意見]
JBICの円借款融資対象は、電力、道路、鉄道、港湾、都市交通等のような、ハードのインフラセクターにより集中すべき。(1件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
日本政府の「ODA大綱」や「ODA中期政策」を踏まえ策定している当行の「海外経済協力業務実施方針」においては、(1)貧困削減への支援、(2)持続的成長に向けた基盤整備、(3)地球的規模問題・平和構築への支援、(4)人材育成への支援を重点分野としています。円借款では、開発途上国のニーズの高い経済・社会インフラ整備を中核としつつも、最近の開発ニーズの多様化を踏まえた取り組みが求められており、借入国等との対話を通じて適切な協力を行っていきます。
[ご意見]
借入国の円借款事業実施機関も、SAFを実施する際に調査コンサルタントの選定のプロセスに関与してよいのではないか。(1件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
SAFは当行業務を補完するための調査です。コンサルタントの選定にあたっては、提案書(プロポーザル)を公募し、その優劣を評価し、契約の相手方を選定するプロポーザル方式を採用し、選定プロセスの透明性・公平性を確保しつつ、調査実施能力の高いコンサルタントの選定に努めています。
[ご意見]
円借款事業の調達においては、現地企業が大規模な契約を受注できる機会がより多く与えられるよう配慮すべきである。(1件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
JBICの調達ガイドラインにおいては、経済性、効率性、調達手続きにおける透明性及び調達契約に対する入札適格者間の非差別性を原則としており、特定の国籍のコントラクターを優遇することはありません。大規模・複雑な契約についても、十分な技術的・財務的能力を有することが証明されれば、国籍にかかわらず入札に参加して頂けます。
[ご意見]
JBICと大学とが連携して行う業務に関し、報告書に係る著作権の放棄等、大学が参画しやすい環境整備の検討が必要。(1件:地方自治体・大学の方々)
[当行の対応]
JBICの委託調査は開発途上国の政府機関の協力を得つつ実施されますが、調査の過程で入手した情報には先方政府が公開を望まない情報等が含まれていることもあり、大学を含む受託団体には調査過程で知りえた情報を第三者に漏洩することの禁止(守秘義務)、及び調査成果物の著作権をJBICに譲渡して頂いています。他方、大学が有する教育、研究等の社会的役割に基づく活動による情報の公開や調査成果物の二次的利用については、その要望を踏まえ柔軟に対応してきておりますのでご相談下さい。
[ご意見]
「公示」情報をメール配信サービスでも提供して欲しい。大学を対象とする公示内容については、連携している大学には前広に情報を提供してほしい。(2件:地方自治体・大学の方々)
[当行の対応]
公示情報はホームページ上および当行本店1階の掲示板にて一定期間公開しています。広く一般の方々にお知らせするという性格上、特定の方に向けた情報発信は想定しておりません。また、特定の方に対して事前に公示内容に関する情報を提供することは、公平性を欠く不適正な行為にあたるため不可能である点、ご理解願います。最新の公示情報につきましては、お手数ではございますが、ホームページ等でご確認願います。
[ご意見]
SAF等調査のTOR設定を適切かつ明確に行ってほしい。また、調査開始時に想定されていない業務が発生しないよう適切に管理して欲しい。(多数:SAF参加のコンサルタント、提案型調査・発掘型案件形成調査実施の方々)(1件:地方自治体・大学の方々)
[当行の対応]
SAFは課題解決型の調査であることが多く、調査の範囲・深度等について公示段階では詳細に指定せずにコンサルタントからの提案を求める方法をとっております。契約交渉の段階で調査の進め方等について十分協議し、委託先と当行が同一の理解の下に調査を実施することが重要と考えております。
[ご意見]
提案型、発掘型案件形成調査を一本化し、「円借款案件形成に資する調査」と位置づけ、(1)直接的に案件形成に寄与するもの(2)大学・NGOの経験・知見を付加価値として円借款案件にインプットするものに分けてプロポーザルを評価してはどうか。(1件:SAF参加のコンサルタント、提案型調査・発掘型案件形成調査実施の方々)
[当行の対応]
提案型調査と発掘型案件形成調査は、目的が異なるため別の調査スキームとしておりますが、プロポーザル評価におきましては、ご指摘いただきました案件形成への寄与度や大学・NGOの経験・知見による付加価値についても勘案しております。

3.寄せられたご意見にもとづき、今後どのような改善を行えるか検討させて頂くもの

[ご意見]
円借款の融資条件は、融資通貨がハード・カレンシーであることから、借入人に必ずしも優遇されたものではない。政府では賄えない大規模開発事業が要請対象になるが、総事業費の全体がカバーされず、政府は残りのシェアを負担しなければならないため、融資比率の拡大を検討して欲しい。(2件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
供与条件の柔軟化、融資適格部分の拡大については、借入国のニーズ、オーナーシップの重要性を勘案しながら、日本政府とともに不断の見直しを行ってまいります。
[ご意見]
日本政府へ円借款事業を要請してから借款契約調印まで、他の二国間・国際機関と比較して、時間がかかる。具体的には、1)アプレイザルミッションと事前通報の間の期間短縮、2)E/N交渉に係る時間短縮を求めたい。(18件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
円借款事業の要請から借款契約締結に至るまでの手続き迅速化・業務の効率化に向け、日本政府では、標準処理期間を設定しています。相手国政府の対応に起因する場合を除き、各プロセスにおいて標準処理期間から一定の期間遅延している案件については、日本政府および当行との間でフォローアップ会議を開催しています。手続きの一層の迅速化につきましては、円借款の利便性向上の観点より、現在も日本政府と継続協議中であり、一層努力していきたいと考えております。
[ご意見]
円借款事業の実施段階において、JBICの同意手続きは複雑であり時間がかかる。スムーズなプロジェクト実施のため、手続きの簡素化を図るべき。(15件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
当行による調達関連の同意手続きは、事業実施主体である借入国政府・実施機関の皆様がガイドラインに基づき適正な調達を行って頂いていることを確認する重要な手続きと考えております。但し、小規模な調達については大幅に簡素化するとともに大規模な調達についても標準入札書類等の普及を図り、駐在員事務所への権限委譲、外部委託の活用により確認・同意の迅速化に努めてまいります。
[ご意見]
借款資金の使途について、借入国側のオーナーシップを拡大すべきであり、必要性や可能性によって、借款資金の使途は柔軟に調整可能なものとすべき。具体的には、借款限度額の未使用分について、追加調達や新たな開発事業に活用可能となるよう検討してほしい。また、借款の非適格支出項目(住民移転費、土地収用費)をカバーする資金支援を検討してほしい。(6件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
供与条件の柔軟化、融資適格部分の拡大については、借入国のニーズ、オーナーシップの重要性を勘案しながら、日本政府とともに不断の見直しを行っていく所存です。
[ご意見]
円貨の海外での為替リスクは非常に大きく、プロジェクトの進捗にまで影響した。JBICは為替リスクを軽減するための措置を講じるべき。(1件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
為替リスクの軽減策については、日本政府とも相談しつつ、引き続き検討していく所存です。
[ご意見]
提案型調査・発掘型調査に関する委託先の選定手続きについては、プロポーザル提出から契約までの期間が長すぎるのではないか。手続き期間の適正化を図るべきである。(9件:地方自治体・大学の方々)(7件:SAF参加のコンサルタント、提案型調査・発掘型案件形成調査実施の方々)
[当行の対応]
提案型調査・発掘型案件形成調査は年2回公示しておりますが、毎回多数のご応募を頂いております。ご提出頂いたプロポーザルにつきましては、行内で慎重に検討を行う一方、プロポーザル提出後1ヶ月を目安に、プロポーザルをご提出頂いたすべての団体に対して審査結果をお知らせするようにしております。なお、採択案件につきましては、開発途上国の調査受入機関から契約前に了解を取り付ける必要がありますが、この調整に時間を要する場合があります。当行内の手続の改善を通じて契約までの期間の短縮を図ってきておりますが、今後とも改善努力を続けてまいりたいと思います。
[ご意見]
JBICの関連業務において、NGOが協力できる機会を積極的に増加して欲しい。JICAとの統合後にも同様の機会が維持向上されることを期待している。(5件:NGOの方々)
[当行の対応]
当行の「海外経済協力業務実施方針」では、配慮すべき事項の一つとして、開発パートナーシップを深化させるべく、NGO・大学・地方自治体等との連携強化を重視しています。今後とも、有償資金協力促進調査(SAF)等を通じ、NGO・大学・地方自治体の経験・知見を積極的に活用していく所存です。また、2008年度中に誕生予定の新JICAにおいても、NGO・大学・地方自治体等との柔軟な連携・協力が可能となるような組織作りを行っていきます。
[ご意見]
JBICの円借款案件担当者は現地の事情やプロジェクト実施に必要な手続きを熟知するだけでなく、現地実施機関等との十分かつ効率的なコミュニケーションを確保し、迅速かつ的確な対応を心がけて欲しい。(多数:借入国政府・事業実施機関の方々)(2件:NGOの方々)
[当行の対応]
本店、駐在員事務所ともに、迅速かつ的確な対応が可能となるよう、コミュニケーションのさらなる充実に努めて参ります。
[ご意見]
現地レベルでのJBICの業務を拡充するために、駐在員事務所の増設、駐在員事務所への一層の権限委譲、日本人職員およびナショナルスタッフの増員を通じた事務所機能の強化を図るべき。(7件:借入国政府・事業実施機関の方々)
[当行の対応]
当行では、これまでアジア地域を中心に、駐在員事務所への権限委譲を行い、現地機能の強化に努めておりますが、中東地域での業務拡充に向け、2006年11月にはヨルダン王国にアンマン事務所を開設するなど、一層の現地機能の強化に努めております。権限委譲の促進やスタッフの増員については、予算・定員の制約を踏まえつつ引き続き検討致します。
[ご意見]
JBICの委託調査に関する現行の精算手続きは煩雑であるため、精算報告書の形式を含め、簡素化してほしい。(1件:地方自治体・大学の方々)(4件:NGOの方々)(1件:SAF参加のコンサルタント、提案型調査・発掘型案件形成調査実施の方々)
[当行の対応]
精算手続の簡素化については、委託先・当行双方の事務負担の軽減につながるところ、他機関の事例を参考にしつつ、検討を進めていきたいと考えております。

以上