高知大学 教育の質を高める教員研修-授業研究で学び合う-

2018年12月20日

課題別研修で、JICA-Netマルチメディア教材を活用

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四万十町立七里小学校(ユネスコスクール)訪問時、自国の小学校の様子を児童に説明するケニア研修員

高知大学国際連携推進センターでは、年間3~4本の課題別研修を実施しています。講義・視察・演習を組み合わせ、より実践的に知識を習得してもらうことで、研修での学びを帰国後の具体的行動に繋げることに主眼を置いています。2018年8月26日~9月23日、「子どもの学びを保障するへき地教育の振興-SDGsの達成を目指して」の研修を実施しました。ケニア、ナミビア、リベリア、アフガニスタン、イエメン、カンボジア、フィリピン、ミャンマー、ラオス、パプアニューギニアの10カ国から12名の研修員が参加しました。
JICA-Netマルチメディア教材は、短時間で要点が分かりやすく整理されているため、どの研修でも2本ほど活用しています。事前学習で日本の教育システムの全体像を把握したり、講義内容の理解を深めたりするために、非常に有効であると感じています。今回の研修では、「教える者が学びあう-日本の教員研修制度と授業研究-」を活用しました。JICA人間開発部との打ち合わせ時に紹介いただき、事前に視聴したところ、教員研修制度と授業研究の重要性について学びを深めることができ、研修の目的と合致していたので利用することにしました。また、自国でも活用してもらうことを期待し、複製DVDを研修員に配布しました。

教える者が学びあう-日本の教員研修制度と授業研究-

(注)本教材はJICA事業関係者に視聴を限定しています。詳しくはJICA-Netライブラリデスクまでお問い合わせください。

メール:eitpl-jicanet@jica.go.jp

授業研究の意義と実際の取り組みを、映像で理解

授業研究は、授業を互いに観察し合うことで実践力を高めていく、教師たちの学び合いの場です。自分の授業を他の教師に見られることで、独善に陥ることを防ぎ、客観的な意見を聞くことができます。また観察する側の教師は、他の教師の授業を数多く見ることによって様々な教え方を知り、自分の授業を振り返ることができます。このマルチメディア教材は、教員研修制度の概要を説明した「制度編」、授業研究の取組みを紹介した「実践編」の二部構成になっており、実践編では、筑波大学附属小学校の教諭に焦点をあて、授業研究を追っています。子どもたちの興味を惹き付けるために、また、教師が誘導するのではなく子どもたち自身に発見させるために、どのような工夫のもとに授業を計画したか。本番の授業はねらい通りに進んだか。授業後の検討会で、様々な意見やアイデアを聞いてどう感じたかなど、教育への熱意が映像から伝わってきます。
内容は非常にわかりやすく、研修員の理解促進に大いに役立ちました。教育の質を向上するためには、教員の能力向上が不可欠であることを再認識してもらうことができました。研修員12名のうち9名が、教師からキャリアアップして教員指導に携わる職務に就いており、その他は1名が現役の教師、残りの2名は教育省の行政官という構成でしたが、それぞれの立場で学べることが多かったのではないかと思います。研修の最後に作成したアクション・プランでは、多くの研修員が、教員研修の内容をより充実させるため、指導法や指導案、研修カリキュラムを改善するためのガイドライン作成を活動に含めていました。

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放課後遅くまで授業研究の案を練る教諭

学び続ける教師の姿を、世界へ発信

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3学年同時の模擬授業の様子。研修員1名と日本人講師が授業の様子を確認している

研修が終了して1ヵ月にも満たない10月25日~27日、日本での学びを活かした教員研修が、フィリピンで実施されました。また、ケニアとアフガニスタンからは、日本の教育制度を自国に広めるために、関係者や教員と共にマルチメディア教材を視聴したとの進捗報告メールが届いています。多くの人の目を通すことで授業は良くなり、教師がより多くの見方や考え方をもつことで、子どもたちは自分の発想を受け入れてもらえる可能性が広がる。教師は子どもたちのために学び、子どもたちへ学ぶ喜びを伝え、そして子どもたちの喜ぶ姿が、教師に次の活力を与える-教育における世界共通の真理を、日本から発信したこのマルチメディア教材は、研修員が帰国した後も、自国の教育の質を向上させるための、有効かつ強力なツールとなっていることを実感しています。

岡本葉子 研修コースリーダー
高知大学国際連携推進センター

このページで紹介している教材

教える者が学びあう-日本の教員研修制度と授業研究-

この教材は、行政が実施している日本の教員研修制度の概要を解説した「制度編」、教師自身が授業を実践する力を養う授業研究の意義や取組む姿勢、授業研究を可能にしている仕組みを解説した「実践編」の二部構成になっています。特に実践編では一人の教師に焦点をあて、授業計画、授業実施、授業検討という授業研究のプロセスに沿って研究授業を紹介しています。-教師自身が学び続けることにより、授業が良くなる。授業が良くなれば子どもは喜びを感じる。その子どもの喜ぶ姿から教師は次の活力が沸いてくる-。そんな子どもと教師の成長の様子を描いています。また授業研究を実施する上での各種参考資料も添付していますので、併せてご活用ください。

(注)本教材はJICA事業関係者に視聴を限定しています。詳しくはJICA-Netライブラリデスクまでお問い合わせください。

メール:eitpl-jicanet@jica.go.jp