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課題情報の発信(運輸交通)

1. 途上国の課題

運輸交通分野の開発は、途上国にとって、経済成長、生活の質の向上、地域間格差の是正など、多くの問題解決や長期的な発展に寄与します。運輸交通には、道路、鉄道、空港、港湾、都市交通など様々なインフラが含まれますが、ここでは開発段階に沿って課題を3つに分類し、企業が改善しうる具体課題を整理しました。

ベーシックニーズの充足

1.市民の生活や経済活動に必要となるインフラの欠如
2.インフラ整備後の、不十分な修繕や補修非効率な運営、初期投資抑制を重視した結果としてのライフサイクルコスト増大
3.都市部における公共交通の欠如に起因する渋滞発生、人命の危険、環境負荷

より高度な社会課題解決へ

開発途上国の運輸交通に関する課題の概要

課題01:インフラの欠如

課題02:既存インフラの老朽化

課題03:都市公共交通がない

2. JICAの事業戦略(グローバルアジェンダ)

上記の3つの課題に取り組むJICAの事業戦略は、それぞれインフラ整備、インフラ・メンテナンス、モビリティに分類できます。また日本の優れた技術の応用可能なソリューションとして3S(Smart,Sustainability,Safety)を掲げています。

JICAの事業戦略と日本の優れた技術の応用可能なソリューション3S(Smart、Sustainability、Safety)

日本の製品・サービスが求められるサブセクター


【参考】JICAグローバルアジェンダ 「運輸交通」
https://www.jica.go.jp/activities/issues/transport/index.html

3. サブセクター説明

上記の課題をもとに、運輸交通分野におけるビジネスニーズや事業展開国を検討する際のポイント、企業の展開事例などを、「インフラの整備」「インフラ・メンテナンス」「モビリティ」のサブセクターに分類して説明します。

日本の製品・サービスが求められるサブセクター

インフラの整備

  • 現状と課題
  • 輸出入・輸送コスト増大
  • 道路容量不足による渋滞
  • 現地ニーズ
  • 質・効率のよいインフラ構築資材・部品
  • デジタル整備技術

対象国選定のポイント

【ビジネス環境】×【JICAの知見やネットワーク】をマクロで把握することで適切な進出先を検討することができます。

ビジネス環境(例:PESTフレームワークで分析する場合)
P: Politics - 国家開発計画で高速道路整備、国道整備や高速鉄道整備の促進が明示されているか?
E: Economy - 他国政府や企業によるインフラ投資はどのような状況か?
S: Society - 基礎インフラ欠如が市民生活にどれほど影響しているか?
T: Technology - 地震や軟弱地盤に対応した技術が導入されているか?

JICAの知見やネットワーク
本サブセクターに関するJICA Biz採択案件やその他のODA事業の過去案件からこれまでに得られたJICAの知見やネットワークを参照できる可能性があります。
例:検索ワード「インフラ」等
【参考】民間連携事業 採択事業検索 インフラ
【参考】ODA見える化サイト

想定される民間技術(例)

  • ハード技術
  • 廃棄物を活用した舗装技術
  • 長寿命/高品質素材によるインフラ構築
  • 鉄道車両用部品
  • ソフト技術
  • ドローン・画像解析技術によるインフラ整備計画策定
  • 超音波による構造物の測定ソフト

アスファルトコンクリート廃棄物のリサイクル技術

アスファルトコンクリート廃棄物のリサイクル技術
株式会社菅原工業のアスファルトコンクリート廃棄物を活用した循環型舗装技術により、舗装コストの削減、段差のない道路建設、維持管理コストの削減を実現することで、道路インフラ整備を促進し、インドネシアの地方開発と地域間のコネクティビティ改善に貢献する。

日本の製品・サービスが求められるサブセクター

インフラ・メンテナンス

  • 現状と課題
  • 修繕・補修が不十分
  • 非効率な運営
  • ライフサイクルコストの増大
  • 現地ニーズ
  • コスト効率のよいインフラ・メンテナンス資材、技術
  • デジタル技術を駆使したメンテナンス管理

対象国選定のポイント

【ビジネス環境】×【JICAの知見やネットワーク】をマクロで把握することで適切な進出先を検討することができます。

ビジネス環境(例:PESTフレームワークで分析する場合)
P: Politics - 政府の道路敷設マスタープランでは、道路メンテナンスをどのように捉えているか?
E: Economy - 国際幹線道路整備などの地域需要はあるか?
S: Society - 頻繁に破損する道路は市民生活にどれほど影響しているか?
T: Technology - 道路維持管理の実務はシステムを活用し効率的に行われているか?

JICAの知見やネットワーク
本サブセクターに関するJICA Biz採択案件やその他のODA事業の過去案件からこれまでに得られたJICAの知見やネットワークを参照できる可能性があります。
例:検索ワード「メンテナンス」「長寿命」等
【参考】民間連携事業 採択事業検索 メンテナンス )(長寿命
【参考】ODA見える化サイト

想定される民間技術(例)

  • ハード技術
  • ドローンによるデータ取得
  • 長寿命/高品質素材によるインフラ補強
  • 環境負荷を軽減したコンクリート製品
  • 超音波による掘削技術
  • ソフト技術
  • AIによるインフラ計測システム
  • 光学自動計測工システム
  • 映像解析システム
  • モバイルマッピングによる道路維持管理

高耐久な路面補修工法

高耐久な路面補修工法
東京ベルト株式会社の高品質な弾性加熱合材を使用した路面補修工法をベトナムで普及させることで、道路及び橋梁路面の早期劣化問題を改善し、補修工事頻度の低下、ライフサイクルコストの低減と、交通安全性の向上への貢献を目指す。

日本の製品・サービスが求められるサブセクター

モビリティ

  • 現状と課題
  • マイカー利用による渋滞発生
  • 交通事故、死傷者数の増加
  • 排ガスによる大気汚染・CO2排出
  • 現地ニーズ
  • 都市交通マスタープラン
  • 都市交通専門人材
  • 都市交通システム
  • 環境配慮車両
  • ラストワンマイル輸送

対象国選定のポイント

【ビジネス環境】×【JICAの知見やネットワーク】をマクロで把握することで適切な進出先を検討することができます。

ビジネス環境(例:PESTフレームワークで分析する場合)
P: Politics - 政府のインフラ開発に係る投資促進政策・外資企業規制はどうなっているか?
E: Economy - モビリティサービスを需要する人口、経済力(1人あたりGDP等)はあるか?
S: Society - 市民は交通渋滞に困っているか?
T: Technology - 自社技術を導入できるICTインフラはあるか?

JICAの知見やネットワーク
本サブセクターに関するJICA Biz採択案件やその他のODA事業の過去案件からこれまでに得られたJICAの知見やネットワークを参照できる可能性があります。
例:検索ワード「ドローン」等
【参考】民間連携事業 採択事業検索 ドローン
【参考】ODA見える化サイト

想定される民間技術(例)

  • ハード技術
  • 信号機等の制御システム
  • 電気自動車
  • 自動運転車
  • 自然エネルギーによる車両充電ステーション
  • ソフト技術
  • 都市交通マスタープランの策定
  • シェアリングサービス(ライドシェア、カーシェア)
  • ラストワンマイル輸送(デリバリー、ロジスティクス)
  • ビッグデータ取得・分析
  • 交通モニタリング

小型電気自動車、太陽光蓄充電関連ノウハウ

小型電気自動車、太陽光蓄充電関連ノウハウ
T-PLAN株式会社が、「姫島モデル」(太陽光蓄充電システムと小型電気自動車の併用によるCO2排出ゼロの交通手段を観光・交通分野に用いたエコツーリズムノウハウ)等をパラオに導入することで、持続可能な観光開発と環境保全の両立への貢献を目指す。

4. ビジネス展開上のTIPS

現地ニーズとの合致・創出

現地の目線で自社製品・サービスの優位性を調査しましょう。

途上国では、現地の安価な人件費で成り立っている場合、既存の手法で費用対効果がよいという場合があります。自社の商品は代替手段として需要があるか、を検証することが重要です。
また、セミナー等の活動によって長期視点で自社製品・サービスの価値を高めることもひとつの手段です。

ターゲットごとの購買力

現地事情やクライアントの経済力を確認しておきましょう。

中央政府や地方自治体、公共団体がターゲットであれば、中長期的な予算計画を把握し、その予算に自社製品が含まれ得るか、を確認することが重要です。
民間事業者がターゲットであれば、自社商品を購買できる程度の経済レベルであることを確認することが重要です(一人当たりGDP等)。

競合との差別化・独自化

市場の動向を注視して、戦略を検討しましょう。

他国企業の進出状況を把握し、類似技術がターゲット市場で安価調達されている可能性を把握することが重要です。
例:市場成長性がある場合、すでに中国企業が進出済みの可能性が高いです。その場合は、価格競争を回避し、差別化戦略を検討する必要があります。

5. 統計情報等

1)主な統計の使い方

運輸交通分野の基礎的な情報の多くは日本語での検索が可能です。
最新の統計データや業界レポートを探す際には、国際機関や研究機関、業界団体のウェブサイトを活用できます。

世界銀行 世界銀行のデータベースでは各国別の年次経済データ、インフラ、交通のデータ、またその比較ができ、ダウンロードも可能です。
検索エンジンに”Transport” “Infrastructure”等のワードを入力すると関連する指標やデータが表示されます。必要な国や年ごとにフィルターをかけることもできます。

なお、国ごとの政策はGoogle等の検索エンジンでキーワード検索する方法が有効です。
キーワード:「国名/都市名」 ×「Policy/roadmap/masterplan」 「Infrastructure/mobility」等

2)その他の統計

基礎情報

専門情報