- トップページ
- 事業について
- 事業ごとの取り組み
- 民間連携事業
- 途上国の課題/ビジネスニーズを知る
- 分野別
- 課題情報の発信(都市・地域開発)
1. 途上国の課題
途上国では都市化が進み、第3次産業の発展と新たな雇用の創出によって、人々の暮らしは豊かになっています。一方で急激な都市化は、自然環境や居住環境の劣化、交通渋滞、災害リスクの増大、住民の格差拡大による社会の軋轢や治安の悪化など、多くの複合的な問題も引き起こしています。
こうした複合化する都市問題のうち、特に「スマートシティ開発」、「住環境の改善」について、企業が改善しうる具体的課題を整理しました。
開発途上国の都市・地域開発に関する課題の概要
※環境や交通、災害など、都市・地域開発に関わるその他の課題の概要はこちらを参照
2. JICAの事業戦略(グローバルアジェンダ)
JICAは、複合的な都市問題に対応するための事業戦略を掲げ、事業を実施しています。具体的には、産官学の多様な関係者と協働した「都市マネジメント」能力の強化や、地理空間情報の整備・活用のための支援などを行っています。
都市のさまざまな課題に対応するためには、分野を超えて都市全体を管理し、発展を支える体制を整えていく必要があります。JICAは、途上国の都市行政機関とビジョンを共有し、都市全体の発展目標を掲げて政策や計画の策定を支援するとともに、住民コミュニティ、民間企業、大学・研究機関など幅広い関係者ともネットワークを構築し、協働することで、都市・地域の望ましいあり方や目指すべき方向を示し、優良な都市空間の創出を支援しています。
【参考】JICAグローバルアジェンダ 「都市・地域開発」
https://www.jica.go.jp/activities/issues/urban/index.html
※「運輸交通」「資源・エネルギー」「環境管理」「防災・復興を通じた災害リスク削減」「気候変動」「持続可能な水資源の確保と水供給」「保健医療」など、都市・地域開発に関連するその他のグローバルアジェンダはこちら
3. サブセクター説明
上記の課題をもとに、都市・地域開発分野におけるビジネスニーズや事業展開国を検討する際のポイント、企業の展開事例などを、「スマートシティ開発」、「住環境の改善」のサブセクターに分類して説明します。
なお、都市・地域開発に関わるその他の課題については、こちらを参照ください。
日本の製品・サービスが求められるサブセクター
スマートシティ開発
- 現状と課題
- 交通渋滞の深刻化
- 交通事故死傷者の増加
- 温室効果ガス排出
- 設備の経年劣化による事故の増加
- 排気ガス・騒音の悪化
- 災害対策のためのインフラや技術の欠如
- エネルギーの不足
- 現地ニーズ
- 都市空間を効率的に把握・分析するデジタル技術
- 人流解析技術による都市開発マスタープランの評価
- 災害予防、予測、検知、周知技術
- 省エネ技術
対象国選定のポイント
【ビジネス環境】×【JICAの知見やネットワーク】をマクロで把握することで適切な進出先を検討することができます。
ビジネス環境(例:PESTフレームワークで分析する場合)
P: Politics - 政府は都市開発マスタープランへの外資協力に積極的か?
E: Economy -
公共機関または民間(保険会社等)いずれの購買力が高いか?
S: Society - 市民生活・経済活動向上のため人流データを活用した都市開発への意欲があるか?
T: Technology - 新しいデータ活用技術に対する規制や準拠法が障壁になった事例はないか?
JICAの知見やネットワーク
本サブセクターに関するJICA Biz採択案件やその他のODA事業の過去案件からこれまでに得られたJICAの知見やネットワークを参照できる可能性があります。
例:検索ワード「空間」「都市開発」等
【参考】民間連携事業 採択事業検索(空間、都市開発)
【参考】ODA見える化サイト
【参考】スマートシティアプローチパンフレット
想定される民間技術(例)
- ソフト技術
- 人流マッピングデータ解析
- 道路空間3D画像データ解析
※関連する他分野のサブセクター説明もご参照ください
→エネルギー
→災害対策(準備中)
道路の交通状況に関する人流データとデータ分析によるコンサルティング
ベトナムは、恒常的な渋滞、観光交通の増加、バイク交通への依存、排気ガスや騒音等の都市問題を抱えている。ソフトバンク株式会社、株式会社Agoop、日本工営株式会社が開発する人流マッピングアプリにより、空港、市街地、重点観光地域を繋ぐ道路の交通状況を可視化するとともに、データ分析によるコンサルティングを提供することで、ダナン市・クァンナム省の都市交通・観光開発に貢献することを目指す。
日本の製品・サービスが求められるサブセクター
住環境の改善
- 現状と課題
- 安全で安価な住宅の不足
- 建築技術者および育成システムの不足
- ごみ処理施設の不足・容量超過
- 廃棄物資源化技術の不足
- 安全な飲料水へのアクセス欠如
- 現地ニーズ
- 安全且つ廉価な住宅建設技術
- 建築技術者育成プログラム
- 都市ゴミの廃棄物処技術
- 都市の美化支援システム
対象国選定のポイント
【ビジネス環境】×【JICAの知見やネットワーク】をマクロで把握することで適切な進出先を検討することができます。
ビジネス環境(例:PESTフレームワークで分析する場合)
P: Politics - 政府は都市開発を優先課題として認識し予算を割いているか?
E: Economy - ドナー機関等の支援や官民基金などの具体的な住居設計・施工に向けた資金確保が見込まれているか?
S: Society - 都市貧困層の増加等、都市の拡大に対して市民の住居不足が課題となっているか?
T: Technology - 日本の住宅施工技術は当該国の気候や建築資材等の諸条件との整合性があり、普及・技術移転する余地はあるか?
JICAの知見やネットワーク
本サブセクターに関するJICA Biz採択案件やその他のODA事業の過去案件からこれまでに得られたJICAの知見やネットワークを参照できる可能性があります。
例:検索ワード「住」「ごみ」等
【参考】民間連携事業 採択事業検索(住、ごみ)
【参考】ODA見える化サイト
想定される民間技術(例)
- ハード技術
- 住宅建築(木造、プレハブ等)
- 金属屋根
- 省エネ型廉価住宅建設
- ソフト技術
- 建築技術者育成
4. ビジネス展開上のTIPS
現地ニーズとの合致・創出
現地のニーズを的確につかみ、対象国や地域を設定しましょう。
都市・地域開発分野は対象領域が広いため、関連する社会課題が広範で、現地カウンターパート機関も多岐に渡っています。また、温暖化などの環境問題の影響等により、現地ニーズが変化するケースもあります。現地ニーズの把握をしっかりと行い、ニーズのある対象国・地域を探すことが重要です。
現地政府は都市が抱える課題を認識しつつも、急速に進む都市化に対して対策の検討に前向きな姿勢が見られず、実施に至っていないケースがあります。国がマスタープランを決定すれば、官民が役割分担を行って円滑に都市開発が実行されることが多い日本とは異なり、途上国では、政策や計画があっても予算不足により都市開発が進まず、国際機関等の資金提供によってようやく計画実行の目途が立つというケースも多くあります。例え計画があっても、途上国における都市開発は、非常に長期的な事業となる可能性があることに留意しましょう。
ターゲットごとの購買力
ニーズと価格が合致する最適な販売先を探しましょう。
都市開発分野には様々なプレイヤーがいるため、ニーズと価格が合致する最適な販売先を探すことが重要です。
公共クライアントの場合:都市開発は国・地方それぞれが予算を持つため、アプローチ先が多いことが販路開拓におけるメリットになります。ただし、特定技術が公共事業での取り扱いが認められるまでには長い期間がかかります。短期的には、JICA等の援助機関が実施する事業の中でパイロットプロジェクトを実施し、その成果を公共クライアントに継続的に見せるという方法も有効です。
民間クライアントの場合:民間開発が盛んな地域もあり、当初は想定しなかった民間需要を掘り起こせる場合もあります(例:交通事故減少を目的として、保険会社が都市空間データの購買意欲を持つ場合等)。短期的には、公共クライアントよりも民間企業の方が、より成約確度が高い傾向があります。
競合との差別化・独自化
現地調査を通じて、競合に対する優位性や製品の普及可能性を判断しましょう。
都市データは国の根幹情報であるため、国営または現地企業を優先する国もあります。その場合は、現地企業との合弁事業による進出、または、現地企業との委託関係の構築等、進出戦略を柔軟に検討する必要があります。
例:データ保護法を検討中の国も多く、データを扱う事業の場合は、その法規制に対応したベンダー契約や現地データサーバーの設置等が必要となり、費用と工数がかかる場合もあります。
輸入製品を含む競合企業に対する優位性(価格・効果)を、現地調査を通じて実証することで、その技術や商品が実際に普及可能かを判断することが重要です。
5. 統計情報等
1)主な統計の使い方
都市・地域開発分野の基礎的な情報の多くは日本語での検索が可能ですが、最新の統計データや業界レポートを探す際には、国際機関や研究機関、業界団体のウェブサイトを活用しましょう。
例えば、世界銀行都市開発部門のウェブサイトでは途上国の都市開発分野の課題や動向を把握可能です。また、世界銀行が過去に実施した事業の概要や市場トレンドに関するレポート、各国別のデータを閲覧できます。例として、https://www.worldbank.org/en/topic/urbandevelopmentのホーム画面にあるDataを見ると、都市人口データを参照でき、さらに検索窓に特定の国名を入力すると、当該国の都市人口の年間推移が確認できます。他にも検索窓に関連するキーワードを打ち込むことで様々なデータを調べることができます。
なお、国ごとの政策はGoogle等の検索エンジンでキーワード検索する方法が有効です。
キーワード:「国名/都市名」 ×「Policy/roadmap/masterplan」 「Biomass/ Urban Planning/ Smart city/ (技術名)」等
2)その他の統計
基礎情報
-
外務省各国情報
各国の基礎的な政治・経済・日本との関係性を確認できる
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html -
JETRO貿易・投資情報
国・地域別、目的別、産業別に海外市場情報を確認できる
https://www.jetro.go.jp/ -
国土交通省
各国の都市開発に関する事業や政策のレポートが確認できる
https://www.mlit.go.jp/toshi/index.html -
世界銀行都市開発部門
途上国の都市開発分野の課題をマクロで把握可能。また、世界銀行が過去に実施した事業の概要や市場トレンドに関するレポート・データを確認できる
https://www.worldbank.org/en/topic/urbandevelopment -
世界銀行オープンデータ
各国別の年次経済データ、都市開発データ、またその比較ができ、ダウンロードも可能
https://data.worldbank.org/ -
国際連合オープンデータ
各国別の年次経済データ、都市開発データ、またその比較ができ、ダウンロードも可能
https://data.un.org/
専門情報
-
公益社団法人 日本都市計画学会
都市計画及び地方計画に関する科学技術の学会を運営し、刊行物も発行する
https://www.cpij.or.jp/ -
JICA報告書(スマートシティ開発)
スマートシティアプローチの途上国への適用性についての調査レポート
https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12342507.pdf -
JICA報告書(スマートシティ開発)
サブサハラ・アフリカ地域における各国のスマートシティ開発およびその取組みに関する情報や、先進事例を参考にしたスマートシティの適用可能性・アプローチについての調査結果を確認できる
https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12385639.pdf
scroll