JICAタジキスタン SDGsを指針とした水資源の持続に向けて

2018年11月22日

タジキスタンで開催された「水」の国際会議

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ダム堤高世界第2位のヌレク湖

タジキスタンが位置する中央アジア諸国は、山岳地帯を除いて人が手を加えなければ乾燥した土地が広がっており、適切な水資源管理なくしては生活も農産業も厳しい状況です。タジキスタンでは、高さにおいて世界最大級の既存のダムに加え、名実ともに世界で最も高いダムとなる新たなダム建設が進行しています。その一方で、パミール高原を流れるフェドチェンコ氷河は、極圏以外に存在する氷河としては最長を誇りますが、近年の地球温暖化の影響をうけての縮小が懸念されています。また、過去の巨大地震による山腹崩壊により生まれたとされるサレズ湖を堰き止めている土砂が、いつ起こるか分からない将来の地震災害によって湖面に発生する津波の影響で渓谷側に崩れ落ちた場合、サレズ湖下流のアムダリア河流域の被害は甚大なものと予想されます。タジキスタンが抱えるこのような水をめぐる諸問題は、自国だけで解決できるものではなく、周辺国との対話や利害関係者との協調を推し進めながら取り組むことが求められます。

現時点の推計によると、2030年までに、淡水資源の不足は必要量の40%に達すると見られる一方で、世界人口が急増を続ける中、世界はグローバルな水危機への道を一直線に進んでいます。このように、ますます大きくなりつつある水の課題が認識され、2016年12月21日に国連決議「水の国際行動の10年『持続可能な開発のための水』2018-2028(InternationalDecadeforAction“WaterforSustainableDevelopment”)」が採択されました。その開始が2018年の世界水の日(3月22日)に国連本部にて宣言され、ハイレベルオープニングではタジキスタン大統領も挨拶を行い、議論をリードする日本政府代表もスピーチを行いました。この国連決議には、2018年からの10年間に、持続可能な開発や統合水資源管理の促進、SDGsの水関連目標の達成、関係機関のパートナーシップの深化などを進めることなどが記載されています。水に関する高い問題意識を抱えていたタジキスタンは、大統領自らの強いイニシアチブをとってこの取り組みを推進した結果、2018年6月20~21日、『水の国際行動の10年「持続可能な開発のための水」』に関する国連高級国際会議が、タジキスタンの首都ドゥシャンベ市にて開催されました。タジキスタン政府と国連が主催したこの会議には、172の国や国際NGOからの1,000人を超す代表者が出席しました。

世界的な水問題の認識と、SDGs目標達成への取り組みを推進

世界には、安全な水を利用できない人々が約7.8億人、トイレを利用できない人々が約25億人も存在します。毎年、約150万人の5歳未満の乳幼児が、安全でない飲み水や不衛生な環境による下痢で死亡しています。また、気候変動により頻発する水関連災害は、世界中に大きな被害をもたらしています。人命にかかわる水と衛生の問題は、緊急な改善が求められています。
「安全な水とトイレを世界中に」という「持続可能な開発目標(SDGs)」ゴール6は、水が果たすことのできる重要な役割を、豊かさの促進や不平等への取り組み、さらには気候変動への対処という観点から認識するものとなっています。「水の国際行動の10年」はSDGsを指針とし、世界的な水問題から生じる様々な危機に対応するために、国際社会の関心を高め、水資源の持続的な開発や管理、関連プログラムの推進への協力を結集することを目的としています。

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SDGsゴール6のロゴマーク

映像教材で他ブースとの差別化に成功

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JICAブースに立ち寄り質問する参加者

本会議開催中の2日間、JICAタジキスタン事務所は、技術協力プロジェクト専門家と協力し、SDGs達成をめざすJICAの国際協力方針やJICAが世界中で実施している様々な活動内容を発信しました。今回、JICA地球環境部水資源グループから映像教材を提案され、映像ならばより臨場感あふれる形で伝えられるのではないかと思い、展示ブースの正面にスクリーンを設置して2日間に渡ってリピート上映したところ、参加団体の中で最も多い200名ほどの人々を集めることができました。パネル展示中心の団体の中で、映像を上映していたのはJICAだけだったため、他ブースとの差別化に成功。明るく動きのある映像はインパクトがあり、ブースで展示物を見るあいだのわずかな時間でも、訪れた人々の興味関心を惹きつけることができました。また、JICAの将来的な給水・灌漑事業の協力方針に関する質問や、JICAの取り組みをよく理解するために本映像教材が欲しいといった声も聞かれました。

トップドナーとしてのJICAを世界にアピール

展示物や映像を通してICAの取り組みへの理解促進や意見交換の場を設けることで、ハイレベルな関係者が世界中から集結する絶好の機会に、世界の水問題に対する意識や危機感を高める手がかりを提供することができました。今回2つの映像教材を活用することによって、水・衛生分野における開発途上国の課題と、同分野のトップドナーとしてのJICAの姿を世界に発信できたのではないかと思います。SDGs達成に向けて、国連機関や各国政府、また民間企業などが様々な取り組みを開始する中で、このような映像教材は、各機関や案件担当者が理解を深める上での有効なツールになり得ると感じました。

主文:山下 祐美子 企画調査員
加筆:佐藤 慶一 期限付所員
JICAタジキスタン事務所

このページで紹介している教材

JICAの水・衛生分野への協力

この教材「JICAの水・衛生分野への協力」は、国際会議や国内の各種イベント等の場において、JICAの水・衛生分野における協力について国内外の関係団体に向けて、広報・情報発信することを目的に作成したものです。JICAの水・衛生分野での協力のアプローチについて代表的なプロジェクト事例を参考としながら紹介する構成となっております。さまざまな場面において同教材を活用していただき、水・衛生分野のトップドナーであるJICAの活動に対する認識の向上に貢献することを期待しております。

水道事業における総合的な無収水削減対策-無駄な水を減らすために-

上水道事業における無駄な水(無収水)を削減し、新たな水資源開発の抑制や、過剰取水などの上水の水利用に伴う環境負荷を極力削減するとともに、途上国等の増加する水需要や慢性的な出水不良に対する水道サービスの向上のための総合的な取組みを紹介する。具体的には、配水管理、水道メーター管理、漏水管理及び盗水等違法給水管理手法などについて、紹介をする。

(注)本教材はJICA事業関係者に視聴を限定しています。詳しくはJICA-Netライブラリデスクまでお問い合わせください。

メール:eitpl-jicanet@jica.go.jp