JICA東京 「難民」の暮らし-映像を通して共感的理解を深める-

2018年9月27日

25名の学生を対象に「国際関係の諸課題」の授業での活用

共立女子大学の一般教養授業「国際関係の諸課題」では、現代社会における国際関連の諸問題について、どのような歴史的経緯から生じているかを含めて現状を理解し、一般市民の立場から問題意識を深め、能動的に考えられるようになることを目標としています。今回、7回目の授業「紛争問題と人間の安全保障」を行うにあたり、本教材「授業で使える10分映像集(難民・イスラム・国際協力・教育)」を活用しました。「紛争」や「難民」といった言葉を聞く機会はあっても、実際にそこで暮らしている人々の様子を知る機会はほとんどありません。理論的な概念だけではなく、映像を通して視覚的に、世界で起きていることを学ぶ機会を作りたいと考えました。

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共立女子大学

漠然としたイメージが、生きている人間の姿へと変換

本教材には、現代の国際社会における課題が四つのテーマに分かれて挙げられていますが、今回は主に「難民」のチャプターを利用しました。
爆発音や銃声が鳴り響き、友人や子どもたちが目の前で殺される状況下で、何とか生き延びるために、徒歩、列車、船など様々な手段で祖国を逃れる人々。シリアとヨルダンの国境近くにあるザータリキャンプで、雨漏りのするテントで夜を明かさねばならない一家の、やり場のない不満。シリアからレバノンへ逃れてきたものの、家も持ち物も思い出もすべて置いてきて何も残っていない、子どもを学校に行かせることすらできないほど生活は苦しく、将来も見えないと嘆く夫婦。
現地の人々の様子や生の声がそのまま収録されている本教材は、学生たちにとって漠然としたイメージでしかなかった「難民」という言葉に命を吹き込み、私たちと同じ現代を生きるひとりひとりの人間なのだということを伝えてくれたように感じます。

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将来の不安を語るハッサンさん夫婦

自分のためだけではない、地球全体のための世界観へ

様々な課題を抱える世界の人々のリアルな生活が垣間見えるこの教材は、自分事を中心とする価値観から、今、世界で何が起き、人々はどのような状況にあり、そしてその中で日本はどういう位置にあるのかという世界観を持つきっかけを与えてくれるように感じます。世界で起こっている問題は決して他人事ではなく、日本社会や日本人とも深く関係しています。まずは問題を知り、どのような経緯でその問題が起こっているかを探ることによって、私たち日本人との関わりをも認識し、日本社会の一生活者としてどのように対応していくべきかを考察することができると思います。開発教育の教材としても大いに有効であると感じています。

小林 尚行
JICA東京センター

このページで紹介している教材

授業で使える10分映像(難民・イスラム・国際協力・教育)

JICA事業の映像や、NHKや世界の報道映像及び独自のインタビュー映像を、授業でそのまま使えるよう再編集した映像教材です。「難民」「イスラム」「国際協力・ODA」「教育」の四つのテーマを、それぞれ10分程の映像にまとめました。[難民]1)国を逃れる人々/2)逃れた後の生活/3)各国の難民受入れ状況[イスラム]1)イスラムの概要/2)世界各地のイスラム/3)差別・排斥されるイスラム教徒/4)日本に暮らすイスラム教徒[国際協力・ODA]1)国際協力・ODAとは/2)日本の国際協力・ODA事業の事例/3)課題を共に解決する国際協力[教育]1)アフリカ・ニジェールの教育課題/2)課題解決のための「みんなの学校プロジェクト」/3)「みんなの学校プロジェクト」に取り組んだ成果