jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

メキシコ ― 注目分野(水分野)

(最終更新:2026年3月)

乾燥地帯から熱帯まで多様な気候を持つメキシコでは、地域ごとに異なる水課題が存在しています。都市化や気候変動の影響で、地下水の過剰利用や洪水、漏水などの問題も深刻化しています。
こうした中、持続可能な水資源管理の構築は国家的な優先課題となっており、海外企業の技術力に大きな期待が寄せられています。日本の水分野の経験と技術は、メキシコの課題解決に貢献できる可能性を秘めています。

期待する技術・サービス

【上水】
・インフラ整備支援:老朽化した水道管、送配水網、ポンプの更新
・無収水対策:漏水検知・修復技術・サービス向上

下水】
・処理能力強化:排水処理施設の拡充・更新
・汚泥負荷削減:環境負荷低減型の処理技術導入
・再生水利用促進:農業・都市緑化への再利用技術の導入

洪水対策】
・予防的モニタリング支援:衛星・IoT技術を活用した地表面観測、リスクマップ
・洪水予測・警報システムの拡充:水量計の設置と予測・警報システムの運用

統合的水資源管理】
・地下水利用効率化:揚水量モニタリングおよび管理改善

主な課題と参入ポテンシャル

〈概要〉

メキシコは国土の広さと気候の多様性により、地域ごとに水資源の偏在が顕著です。北部、中央高原地域では慢性的な水不足が続いており、都市部では人口集中に伴う水需要の急増が課題となっています。一方、南部では降水量が多いものの、不十分なインフラ整備により水の有効活用が進んでいません。

こうした状況の中、気候変動による干ばつ、河川を含む水質汚染、地下水の過剰汲み上げなどにより、さらなる国家的な水資源管理の持続可能性が脅かされています。また、首都圏が位置するメキシコ盆地では地下水依存が深刻化しており、地盤沈下や水道インフラの老朽化が社会経済活動に影響を及ぼしています。

〈各課題と参入ポテンシャル〉

【上水】
メキシコ市では水道普及率98.6%と高水準ながら、地下水依存率が6割以上と高く、20世紀前半から続く地下水の過剰汲み上げによる地盤沈下が問題となっています。水道管網が整備された1970年代以降も地盤沈下は継続しており、沈下に伴う老朽化した地下管網の損傷が約20%に上る漏水問題に繋がるなど、上水道システムの機能低下が深刻な課題となっています。大量の水を使用する製造業への影響も大きく、本問題の解消は日本企業の製造拠点への裨益にも繋がります。

【下水】
メキシコ市の下水道普及率は99.2%と高いですが、処理水の品質や汚泥管理、排水処理の脆弱性が深刻な課題です。全国で下水の約60%が未処理(*1)であり、特に首都のメキシコ市においては汚泥処理施設が整っている下水処理場は6カ所のみで、殆ど汚泥処理がなされていない状態にあります。また周辺州では人口増加、都市化により発生する下水量に対して処理施設が追い付いていません。そのため一部では発生汚泥をそのまま下水管に放出しており、水質悪化による住民の生活環境の悪影響が深刻化しています。日系企業の下水処理、汚泥処理にかかる技術導入が期待されております。

【洪水対策】
降雨パターンの変動と激甚化がメキシコ全土で目立ってきており、特にメキシコ市首都圏は脆弱地盤の上に建設されている特性から、局所降雨量の増加と局所降雨に伴う地盤の脆弱化を原因とした、洪水と都市内(特に道路)の陥没現象が大きな課題となっています。
本課題は特に運輸交通の脆弱性を拡大させており、日系製造業の輸送体制にも影響を与えています。日本は洪水対策、地盤沈下対策の経験を有することから、具体的には、観測衛星を用いた地表面観測技術や都市内雨水排水対策等を通じた貢献が可能です。
2025年10月の豪雨災害では、ベラクルス、イダルゴ、プエブラ、ケレタロ、サン・ルイス・ポトシの5州で大規模な洪水が発生し、10万人以上が被災しました。政府は国家緊急対応計画(DN-III、Plan Marina、GN-A)を即時発動し、100億ペソの緊急支援予算を確保、被災者に初回2万ペソの現金給付を実施しました。

【統合的水資源管理】
統合的水資源管理や再生水の利活用体制の構築は喫緊の課題であり、特に水質汚染が深刻な3河川(Tula川・Lerma Santiago川・Atoyac川)の浄化や水資源の過剰利用や独占を防ぐためのコンセッションの見直し、水量モニタリング、再生水利用に対する支援要望が多くあります。メキシコでは653の帯水層のうち102が過剰利用状態(*2)にあり、地下水の持続的利用に向けたモニタリング技術や水資源の統合管理体制の構築が求められています。
日本の地下水の効率的利用を含めた統合水資源管理の法制度、技術、水利害対立緩和の経験等、貢献が可能なものも多いです。

(*1) CONAGUA 「Plan NAtional Hidrico 2025-2030」
(*2) CONAGUA 「Inventario Nacional de Plantas Municipales」

参入に際しての留意点

政府の方針

2024年10月に発足したシェインバウム政権は就任時に発表した100の公約の一つとして水資源管理の是正と持続的な活用を掲げています。

公約の実現のための「国家開発計画2025‐2030」や「国家水資源計画2025-2030」の中で、水質汚染が深刻な3河川(Tula川・Lerma Santiago川・Atoyac川)の浄化、無収水を引き起こす要因となる水道インフラの老朽化対策、水資源の過剰利用を防ぐための民間コンセッションの見直し、再生水利用の強化、気候変動による干ばつや洪水対策を推進しています。しかしながら、これらの取り組みには財政的・技術的な制約が伴い、メキシコ一国の能力では十分に対応しきれない面もあります。

具体的には、CONAGUA(国家水委員会)の予算が昨年比で40%削減され、各自治体が管理する処理場も予算不足で十分に稼働していないことや、河川流域の水資源を統合的に管理する計画策定がなされておらず、河川流量の管理のみに留まっている現状があります。上述の河川汚染による水資源利用の制限を含めた統合水資源管理の不在や、首都圏で40%に上る無収水の問題、水資源インフラの老朽化等の課題は年々深刻化しており資金、技術双方の開発ニーズが大きいです。

JICAの関連事業、関連採択案件

首都メキシコシティを中心に上下水道インフラ管理、上下水道サービス強化にかかる行政支援を目的とした技術協力を長年にわたり実施しており、2005年より現在まで、名古屋市上下水道局との姉妹都市連携に基づく草の根技術協力事業の実績もあります。

これまで水質管理や上下水管理に関する技術協力を中心に行ってきましたが、上述の河川汚染による水資源利用の制限を含めた統合水資源管理や、首都圏で40%に上る無収水の問題、水資源インフラの老朽化にはニーズは確認できているものの十分な支援を行えていません。

民間企業の関連採択案件としては、2021年12月~2024年12月までメキシコ市及び周辺州における汚泥の適正処理に関わる案件化調査が協栄工業株式会社、富国工業株式会社によって行われました。

また2025年7月27日~8月3日には、JICAメキシコ事務所主催による「メキシコ水ビジネス・スタディツアー」が実施されました。本ツアーでは、現地の下水処理場、揚水場、灌漑施設などの視察に加え、政府機関や日系企業との面談、自社技術のプレゼンなどが行われました。水分野の課題に対する理解を深め、具体的なビジネス展開の可能性を探る貴重な機会です。同様の事業は今後も行われる見込みです。

参考リンク

担当者からのコメント

メキシコの水分野は、課題が多いからこそ、技術による解決の可能性が広がっている分野でもあります。現地では、インフラの老朽化や水質汚染、洪水対策など、さまざまなニーズが顕在化しており、日本の技術や経験を必要としております。
私たちとしても、スタディツアーやセミナー等を通じて、現地の状況や顧客を紹介させていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください!

JICAメキシコ事務所 民間連携事業担当:mx_oso_rep@jica.go.jp